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世田谷区「家賃相場が安い街(駅)ランキング」に見えてくる家賃と駅の関係

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イメージ/123RF

売買物件の価格にしても、賃貸物件の家賃にしても、都市部の不動産ではほぼ常識的にいえることです。では、どんな駅の「駅近」がより有利なのか?

それを確認するため、不動産ポータルサイト「SUUMO」でお馴染みの株式会社リクルート住まいカンパニーさんが先日(2019年8月)公表した、あるリリースをひもといてみましょう。

「世田谷区の家賃相場が安い街(駅)ランキング」と、いうものです。「SUUMO住みたい自治体ランキング第2位『世田谷区』は“穴場な街”の宝庫?! 家賃7万円台で住める魅力的な街が多数ランクイン!」と、紹介されています。

・SUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の
・管理費を含む月額賃料から中央値を算出した

とするランキングです。

このうち、シングル向け(10㎡以上40㎡未満、1K・1DK、賃料範囲4万~15万円以下)では1位から29位までの30駅が発表されていますが、ここから京王線の駅とその家賃相場を抜き出してみます。なお、順位は全体30駅の中での順位です。

1位 桜上水 7.1万円
6位 上北沢 7.4万円
7位 千歳烏山 7.5万円
10位 下高井戸 7.7万円
13位 芦花公園 7.9万円
27位 明大前 8.45万円

ご覧のとおり、明大前の数字が抜きん出ています。ちなみに下高井戸(10位)は明大前のお隣の駅です。その隣が桜上水(1位)です。さらに、この3駅は互いの距離も近く、下高井戸~明大前間は徒歩で12分くらいです。

にもかかわらず、下高井戸7.7万円、明大前8.45万円。この大きな差の理由は?

答えは、地元の方ならばよくご存知です。明大前駅というのは、京王線と京王井の頭線が交わる京王電鉄の主要なターミナル駅のひとつなのです。京王線は新宿と。井の頭線は渋谷と。2つの都心のビッグターミナルと明大前駅を結んでいます。

これがターミナル駅の実力です。

下高井戸、明大前、両駅どちらへ向かうにも徒歩10分の物件があるとして、うっかり明大前を忘れ、下高井戸の方だけを広告表示すると、とんだことになってしまうというわけです。

なお、ターミナルといえば、実は下高井戸も東急世田谷線とつながる小さなターミナルです。しかしながら、同線の利便性を鑑みると(都心のビッグターミナルには繋がりません)、明大前に比べて力は大きく下がるということになります。

同じように抜き出してみましょう。今度は小田急線です。


2位 喜多見 7.2万円
4位 成城学園前 7.26万円
5位 祖師ヶ谷大蔵 7.3万円
8位 経堂 7.56万円
9位 千歳船橋 7.6万円
12位 豪徳寺 7.8万円
13位 梅ヶ丘 7.9万円
26位 下北沢 8.4万円
28位 世田谷代田 8.5万円

こちらでは、さきほどの京王線(および京王井の頭線)明大前駅同様、やはり私鉄ターミナルの下北沢駅がまざまざと力を発揮しています。また、ご存知のとおり下北沢駅といえば、東京の私鉄駅の中では大変ネームバリューの高い人気駅のひとつです。

ただし、ご覧のとおり、下北沢はお隣の世田谷代田駅に負けています(家賃相場がわずかに下回っています)。しかしながら、実は世田谷代田駅は下北沢駅から徒歩で10分圏内という目と鼻の先にあります。前述の下高井戸~明大前駅間よりもさらにご近所です。

そうした状況にあってのエリアの共有、さらには相場の共有が、上記の数字に現れているのかもしれません。それよりも、注目したいのは世田谷代田を除いた上記各駅の並びです。

下北沢から相場が下がる順に梅ヶ丘~喜多見まで、この並びは、ほぼ各駅が都心から遠ざかる距離の順番となっているのです。

このとおりです。

東京都心からの実際の距離順(左=近い 右=遠い)
梅ヶ丘 豪徳寺 経堂 千歳船橋 祖師ヶ谷大蔵 成城学園前 喜多見

さきほどの順番を最掲(相場 高い→低いの順)
梅ヶ丘 豪徳寺 千歳船橋 経堂 祖師ヶ谷大蔵 成城学園前 喜多見

すなわち、この結果には、都心から遠ざかる順に相場は下がっていくという、常識的な賃料のかたちが当たり前に示されています。

ちなみに、下北沢駅の都心方向とは逆のお隣駅はさきほどの世田谷代田ですが、一方の都心側のお隣は「東北沢」です。東北沢は世田谷区内の駅ですので、今回のランキングの対象にはなりますが、ご覧のとおり、発表された駅名の中には挙がってきていません。

つまり、東北沢の家賃相場は下北沢や世田谷代田よりも高い、ということになるわけです。各駅停車しか停まらない、いわば不便な駅であるにもかかわらずです。その理由は、やはり単純に「より東京都心に近いから」であることが想像されるというわけです。

以上、非常に簡単で、ごく当たり前の話ですが、大都市部の賃貸市場において、賃料相場が高まる基本となると、やはりこの2つ…

・ターミナル(都心へつながる複数路線を擁するなど利便性の高い駅)
・都心への近さ

以上が、重要なキーワードになってくるのだといえるでしょう。また、加えるとすれば、駅・街のネームバリューも重要な要素です。その点では、吉祥寺など典型です。

都心への距離という面ではほかの多くの駅・街に譲るものの、利便性の高いターミナルであることと、全国に轟くネームバリューにより、不動の人気を保ち続けているものといえるでしょう。

ただし、そのネームバリューの大きな要因となったひとつが大ヒットしたテレビドラマだったということについては、いまは多くの方がすでにご存知ないようです。(「俺たちの旅」という1975年の作品です)

(文/朝倉継道 画像/123RF)

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この記事を書いた人

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