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自分の物件は今いくらで売れるんだろう?

そんな意識を忘れないことこそが「出口戦略」です

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イメージ/123RF

「買取宣言書」付きの住宅を販売するという会社が登場しています。埼玉県本庄市に本社を置くケイアイスター不動産株式会社です。同社から購入した、買取宣言書付きの家を手放す際は、申し出れば同社がスピーディーに買い取ってくれるというのです。なんと、最短2週間で自宅を現金化できるのだそうです。


本当でしょうか?


もちろん本当なのでしょうが、条件がいくつか設けられています。たとえば、買い主は入居後、ケイアイスターさんが指定する定期的な住宅メンテナンスを受けなければなりません。これが5年毎にやってきます。となると、気になるのは費用です。まさかタダ?いえ、そんなことはありません。「基本有償」とのこと。すると、実際の金額はいくらになるんだろう?もしや相場よりも高い設定がされている…?なにしろ先方指定というだけに、とても気になるところです。


買取価格も心配です。査定はケイアイスターさんが独自に行うとのこと。では、提示された額に納得できない場合は?そのときは「買い取れないことがあります」との条件になっています。


以上、「う~ん、ちょっとキビしいな」という感じですが、コトは家の売買です。企業としてもそれなりのリスクを背負う大きな取引きです。当たり前と言えば当たり前の条件ともいえるでしょう。利用する側としては、内容・詳細をよく理解し、熟慮のうえ契約に臨むべきです。むしろ、そのことを誰よりもケイアイスターさん自身が強く希望されていることでしょう。


ともあれ、「最短2週間で現金化」が実際に行われるとすれば、利用者は、住宅売却の際にたびたび生じる大きなリスクを避けられます。


それはご存知、成約の遅延です。不動産は株のように即現金化できるものではありません。買い手が付き、価格が折り合うまでに、数ヵ月、ときには1年を超えるような長い時間を要するケースもあるのです。今回のケイアイスターさんの提案は、そういった先の見えない不安を解消してくれるアイデアともなっています。


なお、この仕組みにより買い取られた住宅は、ケイアイスターさんによって、中古住宅として再販売されることになっています。


つまり、そこでちゃんと買い手がつかなければ、ケイアイスターさんとしては要らない在庫をかかえることになるわけです。中古でしっかりと売れる家、すなわち経年劣化しにくい質の高い家が当初から供給されることへの期待が、一応持てるのかな?と、いったかたちです。今後の推移を見守っていきたいサービスのひとつといえるでしょう。


一方、賃貸住宅の場合はどうでしょうか。


「売る時のことも考えて買う」は、賃貸住宅ではさらに大事な要件となってきます。よくいわれる出口戦略の重要性です。出口戦略のことばかり考えすぎるなという意見もありますが、まったく考えずにいるのはもちろんNGです。


出口戦略に重きをおかない派の皆さんは、遠い未来の物件売却益がどうなるかということよりも、いま現在のキャッシュフローに注力すべきだと説かれます。


これは真っ当な意見です。なぜならば、たしかに賃貸オーナーさんは、短い期間内での利益の確定に追われる投資ファンドのような立場にはありません。通常は長期のローンを基盤に賃貸経営を行っています。長期のローンを利用しているということ、これ、すなわち債務における「期限の利益」を享受していることになりますから、この間、キャッシュフローが回れば回るほど、期限の利益(債務の完遂をあと伸ばしにできる時間上の利益)はより活かされていくことになるわけです。


とはいえ一方で、賃貸住宅への投資には、いわば「生もの」に投資をしているような側面があります。生ものとはズバリ建物のことです。土地は基本的にそうではありませんが、建物は、まさに生もののように日々刻々と劣化していきます。


そのため、賃貸住宅への投資では、よい出口のタイミングを逃すと、建物に依存する投資としての弱みが次々と露わになっていきます。いわゆる負動産の発生です。「儲からない」「お金がかかる」「売ろうとしても売れない」の三重苦が、ある時期を過ぎると一気に襲いかかってくるのです。それに伴い、長年積み上げてきたキャッシュフローへの毀損も、当然ですが起こり始めます。


もっとも、そうしたことは、聡明なオーナーさんであれば先刻ご承知のことです。それでも現実には、「気づいてみたら身動きがとれなくなっていた」というオーナーさんがたくさんいらっしゃるのも事実です。


すなわち、攻めの投資戦略としてだけでなく、長期的なリスク管理として、出口戦略はとても重要であるということです。


そのためには、「〇年後」を見据えたシミュレーションよりも、むしろ日頃から、
「自分の物件をいま売らなければならないとしたら、どんな収支決算となるのか」
「買い手は十分にいるのか」
これらを概算でも把握し続けておくことが、的確な判断のためにはより好ましいかもしれません。


(文/朝倉継道 参照元/ケイアイスター不動産株式会社プレリリース 画像/123RF)

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この記事を書いた人

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