片手取引と両手取引――「手」という言葉に隠された意味とは?

両手

不動産業界における「手」とは仲介手数料のこと

住宅流通の現場では、よく、それぞれの取引が「片手取引」なのか、「両手取引」なのか、「両手片足取引」なのか、ということが話題に上ります。これは、不動産業特有の取引形態といってよいのかもしれません。

それぞれが、どのような取引のことなのか、わかりますか?おそらく読者のみなさんは、なんとなくイメージした姿があると思います。「片手」といえば片手を伸ばして取引先と握手している姿、「両手」といえば両手を伸ばして取引先と手をつないでいる姿、などが連想できるでしょう。

そのイメージで、基本のところは決して間違いではありません。でも、少しあいまいな感じもあります。不動産業でいうところの「片手」「両手」の「手」は「人の手」ではなく、「仲介手数料」の略の意味があるからです。そうなると、「片手取引」は理解できるかもしれませんが、「両手片足」あたりの用語が、急に隠語めいてきます。

グレーな取引が起こり得る「両手取引」

では、営業マンの儲けの少ない順に、きちんと説明しておきましょう。

●片手取引
「片手」とは片方の手ということとは少し違い、「片方からの仲介手数料」と考えてください。
そう考えると、「片手取引」というのはとってもシンプルな取引形態です。買主から家の購入の相談があり、仲介業者が販売図面を取り寄せて商談し、それが成約した場合に仲介業者は買主から仲介手数料をもらいます。それで片手取引は成立します。
また、売主の仲介をしてその家が売れた場合にも売主から仲介手数料をもらうので、片手取引は成立します。
●両手取引
これは、「片手取引」から類推してください。仲介業者が売主業者や売主と買主の両方から仲介手数料をもらう取引形態です。
そんな都合のいい取引が頻繁にあるのか、と思う人もいるかもしれませんが、けっこうあります。仲介業者にとって片手取引はきわめて一般的な取引なので、できればその取引を両手にできないか、と考えるからです。たとえば、売主側に立った仲介業者が買主を求めるようなケースです。これも、売主側の仲介業者が買主を見つけてくれば、売主業者と買主から仲介手数料をもらうことになり、両手取引が成立します。
なお、この両手取引についてはその違法性の指摘から禁止すべきではないかという声が民主党から出ていたことも付記しておきましょう。

ところで、ここで、ちょっとグレーな取引があります。売る物件が先にあり、その物件が不動産流通機構と販売図面作成会社に登録されたあとに買主を探すという流れは一般的なのですが、実は買主が買いたいとする物件が先にあり、売れることが確実になってから、個人から業者が家や土地を買って販売するケースです。ちなみに、このような行為は不動産の業法違反になります。

しかし、このご法度の取引にも抜け道があります。売却(販売)日と購入日を操作して整合性をとることです。通常は売却日が先の日付で購入日があとの日付なのですが、もしこの日付が逆になっている場合は、通常の日付の順序に書き換えることになります。

これを「客付け買い取り」と呼びますが、本来は違法な取引でも抜け道をつくってまかり通っているところが、不動産業界がブラックボックスであるゆえんと言えるでしょう。

本連載は、2012年9月10日刊行の書籍『不動産屋は笑顔のウラで何を考えているのか?』からの抜粋です。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事のコラムニスト

大友健右
大友健右(株式会社総研ホールディングス代表取締役社長)
株式会社総研ホールディングス・株式会社アルティメット総研・株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長。1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。
ウチコミ!創設者
大友健右は収益物件の個人間直接売買ができるプラットフォーム「ウチコミ!」の創設者です。