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「Z世代」のお部屋探し―――デジタルネイティブ世代が変えつつある選択基準とは

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1990年代後半から2010年前後に生まれたいわゆる“Z世代”は、スマートフォンやSNSの存在を当たり前の環境として育ったデジタルネイティブ世代だ。賃貸住宅市場においても、単身入居の中心層として存在感を強めている。本記事では、公的データや調査結果を踏まえながら、Z世代の賃貸お部屋探しの現状を整理し、その背景にある価値観や意思決定の特徴を考察する。(文/安本 夏未)

SNSを活用したタイパ重視の部屋探し

Z世代の住まい探しを語るうえで欠かせないのが、スマートフォンの存在だ。

総務省の最新「令和6年通信利用動向調査」によると、20代のスマートフォン保有率は96.4%、さらにインターネット利用率は97.8%と報告されている。この数値が示す通り、Z世代にとって情報収集の起点はほぼスマホだ。物件検索サイトの閲覧、比較検討、問い合わせ、内見予約までがオンラインで完結することは、今やありふれた事実となっている。

さらに特徴的なのは、「検索→比較→決定」までのスピード感だ。複数サイトを横断し、スクリーンショットを保存しながら検討するなど、短時間で効率よく情報を取捨選択する行動が一般化している。いわゆる“タイムパフォーマンス(タイパ)”意識が住まい探しにも反映されていると考えられる。

また、SNSで物件名やエリア名を検索し、実際の居住者の投稿や街の雰囲気をチェックしたり、「ハッシュタグ検索(タグる)」や「レコメンド動画」から物件を見つけたりするといった行動も多く見られる。公式情報とユーザー発信情報を並列で比較する点は、従来世代との違いの一つだ。

膨大な情報に触れている彼らにとって、内見に行って「イメージと違った」となるのは最大のタイムロス(タイパの悪化)である。

SNSでの調査は、そのリスクを最小化するための防衛策と言えるだろう。

「納得感」のないコストへの拒絶

Z世代の金銭感覚は、単なる安さへの固執ではない。その支出に「根拠」と「納得感」があるかどうかを極めて重視する。その最たる例が、初期費用に対する姿勢だ。

調査によれば、Z世代が「住まいを探したときの優先順位」として、賃料と並び「初期費用」がトップにランクインしている(株式会社アットホーム「U20の一人暮らしデビュー実態調査」)。

この層にとって、仲介手数料や礼金といった「何も手元に残らない費用」は、合理性に欠ける出費と映る。逆に言えば、こうしたコストをカットできる「仲介手数料無料」の仕組みは、彼らにとって強力なインセンティブとなり、物件を選ぶ際の決定打となる。

浮いた資金を、QOLを高める家具や“推し活”などの趣味に投資するのが、彼らの合理的な選択なのだ。

広さや距離よりも“利便性”を追求

若年層の賃貸契約は単身世帯が中心だ。そして、Z世代の多くは進学・就職を機に初めての一人暮らしを経験する。

そのため、家賃負担を抑えたコンパクトな間取りを選択する傾向が強い一方で、「狭くても快適」であることが重視される傾向が見られるという。具体的には、「バス・トイレ別」「独立洗面台」「TVモニターフォン」「高速インターネット環境」「宅配ボックス」といった、生活の質に直結する設備への関心が高いとされている。

単純な広さよりも、「限られた空間でどれだけ快適に過ごせるか」という視点が強まっていると読み取れる。家賃の絶対額だけでなく、設備や築年数、内装の清潔感とのバランスから“納得感”を判断する姿勢が特徴的だ。

また、お部屋のコンパクト志向のみならず、駅との距離に対する意識も多様化しつつある。

コロナ禍以降、テレワークやオンライン授業の急速な普及が与して、職場や学校への距離、ひいては駅からの距離をさほど重視しない人も増えている。代わりに、日常生活の利便性がより注目されるようになった。たとえば、「スーパーやドラッグストアの充実度」「近隣のカフェや飲食店」「公園や散歩コースの有無」「街の雰囲気や治安イメージ」など、生活圏全体を総合的に判断する動きだ。地図アプリの口コミやSNS投稿を参考にすることで、内見前から周辺環境を具体的に把握する動きも浸透している。

もちろん現在「駅徒歩○分」が重要な要素であることに変わりはないが、駅からの距離という単一指標ではなく、「どんな日常が送れるか」という観点で立地を捉える傾向がだんだんと強まっていると考えられる。

レビュー文化と透明性への意識

Z世代は、あらゆる商品・サービスをレビューで比較したり、SNSを駆使してリサーチしたりする環境に慣れている。それは賃貸住宅も例外ではない。

物件そのものの条件に加え、管理会社の口コミ、トラブル時の対応事例、退去費用に関する評判といった“運営面”の情報も検索対象となる。
レビューを通じて「想定外」を避けたいという意識が強く、情報の透明性が重視される傾向がある。広告的な表現よりも、具体的で率直な説明が信頼につながりやすい点も特徴的だ。

これは、モノのスペックよりも体験や信頼を重視する消費行動の延長線上にあると考えられる。住まいは長期にわたる生活基盤であるからこそ、「安心して住めるかどうか」という心理的要素が意思決定に大きく影響するだろう。

以上、Z世代のお部屋探しについて考察してきた。ただし、これらは単なる若年層特有の傾向というより、デジタル環境の進化に伴う市場全体の変化の先行指標とも捉えられる。

Z世代は今後、年齢を重ねながらも一定期間賃貸市場の主要プレイヤーであり続ける。その選択基準や情報収集行動を理解することは、Z世代の価値観が一時的なトレンドではなく、今後のニュースタンダードとなっていく以上、これからの賃貸市場の動向を読み解く一つの材料になるだろう。

彼らの視線に立ち、何が「無駄」で何が「価値」なのかを再定義することが、これからの満室経営には不可欠である。


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この記事を書いた人

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