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もはや特別なものではない!孤独死の後にくる「遺品整理」問題

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■空き家の影に潜む「遺品整理」

平成29年高齢白書によれば、2016年の65歳以上の日本の高齢化率は27.3%になり、3人に1人が65歳以上という社会が目前に迫っている。しかし、これを世帯数で見ていくとおよそ2372万世帯に65歳以上の高齢者がおり、これは全世帯数の47.1%に及ぶ。つまり、ほぼ2世帯のうち1世帯に高齢者がいるということになる。しかも、高齢者がいる世帯の詳細を見ると、夫婦2人世帯が31.5%でもっとも多く、次いで26.3%の高齢者の一人暮らし世帯が続き、高齢者のみの世帯が50%を超えている。この数字を見ただけでも、住宅市場における高齢者への対応は無視できないことがよくわかるはずだ。そんななか孤独死問題がクローズアップされているが、この数字からもわかるように今後は孤独死が特別なものではなくなる時代がきつつあるといえるのかもしれない。

そこで重要になってくるのが、孤独死の早期発見だ。しかし、これは要支援、要介護状態であれば定期的な訪問があり、75歳以上の年齢になると、周囲も気にかけたりする。また、電気ポットや各種センサー、スマートフォンの見守りアプリなどさまざまな方法が登場していることもあって、孤独死のピークは60代で70代を超えた高齢者のほうが少なくなっている。

このように高齢者の孤独死の早期に発見する対策が進んでいるとはいえ、賃貸住宅オーナーにとって居住者の死亡はやはり大きなリスクだ。その一つは居住者が亡くなったあとの空室リスクだ。

「大都市圏、東京でいえば23区からお問い合わせは全体の60~70%ぐらいがアパートに一人暮らしだった方の関係者からのものですね」と話すのは遺品整理のマッチングサイト「遺品整理ドットコム」を運営するmodecas社長の齋藤祐輔さんだ。そうした現場では「保証人などがいなければ、大家さんが遺品整理の依頼してくるケースもあります」(齋藤さん)という。

とくに高齢者世帯は一度入居すると居住期間が長く、2014年の日本賃貸住宅管理協会の調べによると、65歳以上の高齢者世帯の60.8%が同一物件に6年以上居住しているのだ。そのため家財も多くなったり、「自分では片付けられないからと、いわゆるゴミ屋敷の整理も多い」(齋藤さん)という。

■遺品整理ができないこれだけの事情

居住者が亡くなったあと、1日もはやく片付けて新しい入居者を募集したくても、それができないという状態に陥るケースもある。

というのも、残された家財は「遺品」であり、相続と関係するためこれが決着しなくては手を付けたくても付けられない。しかも、一人暮らしの高齢者の中には親族と疎遠になっている人もいる。そのため早期の遺品整理を求めてもなかなか進まなかったり、場合によっては待たされた挙げ句相続放棄され、遺品整理はオーナーが行うことも少なからずあるということから、最近では遺品整理に関係したトラブルも起きている。その1つが遺品整理をめぐる遺族とのトラブルである。

一般的に孤独死の場合、遺体発見後、警察に連絡し、警察によって検視が行われる。そこで不審な点がなければ、死体検案書が作成される。もちろん、遺体発見後、保証人などがいればそこに連絡をするわけだが、保証人が親族でない場合、連絡できないケースも。ただ、こうしたケースでは、警察が親族を捜し出してくれるという。

そこで相続人となる親族との間で、賃貸契約の解除や未払い家賃の精算、遺品整理などについて話し合いが行われる。オーナーとしては、家賃を払ってもらえればよいとはいえ、できれば1日でも早く部屋を片付けてもらって、新しい入居者を募集したいところ。しかし、相続人の同意なくオーナーが進めれば後々問題になる。そのため相続について決まらない限り、遺品整理などを進めることはできないのが現実だ。

一方、相続する側も相続が確定する前に何らかの対応をすることに慎重だ。というのも、相続が確定しない段階で契約解除や遺品整理を行うと「単純承認」、つまり借金も含めて相続財産を全て承継する、と見なされることがあるからだ。そのため、後に相続放棄ができなくなることを心配して手を付けないというわけ。とくに疎遠になっている親族の場合、相続についてはっきり決まらなければ、そのまま放置されることもしばしば起こる。

もちろん、相続人とは別に連帯保証人がいれば、保証人に対応を求めることは可能だが、遺品については相続人の同意がなければどうにもならない。結局は、相続問題が決着しなくては手が付けられないのだ。そして相続放棄され、保証人が金銭的な対応をしたとしても、具体的な対応はオーナーがしなければならないということも往々にして起こる。ただ、連帯保証人が相続人の場合は、相続放棄による債務はないが、連帯保証人としての債務は残るので、未払い家賃の請求や遺品整理を求めることは可能だ。

■失敗しない整理業者の見極め方

では、相続放棄された遺品整理にあたって、注意すべきこととはどういったことだろうか。その第1が相続人全員から「相続放棄申述受理証明」を受け取ることだ。これがあれば遺品を一括処分しても、あとになって相続人から異議を申し立てられることはない。

また、遺品整理業者との間で起こりやすいトラブルとしては、見積もりと実際の請求で大きな差が出たというもの。

こうしたケースでは家電などの廃棄処分などで追加料金が発生したということを理由にされることが多い。また、遺品整理業者が不法投棄を行い、その責任を問われるということもあるという。こうした問題を防ぐためにも、しっかりとした遺品整理業者を選ぶことが重要になる。

信用できる遺品整理業者を見分ける1つの目安が一般廃棄物収集運搬業の許可を持っている業者かどうかということ。また、見積もりの内容が他の業者と比べて、あまりにも安い業者は注意が必要だ。

前出の齋藤さんの遺品整理ドットコムでは、問い合わせを受けると自社のスタッフが整理する家や部屋を訪れ現場を確認、ヒアリングしてそれをもとに提携している遺品整理業者の見積もりを取る。とくに東京や大阪といった大都市圏では複数社からの見積もりを取って紹介している。

「当社はマッチングビジネスですが、単に業者さんを紹介するだけでなく、業者に対するクレーム対応などについても行い最後までサポートしています」

と話す齋藤さん。では、実際の遺品整理はどのように行われているのか。

「メールや電話などでお問い合わせをいただくと、下見に行く日程を決めて、当社のスタッフが下見にうかがいます。お宅の下見を行いご要望をうかがったうえで、その内容を遺品整理業者に送ります。そして、整理業者から出てきた見積もりをお客さまにお知らせいたします。作業する日時などのやり取りはお客さまと整理業者との間で直接行っていただきますが、作業終了後に問題がなかったかどうかの確認を兼ねたアンケートにお答えいただき終了です。

作業としては、基本的に家財などは廃棄することになります。売れるものは業者で買い取っていますが、実際の現場では買い取れるものはほとんどありません。家電ですと5年以上のものは、買い取りはできず廃棄になります。年配の方ですと、大半が古いものになるので、たまに品物の良い桐箪笥といったものがありますが、ほとんどが廃棄になります。着物でよいものがあるとおっしゃる方もいますが、これも実際にはほぼ価値がなく買い取りは難しいです。

また、骨董品や古美術があるという場合は、専門業者をご紹介して、個別に対応しています」(齋藤さん)

このほか貴金属、アルバム、貯金通帳、印鑑、賞状、勲章、ヒアリングの際に注意してほしいものなどがあった場合は廃棄せず、分けてくれるという。

一方、その料金は引っ越し料金と近いという。

「大まかにいうと、処分する家財が何立米あるのかを計算して算出します。1立米(1m×1×1mの立方体)=1万円~2万円で、人それぞれ違いはありますが、ワンルームのお部屋ですと6~10立米ぐらいですので、料金は6万円から20万円ぐらい。これに家電リサイクル法で決められているエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の処理費用がおおよそ1万2000円でこれに消費税がプラスされます」

こうした廃棄する遺品整理の方法として、最近注目されているのが「お焚きあげ供養」というものだ。

これは故人が使っていた衣類や愛用していたもの、アルバム、位牌といったものを焼いて供養するもの。財産放棄したとはいえ、仏壇や位牌、遺影、アルバムといったものはゴミとして廃棄するのは気が引けるもの。とはいえ、保管もしづらい。そこでこれらのものについては、こうした方法で整理することもできる。

高齢化が進み「終活」という言葉も一般化してきた。しかし、自らの死後の後片付けはまだまだ手がついていないという現実がある。賃貸住宅のオーナーとしては、こうした問題が起こりうることだけは肝に銘じておきたい。

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この記事を書いた人

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