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空き家を民泊に転用

観光だけじゃない、広がりを見せる活用需要

川久保文佳川久保文佳

2019/10/21

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イメージ/123RF

マンガをコンセプトに試行錯誤――千葉県千葉市緑区


オーナーの田中さん

JR千葉駅から千葉都市モノレールに乗り換えて6駅、動物公園駅を下車すると緑豊かな住宅街が広がります。その千葉市動物公園周辺の若葉区と緑区内には、国家戦略特別区域外国人滞在施設営業事業(特区民泊)として、住居専用地域や市街化調整区域などが実施予定地域としてエリアの制定がされています。

ここの民泊は、緑豊かな自然や地域資源を活かした滞在型余暇活動が目的とされ、最低泊数は2泊3日以上の運用や居室ごとに市長の特定認定を受ける、出入口、窓へのカギの設置、部屋の広さは25㎡以上、換気・採光・照明・防湿・排水・冷暖房設備・寝具・家具などの設置が条件とされています。

訪問したのは、ここで外国人滞在施設の第一号認定となった「ZOO HOUSE」。オーナーの田中雄三氏にお話をうかがいました。

「ZOO HOUSE」は、若葉区の源町にあり、もとは空き家だった2階建ての建物です。それを2018年に転用して特区民泊とした物件です。1階には2段ベッドを3台配置した大部屋。一方、2階には少しゆったりとしたダブルベッドを2台を配置した部屋になっています。

オーナーの田中さんは、インドネシアのジャカルタで飲食業のマネージャーとして仕事をしていたこともあって、インドネシア語を勉強し、ジャカルタにいた当時から現地の人たちと積極的にコミュニケーションをとっていました。旅行が好きな田中さんは、海外での経験値を元に開業を決意したそうです。


マンガが並ぶ共有スペース

英語の話せないインドネシアの方たちにとって、インドネシア語で対応してくれる田中さんは旅行者にとって心強い存在のようです。

「ZOO HOUSE」のある千葉県緑区は、成田空港や幕張メッセ、東京ディズニーランドへのアクセスもスムーズですが、外国人にとって、知名度が高いとは場所とはいえません。そこで訪れる人を増やす方法として「漫画」をコンセプトにして、ゲストの意見を採り入れながら試行錯誤をくり返して、今の形になったそうです。

部屋の共有スペースの壁一面には、タイトルがわかるように漫画の表紙が見えるように並べられています。ただ、全巻そろえるのではなく、漫画はすべて1巻目というこだわりを持っています。田中さんによれば「漫画の作者の思い入れを一番感じるのが1巻目だと思っていて、漫画好きの人たちにその思いを感じてほしい」と話されます。また、作品にはすべてに番号がついていて、日本語名、英語名、中国語名が記されたカードが壁に貼られています。「ZOO HOUSE」は市街化調整区域に建てられていた空き家を改装した物件なため、目の前が道路を大型ダンプカーが通ります。そのため時折、建物が揺れることから空き家で売り出されてもなかなか買い手が見つからなかったそうです。しかし、宿泊業に転用することで、大勢が楽しめる宿泊施設になりました。漫画に没頭しているとダンプの揺れもあまり気にならないようです。

幕張メッセでのアニメ系のイベントには外国人も多く訪れる、こうしたイベントの宿として重宝されているようです。

住宅地の民泊活用は周辺との連動で――千葉県千葉市花見川区


オーナーの裕子さん

次にご紹介するのも、空き家を同居型民泊に転用した物件です。

場所はJR総武線幕張駅から徒歩9分。じつはこの物件は住宅街にあるのですが、そのなかでも空き家の目立ってきたエリアに位置します。
ここのオーナーは茂さんと裕子さんというご夫婦です。この物件は清掃やクリーニングなども自分たちで行いゲストとのコミュニケーションも対面で行っています。


ゲストから届いた手紙

オープン当初は慣れないこともあったようですが、お二人ともに英語が堪能なため、今では宿泊者との対話もスムーズで海外から来る観光客が安心して泊まれる宿として定評です。オープン前はどんなトラブルがあるのか、不安でいっぱいだった話されるお二人ですが、実際に営業をはじめてみると、宿泊される方がきちんとルールを守って滞在してくれるためトラブルはほとんどなかったといいます。

オープンにあたっては壁紙の張り替え、畳替えをし、消防設備や家具備品を入れて、初期費用は300万円ほど。しかし、その費用も早期に回収が出来てしまうほど、安定した収入を得られる宿泊施設となっています。

幕張メッセのイベントで来る企業の社員の宿泊施設として利用されることも多く、スタッフ全員で泊まるれることも好評だとか。駐車場もあり、数日間のイベント中の宿泊はもちろん、機材や商材などの搬入から搬出も行えることからリピート客も多いようです。

また、お二人は海外のゲストから帰国後に届く手紙がとてもうれしいとお話してくれました。

民泊が制定された当初は都心観光型の民泊が多かったものの、現在は多種多様な宿泊施設が増えてきています。東京都心では宿泊施設としての民泊から少しずつ変化してきています。

今回紹介した物件は、駅から徒歩10分以内の便利な場所ということもあって、用途によっては、郊外型でも十分に空き家の活用が可能になると感じます。「こんなところの空き家は利用されないだろう」と思っていた物件でも、意外と利用されることがわかりました。むしろ、住宅街やちょっと郊外というエリアは、逆に宿泊施設がないため重宝がられることもあるようです。

 

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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