「境界紛争」の話!? その1
ウチコミ!タイムズ編集部
2013/05/20
「境界紛争」って聞くと、何か遠い世界の国同士のイサカイ事の様にも聞こえてしまいます。でも、皆さんが知らないだけで、とても多く実在する問題なんです。この問題は、古くから存在する住宅地ほど多くなります。反対に、最近造成された郊外の住宅地等では少ないです。
■そもそも「境界」ってどんなもの?
~どんな土地であっても、土地の境は存在します。この境が無いと、何処から何処までが自分の土地で、何処からが自分の土地じゃないのか分かりません。分からなければ、売るのにも売る事が出来なくなりますよね。ご自身が「買主の立場」で考えれば、欲しくありませんよね。この土地の境を「境界」と呼んでいます。
■「境界」はどのように管理されているの?
~境界自体は、土地の隣り合う「当事者同士」でしか決める事はできません。
例えば上記の様な感じが「境界」です。現在の日本では「土地家屋調査士」という国家資格者だけがこの境界を設置したり、調査の上移動したり出来る唯一の人です。もちろん、対象の土地の所有者の方から依頼を受けてです。資格者と言えども、依頼も無い他人の土地を勝手にはできませんから。資格者以外が境界を触る事は許されていませんし、罰されます。
土地家屋調査士が、依頼を受けて境界などを決める作業をする場合過去の図面や登記簿、公図、現地調査なども参考に土地全体の測量図を作成して、隣接する土地の所有者に立会いを求めて、境界の確認をします。その上で、作成した図面で境界が大丈夫かの署名捺印をもらい境界確定図面を完成させます。
境界の了承を頂けたら、あとは境界杭を設置します。専門用語でいいますと、この流れを「確定測量」と言います。その費用については、高額になります。土地の状況や隣地の件数、土地の大きさによって変わりますが概ね30坪の成形地だったとしても30万円以上と思ってください。
■でも、そんなにキチンとしているのに問題があるの?
~上記で説明したお話しは、現在の話です。何故、問題が起きるのかを歴史的な事柄を交えて、以下にお話しします。
・そもそも、日本の土地は一部の階級の人たちを除いて、国が所有していました。
~土地などの登記簿が生まれたのは、明治時代にまで遡ります。その時代、土地を所有していたのは、国・特権階級の方・地主・名士ぐらいで一般の市民が土地を持つ事は、考えられない世の中でした。もちろん、土地の流通などは無い為、登記簿は作られましたが、測量図などは道路などの公共工事以外では、全く必要がありませんでした。
・土地の所有関係が劇的に変わったのは、太平洋戦争後の事です。
~戦後、「農地解放」によって農地のほとんどが自作農業、つまり土地の所有者になったことを皮切りに、業績を伸ばしている企業や一部の不動産関連企業などが、限定的ではありますが、土地を取得するようになっていきます。
しかし、それでも一般市民には無縁な時代でした。一部測量をするような動きもありましたが、やはり限定的なものでした。
・昭和42年に銀行の住宅ローンが、商品化されました。
~いよいよ一般市民の不動産購入の時代です。しかし、商品化されたばかりの住宅ローンは、リスク回避の為、審査などの中身はとても厳しいもので、それこそ一流企業の社員か、エリート公務員ぐらいにしか手の出ないものだったようです。
といっても、他には不動産業者に分割で支払う(割賦販売)方法しかありませんから本当に一般的になるのは、昭和50年頃ですね。この頃になってくると、日本の土地価格も高騰を続けて過去にはなかった価値が生まれ、土地自体も広く投機の対象になってきました。当然の事ながら、土地の境界一つで損得の問題も大きくなり、また測量の必要性も大きくなってきました。
しかし、ここまでの経緯をご覧いただいても分かる通り、古くから土地を所有し続けてきた方ほど、まともな測量や境界が不明な土地が多く、所有者自体も相続などで代替わりをしてしまい、たいしてお付き合いもない近隣関係の中で利害が対立する現在のステージが出来上がってしまいました。
更に悪い事に、土地の境界の問題は「両者が勝者」には絶対になりません。一方が得をすれば、もう一方は必ず損をする関係にありますから、簡単には解決できません。唯一解決のチャンスがあるとすれば、近隣と良好にお付き合いしている権利者同士が存命の間でしょう。
相続などが発生してからでは、お付き合いの無い遠方に住んでいるご子息がこの問題を解決しなければいけなくなりますから、必然的にハードルが上がります。親世代などで、境界についての口約束などがあると、更に大変です。みなさんも、ご自宅・ご実家の境界については、確認してみる事をお勧めします。
次回は、「境界紛争」の事例を幾つかお話しします。
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この記事を書いた人
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