新型コロナが拍車をかけた? 賃貸住宅にも浮かび上がる「防音」の重要性
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/10/22
文/朝倉 継道 イメージ/©︎Valerii Maksimov・123RF
「音」問題は住環境における重要なテーマ
2020年、全世界を一色に染めたといっていい新型コロナウイルスによる「コロナ禍」。
フランスでは10月15日、1日あたりの感染者が3万人、イギリスでも21日、1日あたりの感染者が2万6000人を超え、日本は比較的抑えられてはいるものの、まだまだ予断をゆるさない状況が続いている。
それに伴い、我々の日常にさまざまな影響を及ぼしている、その大きなひとつが、テレワーク・在宅勤務の広がりだ。そして、ここで問題になるのが「音」である。これまでであれば気にならなかったことも、テレワークにより在宅時間が長くなることで、音に対しての意識が高まる。実は、この「音」の問題こそ、今年の日本の住環境の中で、もっとも重要なテーマであるといえるかもしれない。
Google Trendsでも「音」がホットワードに
検索サイト・グーグルで検索されるワードのうち、コロナ禍の本格化とともにトレンドに乗ったあるワードがある。
それが「道路族」だ。
道路族とは住宅地の道路で遊ぶ子どもと、その周りで立ち話をしたり、子どもと一緒に遊んだりする親たちを指す言葉で、住環境内における路上騒音問題を示すキーワードでもある。
この道路族、グーグルの公表データ(Google Trends)を見ると、3月から5月上旬にかけて一気にインタレスト(関心度)を伸ばしている。その後も、比較的高いレベルのまま、グラフの線を描き続けている。それと同時に、道路族と似た軌跡をたどる“コロナ付随型”といってよい傾向を示すワードもある。それが「騒音」「コロナ 騒音」「コロナ マンション 騒音」「騒音 通報」「近所迷惑」「うるさい」「防音」「遮音」といったワードだ。
出典/Google Trends「道路族」の推移
先日、5棟120室の賃貸住宅を運営しているオーナーから、今年の5~6月、物件内での騒音トラブルが頻発したという話を聞いた。コロナによる「巣ごもり」に伴い、多くの入居者の日常において、部屋で音を出す機会(出さざるをえなくなる機会)、他人の出す音に晒される機会が同時に増えたようだ。ついには、耐えきれず退去する人もいたという。
RCでも油断できない
RC5階建て、1990年代築の賃貸マンションを購入した、あるオーナーも入居者同士が発する悪気のない生活騒音によるクレームに手を焼いている。
RC=鉄筋コンクリート造なのになぜ。
実はRCだからといっても油断はできない。たとえば、建物は頑丈なRCだが内部は単身用の狭い居室が並んでいるといったケースが典型といえよう。
たとえRCであっても、部屋と部屋を隔てる戸境壁(こざかいへき)には鉄筋コンクリートが入っていなかったり、あるいは、壁をひとつ飛ばして2部屋ごとにしか入っていなかったりといった場合が、よくある。
こうした壁は、ともすれば、間仕切り程度の遮音性能しかもっていなかったりする。これらを挟む部屋同士においては、木造アパート同様に互いの音が響くのだ。RC5階建てのオーナーはこう話す。
「RCといえば、防音に優れた分譲マンションのイメージがあった。こんなケースがあるとは知らずに買ってしまった」
住まいのプロはどう考える?
一方、住まいを案内する不動産のプロたちはどう考えているのか? アットホームが8月31日に公表した「不動産のプロが選ぶ! 『テレワークにおすすめの住まいの条件』ランキング」が参考になる。
ランキングはシングル向け・カップル向け・ファミリー向けに分けられている。それぞれのTOP10までを抜粋する。
テレワーク・在宅勤務をしているお客さまにおすすめしたい住まいの条件
※オレンジは「音」に関連する回答
出典/アットホーム「不動産のプロが選ぶ! 『テレワークにおすすめの住まいの条件』ランキング」(調査期間7月29日~8月3日)
テレワークの基本インフラであるインターネット、同じく仕事をするためのスペースに関してのほか、「音」に言及するプロが一定割合存在することが分かる。
なお、3ジャンルいずれのTOP10にも入ってはいないが、音漏れ防止のため「角部屋をおすすめする」という回答もある。シングル向けで12位(10.8%)、カップル向けで14位(9.7%)、ファミリー向けで14位(10.3%)だ。
“コロナの2020年”は、住環境における「音」を社会が強く意識する年となっている。
この記事を書いた人
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