大家×YouTuberの「DIYマッチング」が築古物件のポテンシャルを引き出す

2026/03/20
築古物件の空室対策=高額リフォームという常識を覆す新たな試みが「ウチコミ!」で始まった。大家さんとYouTuberを直接マッチングし、部屋がよみがえるプロセス自体をコンテンツ化する企画だ。舞台は仙台のワケあり物件。1日のDIYで魅力が引き出され、動画公開前に契約者が決まる展開に。多額の費用や業者任せの募集から脱却し、アイデアで空室を埋める新たな選択肢をご紹介する。(文/土井 芳尭)
深刻化する空き家問題 新企画誕生の背景
すべての賃貸物件は、空室期間が長引くほど収益を圧迫し、時間経過とともに築古へと近づいていく。リフォーム費用が高騰している昨今、「何から手を付けるべきかわからない」「費用対効果が合わない」と頭を抱える大家さんは少なくない。こうした深刻な社会課題に対し、「自身のDIYスキルを役立てて、困っている大家さんを助けたい」と手を挙げたのが、人気YouTuberのとっことん氏だ。一方で「ウチコミ!」は、大家さんと入居希望者が直接チャットでやり取りできるプラットフォームである。条件面だけでなく、お互いの人柄や価値観を含めたコミュニケーションが取れるため、DIY可物件などの柔軟な運用スタイルと非常に相性がいい。この両者の強みを掛け合わせ、「物件価値を高めたい大家さん」と「DIY系YouTuber」を結びつける新プロジェクトが始動した。

2025年11月に開催した「YouTuber×大家さんマッチングDIYキャンペーン」
ボロ屋を逆手に DIY賃貸の魅力
募集開始後、100名近い大家さんから反響が寄せられた。その中で本企画の舞台に選ばれたのは、2022年に大家業をスタートしたT氏が所有する仙台市の戸建て物件である。実はこの物件、「再建築不可」かつ「雨漏りあり」という、一般的な投資家なら敬遠しがちなワケあり物件だった。しかしT氏は、「入口(購入価格)さえ安ければ、残りの予算でいかようにも工夫できる」と、あえて購入に踏み切ったという。そこで彼が採用したのが、入居者に自由な改装を認める「DIY型賃貸」という運用スタイルだ。将来的に遠方へ引っ越す可能性を見据え、細かな修繕が行き届かなくなる分、家賃交渉に応じる代わりに入居者自身にDIYを楽しんでもらう仕組みである。
「築年数も経っていますし、どう変えられても怖さはありません。むしろ沢山変えてほしいですね」
とT氏は語る。義理の母が物件探しに苦労した経験から、「住宅弱者にも安心できる場所を提供したい」と大家業を志した彼にとって、ピカピカの完成品を用意するのではなく、安く素材を提供して入居者と一緒につくり上げる戦略は極めて自然な選択だった。
古さを強みに変え動画映えする施工に
「自由にたくさん変えてほしい」。T氏のそんな寛容な言葉は、現場を訪れたクリエイターの心に火をつけた。とっことん氏は
「外壁が傷んでいて玄関周りも手付かずの状態でした。でも、だからこそ全体的に滾りましたね」
と笑顔を見せる。作業に割り当てられた時間は、わずか「1日」のみ。その中で最大のビフォーアフターを見せるために彼が目をつけたのは、傷みが激しいトイレの壁だった。ここで活躍したのが、漆喰風の塗料「手塗りモルモル」である。とっことん氏によれば、
「壁紙だと下地処理を含めてプロでも2日かかりますが、これなら1日で仕上がり、手間賃も安く済みます。手塗りの模様がおしゃれな空間を演出してくれますし、調湿効果もあるんです」
とのこと。さらに、使用した資材は100円ショップやホームセンターなど身近な場所で調達されている。
「100均のリメイクシートは数年経っても剥がれずコスパ最強です。和室も、天井にダクトレールを付けて暗めの照明を垂らすだけで一気にモダンになりますよ」
と、大家向けの心強い助言も残してくれた。多額の費用をかけて直すべき欠点だと思い込みがちな古さも、クリエイターの技と視点が加われば、たちまち魅力的なコンテンツへと生まれ変わるのだ。


DIY施工前(左)と施工後(右)
空室対策の新たな選択肢
1日のDIYを経て、見違えるように明るく蘇った物件。その変貌ぶりを見たT氏は、
「手を加える人の力量で、立派な商品に生まれ変わるのですね。これは空き家問題を解決していくための一つの大きな方法だと思います」
と確かな手応えを口にした。実は今回の企画、施工を終えてからDIY動画をリリースする前に、物件の入居者が決まってしまった。「動画発信を経てウチコミ!経由で入居する」という当初のシナリオとは異なる結果になったものの、ここから得られた教訓は非常に大きい。それは、「完璧なリフォームが完了するまで募集はできない」という大家の強固な固定観念を見事に打ち破ったことだ。短期間かつ低コストで物件の第一印象を引き上げたこと、そして「自由にDIYできる」という物件ならではの強みを明確に打ち出したことが、結果的に早期の客付けを力強く後押ししたのである。柔軟な発想を持つT氏は、ほかの所有物件でも「10年住み続けたら登記を変える(家を差し上げる)」といった譲渡型賃貸を提案し、入居者のニーズに寄り添いながら退去リスクを減らす独自のアプローチを実践している。多額の費用に頼るのではなく、DIYでピンポイントに価値を上げ、そのプロセス自体を楽しみながら空室を埋めていく。
今回の一連の取り組みは、空室に悩む大家が賃貸経営の主導権を取り戻すための「力強い選択肢」となるだろう。
<プロフィール>
とっことん
YouTuber。内装大工7年、電気工事士7年、リフォーム工事6年の計20年の建築経験あり。ノウハウや凝り性な性格を活かし、『誰しもがマネしたくなるようなDIY』を日々作成中。DIYチャンネルのSNS登録者数が延べ18万人を突破し、TBS情報番組『ラヴィット!』『めざましテレビ』でDIYチャンネルとして紹介される。
この記事を書いた人
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン『ウチコミ!タイムズ』では住まいに関する素朴な疑問点や問題点、賃貸経営お役立ち情報や不動産市況、業界情報などを発信。さらには土地や空間にまつわるアカデミックなコンテンツも。また、エンタメ、カルチャー、グルメ、ライフスタイル情報も紹介していきます。






















