鑑定評価書を活用する場面

鑑定

鑑定評価書(簡略に「鑑定書」と言われる場合も多いです)は、不動産鑑定士が、評価対象不動産について、適正価格(又は賃料)とその価格決定に至った理由をまとめた文書です。鑑定評価書の作成は、国土交通省の定める「不動産鑑定評価基準」に従って行われ、裁判などでの立証資料としても使用されるものです。

売買の参考

法人(地方公共団体等も含む)の場合、所有資産の売却等に当たっては、適正価格での売却・購入を行わなければ経営者責任等を問われる可能性が存します。また、担当者のレベルでは対内的な説明も必要となります。この中で売買に当たって不動産鑑定書を取得しておくと、対内的にも対外的にも適正価格での売買を説明することが容易になります。

財務諸表関連評価

「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」が適用される中で、開示対象不動産の時価把握については、「不動産鑑定評価基準」による方法(=鑑定評価書の取得)が一般的な対応となります。また、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく減損処理の場面においても、正味売却価格の算定・将来売却価格の算定等で不動産鑑定評価書が活用されています。

法人-代表者間・関連会社間の不動産売買、現物出資等

法人と代表者等の役員間や関連会社間の不動産売買、現物出資においては、①一般的な売買市場を介するものではないこと、②恣意的な価格設定が行われる可能性を有することから、税務上、売却金額等の妥当性が問題になる場合が生じます。 また、同種の関係当事者間の不動産賃貸に関しても同様です。この際、鑑定評価書を取得しておけば、客観的な価格水準が把握できますし、税務署に対する説明資料にもなります。

融資交渉の際の資料として

融資交渉等を行う前提として、市場における適正価格があらかじめ分かっていれば、融資可能額の目安を把握することが可能です。また、融資交渉の際にも、不動産に関する諸資料・情報が、鑑定評価書の中にコンパクトにまとめられますので、特に多数の物件を一括して担保に供する場合等、交渉がスムースになります。

賃料交渉の際の資料として

テナントとしての立場からの賃料減額交渉・オーナーとしての立場からの賃料増額交渉の際には、やはり「現時点における適正賃料」が最大のポイントになります。もちろん、不動産仲介業者等へのヒアリングでおおよその相場観を掴むことは可能ですが、鑑定評価書を取得していただくと、より説得力をもった主張が可能になります。また、継続賃料にかかる鑑定書の中では、「現時点における適正賃料」だけでなく、過去からの改定の経緯等も踏まえた「適正な改定賃料」を評価していきますので、賃料交渉はよりスムースなものになります。

相続時における時価評価

「相続税法」では、相続財産の評価は「時価による」ということになっており、「相続税財産評価に関する基本通達」の中で(簡易な)時価の算出方法が定められています。但し、不動産については個別性が大きいため、「通達」ベースでの算定額と実勢価格に乖離が生じる場合があります(特に「不整形地」等個性の強い物件や、テナントの状況次第で価格が大きく変化する収益不動産について、この乖離が大きくなる傾向があります)。 この中で、鑑定評価書を取得して適正価格を把握し、これをベースに申告を行うことで相続税が安くなる場合があり得ます。また、遺産分割協議の際にも、鑑定評価書で適正価格を把握しておけば、後の争いを防止できるという効果があります。

親族間の不動産売買等

相続対策等で、親族間で不動産売買が行われる場合、前記「法人-代表者間売買」で述べたことと同様に、①一般的な売買市場を介するものではないこと、②恣意的な価格設定が行われる可能性を有することから、税法上、売却金額の妥当性が問題になる場合が生じます。 この際、鑑定評価書を取得しておけば、客観的な価格水準が把握できますし、税務署に対する説明資料にもなります。

この記事のコラムニスト

熊ヶ谷一幸
熊ヶ谷一幸(不動産鑑定士)
株式会社東洋不動産研究所 代表取締役。1966年(昭和41年)生まれ。平成元年 慶応義塾大学法学部政治学科卒業。
学生時代はバトミントンなどのスポーツとアルバイトに没頭。不動産を生かすのは人間次第であり、個人生活・企業活動の成長は不動産のあり方・価値を極大化し、さらに個人生活・企業活動を成長させる、という不動産とのベストな付き合い方を提唱。どのタイミングで取得して処分するのかを時間軸でとらえ、ソリューション型の不動産調査・鑑定を日々実践している。
趣味は、エアロビクス。大手スポーツクラブの特別会員となっており、時間があればあちらこちらのスタジオに出没しては、主に中上級者向けエアロビクスを楽しんでいる。来年は、競技エアロビクスにチャレンジしようと考えている。
[担当]物件調査
熊ヶ谷一幸は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。