不動産の営業マンが大喜びする「両手片足取引」とは?

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両手片足取引では裏金的な「担ボー」が・・・

前回に引き続き、不動産業界特有の「取引形態」について説明します。

●両手片足取引
まずは、両手片足といった“足付き”の取引について見ていきましょう。
両手の「手」というのは、人の手のことではなく、仲介手数料を略した「手」であることは理解できましたね。では、「足」は何でしょうか。ちょっとこじつけですが、“付け足し”の足という理解をしてもらってもかまわないでしょう。
では、何を付け足すのか。それは前回説明した「担ボー」です。一般の人は見ることができない販売図面の右下隅に「6%。ただし業法にしたがってください」と記載があるケースでの、業法を超えた3%のことです。
それを売り仲介業者の営業マンが売主業者からもらえるのが、両手片足取引。数はぐっと減りますが、いわゆる業者卸として買い仲介業者から売り仲介業者の営業マンが担ボーをもらえると、両手両足取引ということになります。
こうなると、営業マンにとっては大きな取引です。「大きな契約ができたよ。しかも、両手片足だぜ!」と、営業マンがニコニコと笑っているときが、たまにあります。
そのとき7000万円の家の場合には、1取引で7000万円×3%+6万円=216万円×2=432万円+消費税が仲介手数料となり、その営業マンは担ボーとして別途210万円を受けとっている計算になります。1件成約することで、裏金として袖の下に210万円となれば、これはやめられませんね。
よくビジネス雑誌で、「企業では、優秀なやつから辞めていく」といった話が取り上げられています。とくにこの傾向は、大手よりも中小企業に多いようです。ところが、不動産業の営業マンについては、この傾向はちょっと当てはまりません。中小の不動産会社でも固定給であるかフルコミッションであるかにかかわらず、しっかり実績を残していたら、こんな“おいしい”仕事はほかにはないからです。

M&A業界にも両手取引は存在するが、事情は異なる!?

このようなおいしい取引が行われている業界は、不動産業界のほかに存在するのでしょうか? パッと思いつく範囲では見あたりません。

そこで、探してみました。すると、考えられる業界がありました。M&A業界です。大型のM&Aの案件では話が複雑になってしまうので、小さな案件でお話しします。

たとえば、駅前に小さな飲食店があり、それを売りたい店主(売主)と買いたい同業種の人(買主)がいたとします。間に入るのはM&Aの代理人、つまりブローカーです。ブローカーは、居抜きでよいのかよくないのか、どういうリフォームを施したらよいのか、どちらがどのくらい負担するのか、売却(購入)の値段と時期などについて売主と買主の意向を調整し、細かく条件を詰めてM&Aが可能かどうかを見極めます。

ブローカーはどちらの味方をするというわけではなく、双方の間に立って、中立の立場で話し合いを調整します。そして、商談(M&A)成立! となれば、双方から成功報酬をいただくという関係になるでしょう。

その段階で、いわば両手取引が成立しているわけです。もし、ブローカーとしての成功報酬とは別に、何かしらの報酬をもらっていれば、両手片足とか両手両足になるかもしれませんが、そのような話は寡聞にして聞いたことがありません。

そして、このことの本質的な問題はどこにあるのか。本来、仲介の業務は仲介を依頼した売主や買主の代理人の立場であるべきなのに、不動産の場合はそのことを半ば無視して業界の代理人になってしまっていることにあるのです。本来は売主や買主の代理人として動き、成約となれば、仲介を依頼した相手から仲介手数料を受けとるべきなのに、業界の代理人ともなっているため、両手取引となっている点が問題なのです。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事のコラムニスト

大友健右
大友健右(株式会社総研ホールディングス代表取締役社長)
株式会社総研ホールディングス・株式会社アルティメット総研・株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長。1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。
ウチコミ!創設者
大友健右は収益物件の個人間直接売買ができるプラットフォーム「ウチコミ!」の創設者です。