入居者さんへの上手な「注意」のしかた
ウチコミ!タイムズ編集部
2019/10/03
イメージ/123RF
「隣の部屋が夜うるさくて眠れない」と、物件内から苦情! 「おたくのアパートの住人がゴミ出しルールを守らない」と、ご近所さんからクレーム!
どちらも大変悩ましいものです。特に、対応を管理会社に任せられない自主管理オーナーさんにとっては、入居者への苦情が飛び込んでくること、これすなわち難儀な仕事の始まりです。上手な注意のしかたをおさらいしましょう。
注意は全員に
電子メールやSNSが人々の当たり前のコミュニケーション手段となっている昨今ですが、賃貸住宅でのオーナーさんから入居者さんへの連絡は、色々なメリット・デメリット等もあって、いまも紙の手紙が主流です。
それを前提に、ポイントを挙げていきましょう。まず、苦情に対応しての注意は、必ず「入居者さん全員」に対して行います。
なぜなのか?
実は、一定の人物のマナー違反に対して苦情が発生した際、その人物の行動に対し、腹を立てているのは、実際には苦情を訴えた入居者さん一人だけではないことが多いのです。
たとえば、部屋の中で発する騒音であれば、隣室や上下、少なくとも2~4世帯が迷惑を被っていると想定しておくのが無難です。
さらに、ゴミ出しマナーや駐輪場の使い方、共用部分でのポイ捨てなどに対する苦情であればなおさらです。一人が声を上げた時点で、不満はすでに物件中に広がっていると見ておくのがよいでしょう。
そうした、無言の被害者といった人達にも、「オーナーはこの件でちゃんと動いている」と知らせることで、彼らの一応の安心を得ることができるというわけです。
「この物件、住んでいてストレス。出ていっちゃおうか」
そんな判断を避けるためにも、オーナー(あるいは管理会社)がしっかりと仕事をしていることを示すことはとても大切です。
同時に、これにはもうひとつのねらいもあります。それは、次なるトラブルの予防です。だらしない入居者の行動は、えてして他の入居者にもうつってしまいがちです。
「ゴミ出しルールなんて、どうせ守らないヤツがいるんだから真面目にやるだけ損だ。オレもその辺は適当に」と、なりやすいのです。
オーナー等が厳しく対応している様子を入居者さん全員に知らせることによって、そうした「感染」を防ぎます。
名指しは避ける
上記の注意を行う際は、苦情を言った人、言われた人、いずれについても人物が特定されるような表現は避けましょう。入居者さん同士の直接の言い合いや、誤解、思い込みによる軋轢を避けるためです。
「3階の一部のお部屋がうるさい旨、2階の方から苦情が出ています」などと、表現をぼかしたつもりでもダメ。日常そこに住んでいる人にしてみれば、「あそこの部屋からクレームが出たな」と、少なからず判ります。
なので、場所の表現はあくまで「物件内」まで。ご近所からの苦情の場合は「お隣」や「裏のお家」ではなく、「近隣住人の皆さんから」にとどめます。
注意は苦情を訴えた本人にも
注意の内容は、苦情を訴えた本人にも通知・共有します。書面であれば、他の部屋のポストに入れたのと同じものを本人のポストへもしっかりと入れてあげることが大切です。
そのことによって、「オーナー(or管理会社)はちゃんと対応している」旨を確認してもらいます。同時に、安心もしてもらうわけです。
これをうっかり忘れたうえで、苦情の原因となっている問題の方がなかなか解決されずにいると、怒りの矛先はオーナーの側へ向いてきます。
それを避けるためにも、本人への共有は絶対に忘れないようにしてください。
なお、書面には、
「このたびは貴重なお知らせをいただきありがとうございます。今後もお気づきの点がありましたら遠慮なくお知らせください」
などの一筆を添えておくとよいでしょう。
エントランスへの掲示は募集状況を見計らって
入居者さん全員への注意に合わせて、エントランスなどに同じ内容の掲示も行うと、広報に漏れがなく効果的です。
ただし、気をつけたいのが、物件に募集中の部屋が存在するケースです。
注意書きが内見に訪れた入居希望者さんの目に入ってしまうと、それはまさに「ここには周りに迷惑をかける人が住んでいます」と、警告を発するようなもの。大きなダメージです。(入居希望者さんにとっては有益な情報ですが)
しかも、こうした事故(?)ですが、苦情対応を管理会社に任せきりにしていると、なぜかよく起こります。
注意書きを掲示するまでのルーティーンはあっても、それを臨機応変に回収するところまでは手が回らないことが多いのでしょう。オーナーが自ら気に留めておくことが重要です。
ルール違反者への厳しい口調の張り紙が、ゴミ収集ボックスにベッタリと貼りつけられ、見た目が荒んでしまっていることなどもよくあります。ぜひ気をつけてください。
さて、以上のアクションを起こした上で、改善が見られない場合は、もう一度、同様の呼びかけを繰り返すのがよいでしょう。
それでも解決しない場合は、いよいよ原因となっている人物への直接のアプローチへ進むこととなります。
このとき、相手にとって、降って湧いた指摘にならないようにするためにも、事前の丁寧なプロセスは重要です。
たとえば、「足音がうるさい」「ドアの開け閉めが激しい」などは、ほぼ個人の癖であるため、本人はそのことにまったく気づいていないケースが大半です。
また、知らずに耳が遠くなっている方が、テレビを大音量で鳴らしてしまうといった例も、入居者さんの高齢化とともに最近は少しずつ増えているようです。
(文/朝倉継道 画像/123RF)
この記事を書いた人
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