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大手も危険領域に。

バブルは間もなく崩壊!? 知っておきたい2020年以降の不動産市場

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イメージ/123RF

メジャーデベロッパーが危ない?

世界最大手の信用格付機関「S&Pグローバル・レーティング」が示したリポートが、市場の不安を呼んでいます。これを受けて経済・金融情報サイト「Bloomberg(ブルームバーグ)」日本語版が7月5日付けで報じたところによると、「日本の不動産企業大手が危険な領域に入りつつある」とのこと。日本国内の不動産市況は今後下降局面との見方が示されています。


ちなみにこのニュース、日本語版ではやや表現が忖度されています。英語による原文では、「危険な大手」がはっきりと名指しされています。三菱地所、三井不動産、住友不動産、野村不動産ホールディングスです。これら4社が現在もっとも高いリスクに晒されているとの指摘です。


なお、S&Pグローバル・レーティングの「S&P」は、「スタンダード&プアーズ」の頭文字です。普段こちらの呼び名の方をよく耳にされている方が多いでしょう。

健全な?今回のバブル

とはいえ、いわゆるアベノミクスのスタート以来、日本の不動産市場は「またバブルになる」「まもなく崩壊する」などといわれながらも、もう6年以上、総じて堅調を保ってきました。大量のマネーが流れ込みつつも、80年代バブルのような異常な過熱感は生じず、表面に出てくる数字に比べマーケットは基本的に冷静です。


その大きな理由のひとつとして挙げられるのが、資金需要の分散化です。日銀の金融システムレポートなど多くの指摘にもあるとおり、近年の不動産向け融資は、一部大型の貸出先に偏るような傾向が少なく、資金は満遍なく多数に供給されています。そのまさに中心といえるものこそが、個人オーナーによる賃貸経営です。個々に投資の失敗はあっても、それが金融機関一個をゆるがすような大ダメージにはならないという意味で、いわば数のリスクヘッジがなされている点が80年代バブルと今回のバブル(?)との違いです。


さらにもうひとつが、現在の不動産投資が、かつてのような転売益をねらった一攫千金を夢見るものではなく、日々の運用益をめざす堅実なものに推移している点です。不労所得性の高いキャピタルゲインではなく、物件も投資家も働いて稼ぐ要素が強いインカムゲイン中心の不動産投資の割合が高い現在の状況は、ひと言でいうならば健全です。


ただし、健全な中にも暴走アリ。「かぼちゃの馬車・スルガ銀行」や「TATERU」による不適切融資事件など、脱線やほころびも見え始めたのが、昨年・2018年という、トピックの多発した1年でした。

大手は借金をし過ぎているのか

そのうえで、今回の「S&Pグローバル・レーティング」が示したリポートは、以上とは別の角度から見える危機を指摘しています。大手不動産企業における財務レバレッジが、今後も上昇し続けるというのです。これは、長年続く低金利が今後も継続される見通しをふまえてのことでしょう。なお、ここでいう「財務レバレッジの上昇」とは、平たくいうと借金への負担が重くなることを意味します。冒頭に名前が挙がったような不動産大手各社は、今後、危険なほどの負債過多の状況に陥るのではないかという予測です。


そこで、「では新たな借金を抑えてどんどん返せばよいではないか」ということになりますが、それについては景気減速が足を引っ張るだろうというのが、今回のS&Pグローバル・レーティングの見方のようです。前記ブルームバーグの報道によれば、S&P社は、その要因として製造業を中心とする企業業績の悪化や、2020年と2023年に東京に訪れるオフィス需給問題を懸念材料に挙げています。


もっとも、このうちオフィス需給における2020年問題については、現在、ほぼ解消が見込まれています。「都心のオフィス需要が供給を下回る」との見通しが以前より不安視されてきたこの問題ですが、足元の空室率から見て、来年の危機を予測する声は、いまはほとんど聞かれない状況となっています。となると、こちらもかたちとしては健全といえそうです。インカムゲイン主義による手堅い実需が、市場の不安を見事に払しょくしつつあるものといえるからです。


そうしたわけで、とりあえず「健全」で「堅固」な様子を見せているいまの不動産バブルに、目の前に迫る危機は存在するのでしょうか。今回のS&P社の見方に対しては、おそらく意見が分かれるところでしょう。むしろ、国内よりも国際情勢の方に、警戒すべき火種が多いと見るほうが多数派かもしれません。

大相続時代を迎える2020年以降の住宅市場

一方で現在、多くの不動産関係者の関心を集めているのが、2020年以降の住宅市場です。たとえば東京ではこの間、晴海・オリンピック選手村跡地の大規模開発および分譲が行われます。都心部すぐ近くに、人口1万2000人規模の新たな街が誕生します。これが市場にどんなインパクトを与えるのか、楽観、悲観を含め、予断を許さない状況です。


また、そのあとさらに大きな影響を市場におよぼす可能性が高いと指摘されているのが、いわゆる団塊世代の後期高齢化です。2022年から24年にかけ、これが全国で進行します。団塊以上の世代の分も合わせて相続が尻上がりに増え、東京はじめ各大都市では、都心周辺、さらには郊外の住宅地が年を追うごとに大量にマーケットに放出されることになるでしょう。


なお、団塊世代以降も、比較的人口の多い世代が次々と後期高齢者への仲間入りをする状況は続きます。従って、これらが市場への強力な供給圧力となり、それを受け止める需要がどう形成されるかによっては、2020年代の日本の不動産市場は、いまのわれわれには予測し得ない未曾有のかたちを呈することにもなりそうです。


そんな転換期が、20年後でも30年後でもない、われわれのすぐそばに近づいてきています。


(文/朝倉継道)

 

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