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『高齢者の賃貸住宅入居支援ガイドブック』 その中味と効能

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高齢者の入居者なしでは成り立たない賃貸住宅経営

日本の世帯のかたちは大きく変わってきている。これまで標準世帯とされてきたのは「夫婦2人・子ども2人」の4人家族だったが、この標準世帯はいまでは少数派で、もっとも多いのは単身世帯になっている。単身世帯が増える傾向はこの先も続き、このため世帯数は増えるとされている。しかし、その数も2025年をピークに減少に転じると見込まれている。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した2040年までの世帯数の将来推計では、全世帯数は5075万世帯と18年の5388万世帯に比べ300万世帯以上減少。そのうち単身世帯は全世帯のおよそ40%を占め、なかでも世帯主が75歳以上の世帯は1217万と、全世帯数のおよそ25%になる。さらに75歳以上のひとり暮らしは500万人を超えると推計されている。

このように変化する人口動態、世帯の形態において賃貸市場では高齢者の存在は無視できない存在だ。しかし、日本賃貸住宅管理協会・家賃債務保証会社の実態調査報告書(平成26年度/14年)によると、賃貸住宅のオーナーの11.9%が「単身の高齢者(60歳以上)は不可」と入居制限をしていることが分かっている。その理由は「家賃の支払いに対する不安」が57.3%ともっとも多く、「居室内での死亡事故等に対する不安」を18.8%の人が持っている。

しかし、高齢者の平均居住年数は、他の年代に比べても長く、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観(2017年度上期)」によると、6年以上が62.1%で、4~6年も合わせると9割を上回る。しかも、物件に対しては、築年数のこだわりはなく築年数の古い物件でも抵抗感がない。さらに若年層にはあまり人気のない1階が好む傾向が強いなど、賃貸住宅経営を安定させるには高齢者ほどよい入居者はいないともいえるのである。

この+αをすれば高齢者トラブルの回避ができる!

そこで必要になるのが、その入居者が安心できるか否かを見極める目。そして、トラブルに備えた対策を講じておくことも重要になってくる。

とはいっても、何をどう取り組めばよいか、分からないことも多い。その助けになるのが、全国宅地建物取引業協会連合会と全国宅地建物取引業保証協会が19年7月に公表した『高齢者の賃貸住宅への入居支援ガイドブック』だ。

『高齢者の賃貸住宅への入居支援ガイドブック』 出典/全国宅地建物取引業会連合会・全国宅地建物取引業保証協会

ガイドブックの内容は一般入居者と変わらない高齢者の入居受け入れを円滑に行う方法、入居中に起こりうる高齢者ならではの問題回避の方法と、その対策などについて、高齢者の受け入れを行っている協会会員の事例を基にまとめたものになっている。

ガイドブックそのものは宅建業者が高齢の入居者に対する受け付けや確認、入居審査の方法などがわかりやすく解説されている。また、賃貸住宅オーナーや管理会社に対しても高齢者というだけで入居の判断をしないように、どう説明したらよいかの説明方法などがまとめられている。

ガイドブックの対象は宅建業者、管理業者向けではあるが、その内容は優良な高齢入居者を見定めるポイント集にもなっており、賃貸住宅オーナーにも参考になる内容になっている。

では、どんな内容になっているのか。その内容を少し紹介しておこう。

まず、高齢者への基本対応はいまある諸制度やサービスを「+α」するだけだという。その+αの一部は次のようなものだ。

■受付・物件確認のとき
①入居希望者の引っ越しの動機を聞くことで、健康状態や家族の様子を聞き出す手がかりにする
②家賃の支払い能力を確認する

■申し込み・入居審査
①本人との面談で入居者の人柄を見極める
②連帯保証人についての確認と緊急時の連絡先の確認

■契約にあたって
①入居者が病気や認知症などになったりした際の対応方法の確認
②安否確認、個人情報扱いなど契約書作成の際の特約について説明

さらにこうした「+α」の内容を入居希望者から上手に聞き出す質問のしかたについてもアドバイスを行っている。

たとえば、日常の健康状態を聞き出すには、「(最寄り駅から)歩いて来られたのですか?」「車の運転や日常の買い物はご自身でされますか?」といった感じ。また、現在の収入額についてそれとなく聞くには「以前はどのようなお仕事をされていたのですか?」と職業を尋ねることで年金額が類推できるといった具合だ。

また、入居期間中の見守りサービスの方法や、オーナーにかかるリスクと保険などを使ったその対応などについても説明されている。

ガイドブックは全国宅地建物取引業協会連合会のHPよりダウンロードできる。一読してみてはどうだろうか。

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この記事を書いた人

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