不動産業界における担当者ボーナス(担ボー)のしくみとは?

図面

物件の販売図面をよく見ると・・・

担当者ボーナスとは、かいつまんで言うと、売主である業者が成功報酬として仲介業者に仲介手数料を支払う際に、手数料とは別に、仲介業者の「営業担当者」に渡す「謝礼金」のことです。取引業者から担当者に渡るリベート報酬というほうが理解しやすいかもしれません。もうちょっと悪趣味な言い方をすれば、「営業マン個人に渡るウラ金」みたいなものです。

みなさんが家の購入を考えて不動産会社を訪れたとき、その業者が取り寄せてくれた物件の販売図面を見せてもらったことがある人もいるでしょう。たとえば、下記の図表1に示したような図面です。

その販売図面には何が描かれていますか? 現地の区画の概略や地図、セールスポイント、建物の間取り図などが示されていて、右のほうに物件種目、価格、所在地、面積、権利関係、地目、本体設備などが記されています。

ここまでは、だれでもわかりますね。では、その販売図面の下のほうを見てください。そこには、仲介業者(不動産会社)の名称や所在地、担当者名などが並んでいます。実は、ここにカラクリがあり、暗号があるのです。この販売図面は「オビつき」といって、その裏には一般の消費者は見ることができない次のような言葉が記されています。

「手数料:6%。業法にしたがってください」

一般の消費者であるみなさんは、この言葉の上に仲介業者名や連絡先などが記された「オビ」を貼られてコピーされた販売図面を見ているというわけです。

では、この業法とはどういうものか。それは宅建業法=宅地建物取引業法のことで、そこには物件の金額に応じた手数料が定めてあります。手数料の額は普通は家を買うとなると400万円以上になりますので、「(物件価格×3%+6万円)+消費税」です。

ところが、その販売図面のなかに「手数料:6%。業法にしたがってください」と記されたものがあるのです。ちょっとおかしいと思いませんか? 物件価格の3%が仲介手数料の基準なのに、なぜその倍の6%と記されているのか。実はその3%が「担ボー」であり、その担ボーが付いている物件が「担ボー付き物件」なのです。

ちなみに、この表記が「3%+6万円」なら、みなさんが売主業者であったとしても業法にしたがっているのですから、納得して支払うでしょう。でも、6%となるとその倍の数字です。金額に置き換えてみると、5000万円の家なら156万円+消費税の仲介手数料に150万円を上乗せすることになるのです。

「担ボー」は家を買うあなたが直接支払うわけではありませんが、めぐりめぐってあなたが肩代わりして負担しているのと、なんらかわりがありません。

こんなことがだれにも知られずに普通に行われているのです。「担ボー」は売主業者が仲介業者の営業マンに支払う報酬ですが、そうした報酬が支払われているとなると、営業マンはその報酬ほしさに営業しているのか、と思うのも筋が通った考えです。「結局、不動産会社の営業マンは、より自分の儲けになりそうな家ばかり紹介するのか」と、猜疑心の塊になってしまう人もいるでしょう。

営業マンが強く勧める物件は「売れ残り」ばかり!?

では、担ボーはどのような物件に付くのでしょうか。実際のところ、多くの人にとって価値があると思える家は広告を出さずとも売れていきます。ですから、担ボー付き物件は、どうしても売れ残り物件となります。となると、担ボーで儲けたい仲介業者の営業マンが強く勧める物件は、売れ残りばかりということもできるでしょう(下記図表3参照)。

そして、その金額は、5000万円の家を一棟売れば150万円になり、4000万円の家なら120万円になるのです。率にすればたった3%ですが、金額にすれば首都圏近郊で100万円、200万円の担ボーになる! そうとわかれば、担ボー付き物件を勧めるのもムリはありません。

さらに、担ボー付き物件に狙いを定めて、年に5棟、10棟を販売できれば、その営業マンはまさに濡れ手に粟です。そうなると、一発の儲けが大きい彼らにとって大事なのは、どんなお客さんと知りあうかということだけです。運よくカネ回りのいいお客さんと知りあうことができ、担ボー付き物件を勧め、購入してもらえば万々歳なのです。

「ふざけんじゃないよ。売れ残り物件を勧めておいて、100万円以上もよけいに儲けているのか! まったくの悪徳業者め・・・」と、仲介業者の営業マンに向かって怒りだす人がいるかもしれません。

でも、ちょっと気持ちを静めてください。あなたにとっては理不尽に思える取引のやり方でも、この業界では“黙認された成功報酬”なのです。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事のコラムニスト

大友健右
大友健右(株式会社総研ホールディングス代表取締役社長)
株式会社総研ホールディングス・株式会社ウチコミ・株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長。1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。
ウチコミ!創設者
大友健右は収益物件の個人間直接売買ができるプラットフォーム「ウチコミ!」の創設者です。