アパート・マンション 孤独死のあとに残されたペットをどう保護するか(2/3ページ)
山本 葉子
2020/11/27
猫は気配を消せる動物 探すのには工夫が必要
現地アパート前で落ち合った、お電話をいたたいたご相談の方はご夫婦でいらっしゃっていました。お二人ともに高齢という感じではなく、亡くなった息子さんはかなり若い方なのだと思いました。
管理人さんが鍵を持って案内してくれたお部屋は2LDKにロフト付きという間取りで、単身者にしては広めのお部屋です。ただ、築年数は古いようなアパート。それだけに押し入れや収納も奥行きがあって昔ながらの大きいタイプ物件でした。
現場でうかがったご両親と管理人さんのお話では、息子さんのご遺体は搬出済みであること。ご遺体の状態から、息子さんは多分2週間以上前に、ベッドの上で亡くなられていたらしいこと。室内に猫がいることは、猫たちが大きな声で鳴くので、隣人が知らせてきたことで分かったことなど、大まかな状況をうかがいます。
部屋に入ってみると、玄関はキレイ。
リビング手前のドアを開けたら、ビニール袋に入ったゴミの山が見えました。床はかなり汚れています。ここで管理人さんに許可をいただき、全員靴の上からビニール袋を被せて履いて輪ゴムで留め、そのまま室内に入ります。
涼しくなってきた時期でしたが、室内の臭いは相当なものです。
それぞれの部屋に入ってみると猫の姿はありません。猫はその気になれば完全に気配を消せる動物なので、事前にいると知らなければ、絶対に気がつかないほど見事に隠れています。そこで持ってきた缶詰や猫用オヤツを出して設置していると、匂いにつられたのか、大きなアメショ(アメリカン・ショートヘア)柄の子がヒョコっと顔を出しました。
その様子から、警戒心よりもお腹が空いているほうが勝っている感じで、キャリーケージに誘い込んでまずは1頭を保護。それから30分ほどの間に次々と同じアメショ柄の猫たちが現れて、みんなご飯につられてキャリーケージに入ってくれました。
20個持ってきたキャリーは残り2個。ゴミの山の間や押し入れの隅から現れる猫たちは、みんなアメショ柄です。
「これはひょっとしたら個人ブリーダーさんだったのかも……」
そんな思いが浮かびます。というのも、猫たちの大きさも、大・中・小・極小(子猫)といろいろいます。ソファを動かしたり冷蔵庫の裏を覗き込んだりしながら、ほかにいないかと猫たちを探します。部屋中のあちこちを探し回り、この日はもうこれ以上探しても見つからないという状態になりました。
とはいえ、これまでの経験からまだ隠れている子がいる可能性を捨て切れなかったので、置き餌をしてもう1日待っていただけるようにご両親と管理人さんに頼みます。了解をいただき、LDKとほかの2部屋、そしてロフト部分のそれぞれにご飯を置きます。この日は一度引き上げて、ご飯が減っている部屋があったら、改めて猫たち探すことにしました。
この記事を書いた人
NPO法人東京キャットガーディアン 代表
東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。