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「猫付きシェアハウス」の作り方、運営方法を教えます!

山本 葉子山本 葉子

2020/10/08

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写真/山本葉子

「猫付きシェハウス」はこうしてはじまった

都市部を中心にかなりの数のシェアハウスができています。

その種類も部屋数が多いものやこぢんまりとしたアットホームなもの、また、運営方法もいろいろですが、その中でひときわ特徴のあるのが「猫付きシェアハウス」です。

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実はこの「猫付きシェアハウス」は、私ども猫の保護団体「NPO法人東京キャットガーディアン」がFCの手法で運営しています。その形態を一言でいってしまうと、従来のシェアハウスの機能に「行き場のない猫たちの保護・譲渡の場所」を加えたものです。

はじまりは2014年に「猫の多頭飼育崩壊」の受け皿の一つとして、「猫付きシェアハウス」を作ったことでした。

最初に猫付きシェハウスの住民になったのは、家庭内繁殖を繰り返し、埼玉県から保護依頼を受けた猫たちです。

その猫たちは戸建て住宅に放置されており、私たちは急いでシェルターに運びました。保護した猫たちのほとんどは栄養失調で、消化のよいご飯を食べさせながらケアを続けて、体調が整ってからシェアハウス入居者第1号として5頭の猫たちが住むところになりました。

猫付きシェアハウスは、とても反響の大きい物件運営で、お問い合わせや取材がひっきりなしに来て、一件ずつの対応が難しくなるほどでした。

そんな猫付きシェハウスについては、毎月「勉強会」を開催しています。

猫たちは共有スペース、各部屋を自由に移動

実際に猫付きシェハウスの運営をはじめる手順は次のようになります。

まず、「猫付きシェアハウスのオーナーになりたい!」と勉強会においでいただいたり、物件をお持ちでご猫付きシェハウスにしたいという相談メールをいただいた方と、物件について検討を開始します。

やはり、立地はとても重要で、猫付きだからといって、普通のシェアハウスでがうまくいかないところでも、入居者が集まるというわけではありません。

また、入居者を女性限定にするのか、男女が住めるように運営するのかも話し合います。部屋数は多いほどよいというわけではありません。周辺の環境などを考慮しながら、採算性を考えていきます。


共有スペースのリビング

当然ですが、一部屋の大きさが適正に取れることがもっとも重要です。狭すぎるのも問題ですが、逆に大き過ぎるお部屋だと、家賃が高いくなり、入居者が決まりにくいという部分もあります。

室内の仕様は一般的なシェアハウスとほぼ同じですが、違いは各部屋に「猫ドア」を付けている点です。


猫仕様猫ドア

猫たちは共有のリビングはもちろんですが、各お部屋を自由に出入りできるようになっています。ただ、猫ドアにはロックがかけられるようになっていて、必要な場合は入れないこともできますが、基本的に住人さんのお部屋も自由に行き来できるようにしています。

そして、保護団体がとして一番に重要に考えることは「猫の逃走防止手段」をしっかりとすることです。
具体的には玄関やベランダには二重ドアを設置します。


逃走防止二重ドア


逃走防止ベランダ

ファミリーで暮らす戸建てもそうですが、多人数が暮らすシェアハウスでは、こうした二重のドアは必須の措置になります。猫たちは、おうちに不満がなくても好奇心のカタマリなので、常に脱走を狙っています。外に出て不幸な事故に巻き込まれないためにも、「二重ドア+出入りのルール」を作っておくことは必須な重要項目です。もちろん、住民の方のプライベートスペースである各お部屋の窓も「ロック機能のついた網戸」を設置します。

キッチンは格子状の柵の「トレリス」などの資材を使って猫たちが入らないように独立させます。これはキッチンに置いてあるものを食べてしまったりしないようにするためで、開けた空間にするため見えるけど入れない「クローズドキッチン」にするわけです。


キッチン猫侵入対策

こうしたことで「作りかけのミネストローネを猫がなめちゃった!」「玉ねぎ中毒になっちゃう?」といった事態も防げます。

以前ご相談いただいたケースでは、炒め物でフライパンを振っているときに、「猫が飛び込んで来た」というものもありました。フライパンの動きに釣られての行動だと思うのですが、このときは幸いにも人にも猫にも火傷はなく、猫が「キャベツまみれになった」だけで、無事だったようですが、やはり、キッチンに入れないようにしておくほうが安全です。

入居者は「保護猫の預かりボランティア」

「猫付きシェアハウス」のシステムですが、考え方としては住人の方々が保護猫達の預かりボランティアとなります。

ですので、入居者の方どうしでシフトを組んでいただき、猫たちの朝ごはん・夜ごはんの用意、猫のトイレの清掃の当番を決め、気が付いたことはノートに書いて住人同士でも情報共有していただいています。
また、猫たちの体調に問題が出た場合はいち早く知らせていただき、保護団体が対応し、ケアの方針を立てます。

いろいろな事情で行き場を失った猫たちの中には、体調が万全でない子もいて、年を重ねてライフステージが変わると処方食が必要になったりします。そのため団体の獣医師の指導をもとに食べるものを工夫したり、量を加減したりしています。猫たちの飼育・体調管理については、入居者の方々と保護団体が協力して行っていくイメージです。


猫仕様棚

今までの物件運営(東京2カ所・大阪2カ所)では、住人の方々とてもきれいに住んでくださっていています。シェハウスですので週に1度のサイクルで、団体のスタッフが巡回をおこなっています。そして、消耗品の補充を中心に、水回りの清掃やチェックを行い、入居者の皆さんと猫話をしたりしています。

猫をただシェアハウスに入れただけでは、よい飼育は保証されません、入居者の方の中には猫の飼育が初めてという人もいます。

入居の動機も、相談できる・猫について学べる・社会貢献になる――そういったことをメリットと考えてくださる方などさまざまです。どの物件も数多くの方に入居してもらっていて、とてもありがたいと思っています。

そして、シェアハウスを卒業された方の中には「猫OKの物件を用意できました!」と、譲渡を申し出てくれる方も多くいらっしゃいます。こうした方はこれまで猫と一緒に暮らし、猫の様子をよく知っているベテランの預かりボランティアさんとなられています。

シェアハウスに入居されたばかりの時は飼育の初心者だった方も、生活を共にすることで猫についての充分な知識をスキルを身につけています。こうして運営していく「猫付きシェアハウス」は、小さなシェルターの機能と猫の飼育を学ぶ場ともなっています。

この秋に東京でまた一つ「猫付きシェアハウス」がオープン予定です。

猫と人が共生し、社会貢献事業にもなる。もちろんほかにも方法はあるかと思いますが、付加価値のついた楽しい物件運営を考えていきたいと思っています。

 

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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