衝撃! 賃貸住宅内で豚を解体――賃貸住宅でトラブルを防ぐ4つの掟
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/11/13
文/朝倉 継道 構成/編集部 イメージ/©︎nobuyuki kurosawa・123RF
こんなことが本当に? 賃貸住宅内での豚解体事件
人が亡くなったり、大怪我をしたということはない。だが、賃貸住宅オーナーにとって衝撃的な事件が、この10月、11月にかけ、群馬と埼玉で相次いで発生している。
日本に住むベトナム人による賃貸住宅内での豚解体事件のことだ。それ以前に起きていた、一連の家畜・農産物窃盗事件と関わりが深い可能性がある。
そのひとつ、群馬県太田市では、アパートから大量の豚肉のかたまりが発見された。これに関連して、ベトナム国籍の技能実習生4人が、10月28日に畜場法違反容疑で逮捕されている。
また、埼玉県上里町のアパートでも、近隣住民の通報が発端となり、物件内で豚の解体が行われていたことが発覚している。これも畜場法違反の疑いで11月1日にベトナム国籍の男が逮捕されている。
なお、後者では、作業は浴室内で行われたという。その際に付着したものかは不明であるが、かなり汚損したバスルームがメディアの映像に大きく映し出されるなどしている。
ちなみに普段、精肉店やレストランで、いわゆる「肉」しか目にしない私たちには、なかなか想像が及ばないが、動物の解体というのは、およそ生半可な仕事ではない。
割けば血が出る、あらゆる体液や内蔵も溢れ出る。糞も尿も流れ出す。それが、私たち人間も含めた命ある動物のカラダだ。逆にいえば、出てくるものをしっかりと出し分け、適切に処理する作業こそが動物解体の肝心要なところである。
そして、それを受け止め、処理できるだけの施設も設備も、日本の賃貸アパートやマンションにはもちろん備え付けられてはいない。
「風呂で動物を解体するなんて、排水口の中はどうなってしまったことだろう。臭いは? 脂は? なんともすごい場所ですごいことをやってくれたものだ」
大半のオーナーにとっての偽らざる心境は、このようなところではないか。
しかしこれをもって、「外国人には部屋を貸したくない」と考えるのは早計だ。なぜなら、現在日本で暮らす、技能実習生をはじめとするベトナム人は、42万人にも及ぶ(2020年6月末現在・出入国在留管理庁公表)。これは、宮崎市や高松市の人口を超える数だ。山梨県全体の人口の半分以上ともいえる。
これほどの数のうち、盗んだ、もしくは盗まれたであろう家畜を自宅でさばいたり、違法に売ったりしていたような人物は、今後増えたとしてもおそらく数十人程度だ。ほかにも、ベトナム人に関しては、窃盗事件や薬物事件で名前が挙がることもたびたびあるが、それらを合わせたうえでも、罪を犯す者はほんのわずかに過ぎない。
さらに、ベトナム人だけではない。
現在、日本に在留する約79万人の中国人、約44万人の韓国人、約28万人のフィリピン人など、ほとんどの人は真面目に働き、人手の集まらない現場を埋めるなど、日本の産業を支える重要な担い手になっている。そのことを決して忘れるべきではない。
そして外国人を賃貸住宅に迎えるにあたって、ぜひ心がけたいキーワードがある。それは、「先に伝える」「先に納得してもらう」ということだ。
何を伝えるのかといえば、それは日本の賃貸住宅で暮らすうえでのルールや、必要なマナー、または常識などだ。簡単なことではあるが、外国人入居者の絡んだ物件内でのトラブルのほとんどは、これらについて「先に伝えず」「納得を得られていない」ケースで起こっている。
最も注意しておきたい定番ともいえる4つの掟を挙げてみよう。
1 騒音に関する掟
「集合住宅の部屋であっても、友達を呼んでのパーティは普通のこと」と思っている外国人も見かけられる。楽器演奏など、禁止事項をしっかりと心得てもらうとともに、人を呼んで語り合いながらの飲食、大声での会話・電話などが、日本の住環境では近隣トラブルを大変引き起こしやすいこと。これらを念を入れて説明することが重要だ。
2 ゴミ出しルールに関する掟
ゴミの分別や収集日などについて、細かなルールを把握するのは日本人にとっても簡単ではない。ましてや、日本ほどそれらが厳しくない国から来た人にとっては予期せぬ険しいハードルだ。日常のゴミ捨てルールから、粗大ゴミの処分方法まで、リサイクルのため、環境保護のためなど、理由の説明を含めた念入りなレクチャーが必要である。
3 同居人・又貸しに関する掟
外国人の中には、家賃を払って部屋を借りることについて、これをルームチャージ(利用人数を拘束されない室料)のように理解している人もいる。そのため、無断で友人を呼び寄せてルームシェアをしたり、一部の部屋を又貸しして入居者本人が家賃をもらってしまったりといったことが、悪気なく行われるケースも出てくる。
4 原状回復費用に関する掟
賃貸住宅の募集においては、前の入居者が使い終えた状態のまま、ともすればその人が使っていた家具なども置かれたままで行われるケースが、国によってはありえる。また、部屋の汚れの度合いを測る感覚が、日本人と外国人とでは違っている場合も。そうしたことから、請求理由が正当な場合であっても、原状回復費用を求められて驚く外国人も少なくない。国のガイドライン(国土交通省)の説明に加え、先手を打った予防策として、いわゆるクリーニング特約の設定と、そのことの納得を得るのがトラブル防止のための早道だ。
なお、余談ではあるが、逆に日本人が外国の賃貸アパートなどで生活する際、魚を焼いて近隣から悪臭だと苦情を受けたり、煙で火災警報器を作動させてしまったり、さらには、日本に比べて詰まりやすいトイレに、日本での勢いそのままにトイレットペーパーを流して“惨事”を招いたりすることもある。
お互い「郷に入れば郷に従え」なのだ。
この記事を書いた人
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