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サブリース業界への波紋

揺れるレオパレス21への募る不信感と経営問題(2/4ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2019/12/29

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レオパレスの“オーナー切り”の前科

しかし、レオパレス21の経営問題がクローズアップされるのは今回が初めてではありません。2011年にも同社の経営が危ぶまれることがありました。企業の経営がおかしくなると、融資しているメインバンクが動き始めます。これはレオパレス21も同様で、11年の経営危機の際にはメインバンクである三井住友銀行が動いています。
11年の経営危機は、リーマンショクの影響によるもので、これを受けて三井住友銀行とのつながりあるコンサルタント会社が経営立て直しのために指導に入りました。その時に考案されたのが、それまでオーナーに対して行ってきた借り上げ保証の家賃の一方的な引き下げ、あるいは解約を迫る「終了プロジェクト」というものでした。

そのときにレオパレス21本社から各支店に1通のメールが送られます。そのメールは以下のような内容でした。

<2011年8月10日付終了プロジェクトメール文>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・「内容証明等を積極的に使用し、交渉困難な案件は解約通知を送付して3ケ月後には全室明け渡しとする」
・「10年超の案件は基本的に解約を前提とした交渉を行なう」
・「9月以降の本格的解約目標設定に先立ち、月内に一定の確率で解約に持ち込むためのスキーム・トークフロー・業務フロー等を構築する」
・「解約を辞さない強気の交渉」「オーナーからの解約の話が出ない場合はそもそも提示額が低すぎる」など賃料の大幅減額の提示を促しているほか、10年未満の物件についても賃料減額を目指すように指示
・「10年超えは基本解約という意識が足りていなし社員が見受けられるので、各責任者は意識付けを徹底するように」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オーナーとの契約を解約するにあたって、このコンサルタント会社は、「不動産の賃貸借契約を規定している借地借家法は、契約上の弱者である賃借人の保護が立法趣旨であること。同法32条1項では賃借人に「賃料減額請求権」を認めており、これは強行規定でもあることから、一連の最高裁判決では、サブリース契約が不動産賃貸借契約である以上、同法32条1項が適用されるとの判断が示されている」と主張します。

この判例を元に減額請求・解約の根拠として理論武装。11年8月10日に全支店長宛に「終了プロジェクト」メールを発信し、この減額措置を強硬に推し進めました。
本来、借地借家法32条1項では家主に対して立場の賃借人を想定した法律なのですが、この法律を逆手に取って一部上場であるレオパレス21が借地借家法での弱者となって、個人や中小企業の物件オーナーに一方的に家賃の減額を迫ったのです。

その結果、2011年~12年に15000戸のサブリース契約の解約がなされ、レオパレス21の経営は一旦は持ち直しました。しかし、そのようなあくどい仕打ちを受けたオーナーたちの間には同社に対する、恐怖と不信感が蔓延してしまうことになります。

そのため今回のアパート施工不良トラブルに端を発した、「令和の経営危機」においても、当然ながら、家賃減額・契約解除等の悪夢の再来を危惧しているオーナーが沢山います。しかも、今回発覚したアパート施工不良のトラブルもレオパレス21への不信感を強めたオーナーさんの指摘で発覚したと言われています。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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