敷金トラブルをなんとか解決したいときの対処方法
川合晋太郎
2016/01/04
話し合いではなかなか解決しないことも
敷金を返金してもらえない場合はきちんと納得いくまで話し合いをすることが大切です。管理会社が話し合いに応じない場合は、直接大家さんに連絡をとって確認してみましょう。それでも解決しない時は、専門家に相談する、内容証明郵便を送る、少額訴訟などいくつか対応策があります。
(1)正しい知識を得る、専門家に相談する
まず、はっきりとした根拠を示して自分の意見を主張しましょう。その際に国土交通省が発表しているガイドライン、東京都都市整備局の賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(改訂版)が有効になります。ガイドラインに沿って主張すれば説得力も増します。敷金トラブルは裁判になっているケースも多いので、過去の裁判の判例なども有効です。
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
東京都都市整備局 賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(改訂版)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-3-jyuutaku.htm
また、各都道府県には不動産に関する相談窓口が設置されていますし、ほかにも国民生活センターなど無料の相談窓口がありますので専門家に相談してみましょう。
国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html
(2)内容証明郵便を送る
内容証明郵便とは、郵便局が差出人や内容を証明してくれる郵便のことです。電話などでなかなか話し合いに応じてくれない場合は、内容証明郵便を送ることで対応が変わることもあるので有効です。
ガイドラインなどを参考に根拠のある主張を提示しておきましょう。内容証明は裁判の証拠にもなるので、具体的な内容で『敷金返還請求通知書』を作成します。
内容証明の規定は以下のようになっています。市販の内容証明郵便用紙も販売されています。
内容証明郵便とは
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/
(規定)
サイズに規定はありませんが、A4、B4、B5などが一般的
縦書きの場合 ・1行20字以内、1枚26行以内
横書きの場合 ・1行20字以内、1枚26行以内 又は
・1行13字以内、1枚40行以内 又は
・1行26字以内、1枚20行以内
(内容)
・賃貸契約と敷金を預けている事実
・賃貸契約終了と敷金返還額の見積もり
・見積もりに対して、自分には負担義務がないとする根拠
・希望返還額
(発送)
内容証明郵便:同じ内容のものを3通作成
持参するもの:封筒と印鑑
準備ができたら郵便局で内容証明郵便を、配達証明付きで、発送します。
配達証明とは、相手方に到達したことを郵便局がハガキで、連絡してくれる制度です。内容証明郵便とは別のものですので、発送の際に別に注文することになります。
費用:下記のとおりです。
郵便の基本料金+一般書留+内容証明郵便の加算料金+配達証明の費用(310円)
の加算料金 (430円
(2枚目以降は260円増))
③少額訴訟
管理会社が話し合いに応じない場合は少額訴訟という手段もあります。少額訴訟とは、60万円以下の金銭トラブルでの訴訟です。訴訟に関する金額が10万円以下なら1000円、それ以上は10万円ごとに1000円の手数料が加算されるのと4000円程度(裁判所により異なります)の郵便切手と訴訟に関する費用も少額ですみます。
[手続きの流れ]
訴状を作成し裁判所に提出
↓
受け取った相手が答弁書を作成し裁判所に提出
↓
審理が行なわれ、その場で和解になることもあります。
↓
和解ができなければ、判決が出されます。
敷金返還請求訴状は簡易裁判所の窓口でもらうか、裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。手続きもそこまで複雑ではないので、簡易裁判所で書類の書き方などを説明してもらえば自分で対応できます。原則1回の審理で結果が出るので、日数もかかりません。
裁判所 これから少額訴訟を利用しようとする方へ
http://www.courts.go.jp/saiban/wadai/1902/index.html
諦めずにできることをしてみる
敷金トラブルが増えてきて、敷金返還に関する法律改正も進んでいます。原状回復義務など不動産に関することは複雑でわかりにくいことも多いので、まずは市町村の窓口などで相談してみましょう。
なかなか話し合いに応じてくれない大家さんや不動産業者も多いのが実情です。話し合いでなかなか解決しない場合は、内容証明郵便や少額訴訟、民事訴訟など諦めずに解決にむけてできる限りのことをしてみましょう。
この記事を書いた人
弁護士
1961年、静岡県浜松市生まれ 中央大学法学部卒業。 千代田区麹町において、弁護士3人が所属する川合晋太郎法律事務所を経営している。不動産の仲介管理会社の顧問を10数年勤め、企業、個人の賃貸借、相続等の不動産に関わる問題を中心に弁護士としての業務を行なっている。 東京弁護士会に所属、社会保険労務士 紛争解決手続代理業務 試験委員、年金記録確認東京地方第三者委員会委員等の公務にも就任した。 著作に共著として、「賃貸住宅の法律Q&A」(住宅新報社)等がある。