減価償却の計上時期

空室

まだ入居が開始していない場合の減価償却は可能か

今年も残りあとわずか。 確定申告の質問も多くなってくる時期です。

「まだ入居が開始していない場合の建物の減価償却は取れるのだろうか?」

減価償却が計上できれば、赤字になり、給与所得などと損益通算(相殺)ができて、税金の還付が受けられます。 しかし、収入がないのに、減価償却という経費だけを計上することに違和感があるのでしょう。

ついつい疑問に思ってしまいます。

1.減価償却費の計上時期

減価償却は、償却する資産を事業の用に供したときから、減価償却費として計上することができます。

国税庁のホームページでは、以下のように書かれています。

「減価償却資産を事業の用に供したか否かは、業種・業態・その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案して判断することになります。
「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいますので、例えば、機械等を購入した場合は、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。
なお、事業の用に供した日とは、資産を物理的に使用し始めた日のみをいうのではなく、例えば、賃貸マンションの場合には、建物が完成し、現実の入居がなかった場合でも、入居募集を始めていれば、事業の用に供したものと考えられます。」

2.リフォーム後に賃貸するため、まだ入居がない場合

購入後にリフォームをして、賃貸するので、来年から賃料が入ってくるという場合があります。 この場合の減価償却は、リフォーム中から入居募集をすることによって、購入した年から減価償却が計上できるのでしょうか?

『賃貸できる状況にあり』、かつ、『募集を開始したとき』が、賃貸開始と考えられます。 そのときから減価償却費を計上することになります。

つまり、入居募集すれば賃貸開始というわけではありません。 いつでも賃貸できる状況になっていることが前提となります。 募集開始したけれども、まだ建物が完成していない場合やリフォームが終わっていない場合には、それが完成したときに事業の用に供したといえるものと考えます。

今年中に募集を開始したとしても、購入した時点では、リフォームしなければ賃貸できる状況になかったのであれば、減価償却は、リフォーム後からになると考えます。

減価償却の計上時期は、判断に迷うことがあります。 以前、私が聞いた話しでは、ある税務署に聞いたら、「賃貸収入がないのであれば、減価償却はできない」などと間違った答えが返ってくることもあったようです。

賃貸において、事業開始は、「賃貸できる状況にあり、かつ、募集を開始したとき」になり、そのときから減価償却が計上できることを覚えておきましょう。

この記事のコラムニスト

渡邊浩滋
渡邊浩滋(司法書士・税理士)
渡邊浩滋総合事務所。大家さん専門税理士・司法書士。渡邊浩滋総合事務所代表。「行動する大家さんの会(AOA)」発起人。
大学在学中に司法書士試験に合格。大学卒業後総合商社に入社。法務部として契約管理、担保管理、債権回収などを担当。退職後、税理士試験に合格。実家のアパート経営(アパート5棟、全86室)が危機的状況であることが発覚し、経営を立て直すために自ら経営を引き継ぎ、危機的状況から脱出。資産税専門の税理士法人に勤務後、2011年12月独立開業。税理士の視点と大家の視点からアパート経営を支援するために活動中。従来のような確定申告書だけ作成する税理士ではなく、経営・財政・税金の観点から提案をする不動産専門の税理士・司法書士です。
[著書]「税理士が教える節税Q&A」(TAC出版刊)、「大家さんのための超簡単!青色申告」(クリエイティブ ワークステーション)他。
[担当]不動産登記
渡邊浩滋は個人間直接売買において決済完了後に登記手続きを行います。