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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#23 コロナ禍を契機に変わる家選びの基準(3/3ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2021/07/28

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物質的な豊かさから「実感できる豊かさ」へ

日本人の寿命は戦後一貫して伸び続けている。今から50年前の1970年における平均余命は男性で69.31歳、女性で74.66歳だった。現在は男性81.41歳、女性87.45歳だ。今マンションを購入している現役世代は、おそらく100歳くらいまで生きることになるだろう。

35年の住宅ローンを組んで、定年退職時まで払い続けた結果得るものは築35年の古ぼけたマンションだ。そして定年は徐々に先延ばしされているとはいえ、退職後にまだ30年程度生きなければならないのが、どうやらこれからの日本人の平均像だ。一生懸命に買ったマンションにずっと住み続ける選択肢もあるが、そのマンション、100歳まで過ごすのに本当に快適なマンションだろうか。何に価値を見出すのかといえば金銭的な価値の値上がりだけというのは悲しすぎる。こうした人生すごろくをクリアしていくのに、「都心で買ったマンションは値上がりするはずだ」という常識には、その先の非常識が顔をのぞかせているようだ。

今、世界はGDP(Gross Domestic Product)からGDW(Gross Domestic Well-being)へ時代の転換期にあると言われている。すべての価値を量的な拡大、物質的な豊かさ、客観的な指標に基づいて評価される常識から、質的向上、実感できる豊かさ、主観的な指標で価値を判断する非常識への転換である。

土地があって、土地面積に容積率を掛け合わせて巨大な建物を建築(量的な拡大)する。その結果としてのタワマンをローンで思い切り背伸びして買う。都心タワマン居住(物質的な豊かさ)という誇りを持って生きる。そこまでしたらマンションは絶対に値上り(客観的指標)してくれなければ困るのだ、という無理筋の常識はこれからの時代には通用せずに非常識に変容していくのかもしれない。

自分たちの生活を第一義(質的向上)に考えて、決して無理をせず、家計的にも優しい(実感できる豊かさ)、住んで楽しい(主観的な指標)、季節や都合によっては複数の家を住みこなす、そんなしなやかな住まい方がやってくる。これを「非常識だ!」と考えるのは自由だが、世の中は常識の先に非常識がある、このことはこれまでの歴史が物語っている。歴史は常に変わるのだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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