不動産では「損をしたくない人」ほど損をする理由とは?

男

リスクに敏感な「消費者心理」を巧みに操る不動産業者

今、世の中には「メリット」があふれています。便利であったり生活が豊かになったり体によかったりと、街中、新商品のメリットを謳う広告だらけで、逆にまったく目に入ってこなかったりもします。私も一人の消費者ですが、メリットの大洪水に消費者は慣れすぎていて、見向きもしなくなっています。

ただ、その一方で、「リスク」に対してはやたらと敏感になっているとも思います。「得する話」はあふれていて見向きもしませんが「損をしたくない」という思いは強いように感じるのです。

とくに、多くの人にとって人生で一番高い買い物でもある住宅購入の場面では、そういった消費者心理は顕著に現れます。よく雑誌の「不動産特集」などでFPや家計ジャーナリストたちが「25年先、35年先を踏まえたローン計算のシミュレーション」などを行っていますが、何を買うかによってまったく異なる先々の資産価値に対して一定の法則を当てはめた回答は、いたずらに消費者心理をミスリードするだけで、一人ひとりの読者にとってはまったく無意味と言ってよいでしょう。

では、なぜそんな意味のない記事が毎回登場するかと言えば、消費者に「知らないで損はしたくない」という心理があるからでしょう。

損をしたくないというリスクに敏感な消費者心理に対しても、不動産業者は巧みに操ろうとします。その代表例が業界用語で「あおり」と呼ばれるものです。

これを逃したら後悔する?「機会損失の心理」に要注意

これから、家を買おうとする人は気をつけてください。

「この物件は評判がいいから、来週になるとほかのお客さんに決まってしまうかもしれません。なくなっちゃうかもしれませんよ!」
「このマンションで残っているのはこの部屋だけです。お買い得ですよ」

そのような営業トークを織り交ぜながら、営業マンは担ボー付き物件や売れ残り物件を勧めるのです。これを逃したら後悔するのではないか、という機会損失の心理をあおります。その結果、「損をしたくない」と思っている人ほど結局は損をしてしまう、という構図ができ上がるのです。

消費者の心理は「あおり」に弱いのですが、それも、もともとは「家そのものの金額が大きい」ことが関わっています。大きい金額だからこそ、さまざまなリスクを排除していく「保険」を利かせた考え方になっていくのです。

すると、購入する人自身がすべてのリスクを負えば値段が下がる可能性も出てきますが、かえって保険を付加して自分からは値段を下げられないような気持ちになります。「損をしたくない」という恐怖心を担保する気持ちが値段を下げたいという思いにブレーキをかけ、結局、高い買い物をしているということにもなるのです。

このような要因・構図が「損をしたくない」という消費者心理をより損に向かわせているとも言えます。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事のコラムニスト

大友健右
大友健右(株式会社総研ホールディングス代表取締役社長)
株式会社総研ホールディングス・株式会社アルティメット総研・株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長。1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。
ウチコミ!創設者
大友健右は収益物件の個人間直接売買ができるプラットフォーム「ウチコミ!」の創設者です。