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2022年春 小池劇場「築地再開発編」幕開け

大手デベも虎視眈々 どうなる23ヘクタールの大型再開発の行方(2/2ページ)

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市場が移転したあとの築地市場跡地の開発にあたっては、懸念される点もある。

そもそも築地に市場ができたのは、1923(大正12)年。関東大震災によって江戸時代からあった日本橋の魚河岸が全壊し、臨時的に築地にあった旧外国人居留地の海軍省所有地に開設したのがその歴史のはじまり。

江戸時代の築地には老中・松平定信が屋敷に築いた浴恩園(よくおんえん)という名庭園があった。そのため再開発にあたっては大規模な埋蔵文化財調査が必要になる。さらに、戦前は旧海軍の造船修理所、戦後はGHQクリーニング工場があったことも踏まえて、土壌汚染への対応が迫られる。

また、今後、計画される市場跡地内の地下鉄新駅の設置をどう再開発計画に盛り込むかなど、事業の長期化をもたらす3つの要因がある。このため、工事期間は20年~25年程度という長期間が想定されている。

SDGs、サスティナブル それらしい単語が並ぶが

東京都からは築地再開発は「東京ベイeSGまちづくり戦略」の推進にも役立つよう、まちづくりを進めていくとし、温室効果ガスを出さない街づくりの「ゼロエミッション対策」、国産木材の活用も強化していくという。さらにデジタルと先端技術の活用(人工知能技術やDX)と、コロナ禍を踏まえた施設整備運営における将来の新たな感染症の予防拡大防止についても具体策としてあげている。

実際、21年12月には、都議会都市整備委員会において再開発にあたっての「基本的な考え方」として、東京都都市整備局から築地地区の都有地(市場跡地)の活用案募集実施方針の方向性が説明されている。

それによると、南側に隅田川河口、西側には浜離宮恩賜庭園が広がる立地から、「水と緑に囲まれた都心の大規模な土地、歴史・文化資源などのポテンシャルを生かしながら、都心と臨海部を効果的に結びつけ、民間の力を最大限に活用して、東京や日本の持続的な成長につながるまちづくり」を民間提案者に求めるという。


旧築地市場跡地の再開発イメージ

これは東京湾のベイエリアの一角として「気候危機に対応し、海と緑の環境に調和したサスティナブルな次世代都市として、世界から人と投資を呼び込み、“成長と成熟が両立した持続可能な都市・東京”を先導するエリアとして発展していく」というのだ。

「食のテーマパーク」を打ち出した小池知事だったが、その後、都が公表した再開発方針からはこの「食のテーマパークを有する市場」の文言がなくなり、都議会においては「基本方針は何も変わっていない」と答弁するのみ。

その後は、東京五輪の1年延期、20年7月の都知事選挙再選、新型コロナのデルタ株の蔓延、東京五輪開催、晴海フラッグ訴訟、さらに自らの体調不良などによって築地跡地については大きくクローズアップされることはなかった。

築地市場の豊洲移転のストップをかけたところからはじまった一連の“小池劇場 築地再開発編”。

結局のところ、東京都が大手デベロッパーに低価格で土地を貸与し、丸投げ、タワマンと高級ホテル、オフィスと国際会議場という、新鮮味のない開発計画に落ち着くという、新鮮味のない開発計画に落ち着くという、おきまりのパターンになるのか? 22年の春には大型再開発計画の行方が明らかになる。

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この記事を書いた人

都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まり。主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい。

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