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今まで新築住宅が売れたのは性能では無く「仕組み」

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今から皆さんにアンケートを取って、「新築住宅と中古住宅」を気持ちだけで選んでもらったとしたら、どういう結果がでるでしょうか? お話しするまでもないかもしれません。7割ぐらいの方が「新築住宅」を選ばれるそうです。

 

ある意味、当然の結果かもしれません。同じ住むなら、新築の方が気持ちがいいですね。

 

ただ、不動産業界で新築が売れているのには、こんな消費者の気持ちだけではない、不動産業界の戦略や構造等が反映している部分が大きいのです。

 

第一に、不動産業者の利益構造があります。これは、不動産業者がどんな取引をすると儲けが大きいか?を考えますと良くわかります。

 

不動産業者が一番に取引したいのが、いわゆる「両手取引」になる形です。つまり、売主が不動産業者の新築住宅を取引しますと、買主さんと売主の両方から「仲介手数料」を取れる取引になります。

 

他方、中古住宅の取引の形態はどうなっているかと言いますと、中古住宅の場合、一部の不動産業者が売主になっているものを除き、ほとんどが一般の消費者が買い替えなどの理由から売りに出している「物件」になります。

 

この形で売りに出すためには、現在の不動産業界のシステムなどから消費者が直接販売して、自身で不特定多数の顧客にコンタクトするすべがありません。必然的に、不動産業者に売却を依頼するしかありません。

 

売主(消費者)が不動産業者に売却を依頼することは、その不動産業者に仲介手数料を支払うことですから、この場合の売主の仲介手数料は行き先が決まってしまいます。

 

他の不動産業者が、買主を連れてきたとしても、この「物件」を取引しようとする限り、売主からだけ仲介手数料を貰う業者と買主からだけ仲介手数料を貰う業者。という「片手取引」になります。

 

まれに、売主側の不動産業者が、直接買主を発見できれば「両手取引」になることもあります。見て頂くとお分かり頂けると思いますが、「両手取引」に比べて「片手取引」では、不動産業者の収益も半分になってしまうことがわかります。

 

他の業種に比べて、もともとの集客数が多くない不動産業者としては、少ない機会を「上手に生かすための戦略」という形態を優先して取っているのです。つまりは、優先して販売するのは「新築住宅」になるということです。

 

第二に、「もう一つの営業戦略」の話になります。不動産業者は、どんな規模の会社であっても何らかの「広告宣伝」を行い集客をしています。もちろん経費をかけてです。

 

その形で集客した消費者に営業をかけて行くわけですが、ここでも効率や効果などを最大に生かして結果を早期に実現したいわけです。

 

基本的に、不動産業者が急ぐ理由の一つには、消費者自体が自分達以外の他の不動産業者と話などをしている可能性が高いので、下手な提案や物件の案内などをして「では、また次の機会に…。」などと言って消費者との接点が切れてしまうのを恐れているからです。

 

こんな形で接点が切れてしまうと、他の業者で「契約」してしまえば、その顧客については、0になってしまいます。そこで、消費者に分かりやすく、説得力もあり、納得もして頂ける「新築住宅」の営業が手法としても1番手に上がってきます。

 

不動産業者にとって、新築住宅は新品の設備や装飾など、余計な知識などなくてもほとんどの方が悪く思わない住宅で、消費者に見せても非常に分かりやすい商品です。ということは、消費者の求める条件や抱える問題などをクリア出来れば、その場で回答を貰うことも無理ではありません。

 

その上、新築住宅の場合は建築業者や住宅設備メーカーの保証などもついているため、その後の不動産業者の手間も非常に少ない「低リスクの商品」です。他にも、住宅ローンの借り易さなどのメリットもあり、扱いやすさは抜群です。

 

他方、中古住宅などについては、建物の古さや建物自体に欠陥がないのか?

 

一般消費者にとって、分かりづらいものです。その上、「リフォーム」などを上手にすれば…。という話をしたとしても、知識や経験の多くない消費者にとって、想像することはとても難しいものです。

 

さらに、中古住宅の場合は新築住宅のような、建築会社の保証などもほとんど無く、寿命や耐用年数を過ぎている設備や部材などが影響したトラブルが後を引くことも多く、不動産業者にとっても「リスクのある商品」です。

 

ただ、現実的には「中古住宅」の方が消費者にとってお得な商品が多いのですが、ここまでお話しした不動産業界の戦略や構造に埋没している状況です。このような「仕組み」が、消費者が本当に求める不動産を遠ざけて、不動産業者主導の販売戦略の結果、「新築住宅が売れる!」素地を作っているのです。

 

消費者がいくら気を付けても、情報面で圧倒的な優位に立つ不動産業者にはかないません。でも、このような情報を開示して消費者の皆さんが知ることで、業界自体も変えて行けると思います。

次回は
「個人売主」は必ず損をする」
次回もお楽しみに。

 

今では自分で物件を売りに出せるウチコミ!売買REVOというサイトなどもあります。
有効に使って不動産物件の売却、購入をしてみてはいかがでしょうか?

baibai

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この記事を書いた人

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