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国が促す賃貸住宅とオーナーの 「福祉」への参加。改正住宅セーフティネット法・ 3つの柱とは

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昨年秋に施行された改正住宅セーフティネット法。オーナーを安心させ、単身の高齢者を物件に迎え入れやすくするための仕組みが拡充されている。3つの柱からなるその概要と、オーナーを取り巻く動きについて見ていく。

国が進める賃貸住宅「福祉」への参加

昨年10月1日、改正住宅セーフティネット法(および関連する諸法)が施行された。世間的に大きなニュースとはいえないが、賃貸住宅オーナーである読者の中には少なからずご存じの方もいらっしゃるだろう。賃貸住宅経営は当然ながら営利事業のひとつだ。金銭的リターンを求めるための投資でもある。なおかつそうした度合いは、安定した給与を土台にローンで人生の勝負に出る、いわゆるサラリーマン大家さんが数多く現れ始めた2000年代以降ますます高まっているともいえるだろう。

一方で、賃貸住宅はいま世の中から重要な公共的役割を担うことも求められている。いわば福祉への参加だ。民間の賃貸住宅に対し、その一部を(あるいは多くを)セーフティネット化する施策を国は進めている。主な背景にわが国人口の高齢化がある。加えて単身世帯の増加、さらには持ち家率の低下がある。この3つを足し合わせるとこうなる。「賃貸に暮らす(暮らさなければならない)単身の高齢者がこれからどんどん増えていく。賃貸住宅へ入居したくとも断られてしまう高齢者を無くさなければならない」―――だ。

そのため、国は上記の法改正によって高齢者のスムーズな住宅確保のための仕組みを拡充させた。そこでは3つの柱が示されている。そのうえで、これらを見ると共通する1個の重要な目的が浮かび上がってくる。それはオーナーの安心を得ることだ。今回の法改正の主眼はまさにそこにある。高齢者とりわけ単身高齢者の入居に際し、賃貸住宅オーナーが抱く不安を払拭または低減させる。彼らを迎え入れやすい環境をこしらえていく。そのため整備された各々の決めごととなるわけだ。加えてこれらはもちろん完成形ではない。その途上のものといえるだろう。制度としてのぎこちなさはまだ各所に見られている。模索は今後も続くはずだ。国はいま3省合同(国土交通省、厚生労働省、法務省)、2省共同管理(国交省、厚労省)といった重厚な体制でこの課題に取り組んでいる。

オーナーの安心と入居者の円滑入居の促進

改正住宅セーフティネット法が掲げる3つの柱を順に紹介していこう。まずは「オーナーが賃貸住宅を提供しやすく、高齢者等が円滑に入居できる市場環境の整備」だ。

なお、法の建て付け上、居住支援の対象は高齢者のほか障害者、低額所得者なども併せた「住宅確保要配慮者」となっている。そのうえでここでは、

1. 終身建物賃貸借の利用促進
2. 居住支援法人による残置物処理の推進
3. 高齢者等が利用しやすい家賃債務保証業者の認定制度の創設

これらが示されているが、特にポイントとなるのが2番目の「居住支援法人による残置物処理の推進」だろう。

居住支援法人とは、住宅セーフティネット法に基づき、高齢者等への居住支援を行う法人として都道府県知事が指定するNPOなどの各法人を指す。さらに、これらが行える業務として、

(1)セーフティネット登録住宅入居者への家賃債務保証
(2)賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供や相談
(3)見守りなど、高齢者等への生活支援
(4)賃貸人への、賃貸住宅の供給の促進に関する情報提供
(5)残置物の処理等
(6)上記(1)~(5)に附帯する業務

 以上が規定されているが、(4)(5)は今回の法改正により追加されたものだ。

入居者の死亡により、賃貸住宅内に残された家財すなわち残置物の処理は、特に単身高齢者の場合、相続人の探索なども絡んでオーナーの重い負担となる可能性がある。そこで今回、これを居住支援法人が担える体制が整えられた。オーナーにとっては大きな助けだ。単身高齢者の入居に伴う不安を減らすための心強い仕組みとなっている。

1の「終身建物賃貸借の利用促進」については、認可手続きの簡素化が図られた。なお、終身建物賃貸借とは、借家人が生きている限り存続し、死亡時をもって終了する賃貸借契約をいう。賃借権が相続されないため、契約解除のための相続人探しが不要となる仕組みだ。

3 の「高齢者等が利用しやすい家賃債務保証業者の認定制度の創設」においては、一定の要件を満たす事業者を国土交通大臣が認定する制度が新たに設けられた。併せて、保証を請け負う事業者が負担するリスクへの手当ても用意されている。具体的には、住宅金融支援機構による保険が利用できるかたちとなる。

居住サポート住宅の認定制度を創設

改正住宅セーフティネット法2本目の柱は、居住サポート住宅認定制度の創設となる。

居住サポート住宅とは、

1. ICT(情報通信技術)等による入居者の日常の安否確認
2. 訪問などによる見守り
3. 入居者の生活、心身の状態が不安定化した際は福祉サービスへ繋ぐ体制

これらサポートが付いた賃貸住宅のことだ。

認定は、居住支援法人などがオーナーと連携し計画したものについて、市区町村長(福祉事務所を設置している自治体)等がこれを行う。

そのうえで、

・高齢者等については(前述の) 認定保証業者が家賃債務保証を原則引き受ける
・入居者が生活保護受給者の場合、住宅扶助費等の代理納付を原則化
・物件改修費、家賃低廉化等への補助

こうした措置が、オーナーの安心のためとられているのがポイントだ。

地域の居住支援体制の強化

3つ目の柱は、住宅施策と福祉施策が連携したかたちでの地域の居住支援体制の強化となる。こちらは、いわゆる役所側での体制整備のためその枠組みなどを規定するものだ。

1. 市区町村による居住支援協議会設置を努力義務化
2. 国土交通大臣および厚生労働大臣が共同で基本方針を策定

と、なっている。

このうち1は、自治体の住宅部局や福祉部局、さらには居住支援法人、不動産関係団体、福祉関係団体などを構成員とした会議体とされている。2は、住宅セーフティネット法の施行および推進における国交省と厚労省、2省共同管理を明確化するものだ。

トップとなる省レベルから地域の現場にいたるまで、過去には別個の政策課題ともなりがちだった「住宅」と「福祉」について、各々の取組みを融合させつつ難局に当たろうという国の姿勢が示されている。

オーナーにはどんなアプローチが?

以上、紹介した新たな法整備を受け、今後オーナーに対してはどういった存在からどんなアプローチがあると予想されるだろう。

当面、考えられるのが管理会社によるこんな提案だ。空室対策への一案として、単身高齢者の入居を拒まない、円滑に入居できる物件を今後提供していかないかと、オーナーが持ちかけられるケースが出てくることになる。あるいは、現に部屋探しに困っている身寄りのない単身高齢者が管理会社の窓口に来ていて、その人の住宅確保のため、居住支援法人との連携を依頼されたりするケースもあるだろう。

述べてきたとおり、改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人の役割が過去に増して重要になっている。この制度は2017年10月の改正法施行の際にスタートしたものだが、昨年12月31日時点での名簿一覧を見ると、その数は全国で1,120法人を数えるまでに増加している。とはいえ、これらが住宅セーフティネット法活用の舞台となる賃貸
住宅およびそのオーナーに対し、日頃から繋がりが深い存在かというと、おそらくそうでない場合が多いだろう。

そこで、オーナーとはまさに事業上のパートナーとして密接な関係にある管理会社が、ここではやはり起点になるはずだ。とりわけ受託管理物件への高齢者のスムーズな入居をビジネスチャンスと見ている管理会社にあっては、実績のある居住支援法人をネットワークに加えたり、そうした存在の育成をバックアップしたりするケースも少なくないと思われる。

加えて、他方では、宅地建物取引業者や賃貸住宅管理業者(併せて不動産会社)、さらには家賃債務保証業者が居住支援法人の指定を受けるケースも出て来ている。居住支援法人となる法人については、一般にNPO法人、社会福祉法人、一般社団法人などがイメージされがちだが、実は「居住支援を目的とする会社」も指定を受けられる。福祉・公益的性格の強い居住支援事業と、収益性・効率性が何より求められる営利事業との内部摩擦が懸念されるところではあるが、一方で宅建業者、管理会社、家賃債務保証会社は、普段からオーナーと入居者の間に立ち、仲を取り持つことに手慣れたプロだ。誠実なスタンスに立って仕事をやり切るならば、力強い制度の推進者になることも可能なはずだ。

ともあれ、このたび施行の改正住宅セーフティネット法だが、述べたように管理会社からの提案というかたちで不意にオーナーとの接点が生じる可能性がある。インターネットで「住宅セーフティネット制度 国土交通省」と打ち込み、検索すれば、国交省の案内がすぐにヒットするはずなので、時間のある際にひととおり目を通しておくのがよいだろう。また、当制度の利用にともなってオーナーに関係してくることがほぼ確実な、亡くなった入居者の残置物の処理に関する契約については、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」と打ち込んで検索する。やはりすぐに国交省のページがヒットするはずなので、こちらもぜひ目を通しておかれたい。

持ち家中心だった住宅政策の転換点?

戦後のわが国の住宅政策の中心といえば、それは多くが知るとおり「持ち家」だった。あるいは「国民みんなに家を持たせたい」とするそのモチベーションは、過去形ではなく、21世紀のこんにちもさほど変わらず続いているともいえるだろう。

そのうえで、この間に実行された日本の持ち家政策は、目をつぶるべき点もいくつかあったにしても、総じていえば緻密かつ巧妙なプランにより大成功をおさめてきたといっていい。とりわけ、住宅金融公庫法の成立(1950)以後、国が各施策によって事実上国民の信用を補填し、代わりに国民は生涯にわたる忠実な労働をもってこれに報いるといった体制がかたちづくられたことは、戦後日本型雇用が確立し、それが巨大な経済を生んだ理由においての根幹のひとつである可能性もある。

一方、そうした傍らにあって、賃貸住宅への政策的関心は国民生活の向上といった面で常に薄かった感がある。その根底には、賃貸住宅は借りる住まいであるとともに仮(かり)住まいであり、人々はいずれその多くがこれを捨て、「卒業」していくとのイメージが多分に存在していたといってよいだろう。しかしながら、それが現在大きく変化していることにわれわれは気付かされている。国民は少なからず賃貸住宅を卒業できなくなったのだ。仮住まいではない、人生の最後をも幸せに過ごすことのできる家をいま多くの人が「賃貸」の中に探さなければならなくなっている。

そのうえで国は奮闘している。なぜならわが国の人口は一方ではどんどん減り続けている。厳しい財政も当分抱え続けることになる。単身の高齢者を受け入れる賃貸住宅が足りないならば公費で代わりをつくり、公費で管理すればよいというわけには当然いくわけもない。

国の模索、そしてわれわれ国民への提案に、今後も注意深く耳を傾けていきたいところだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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