「人気の街ランキング」「住みたい街ランキング」を信じてはいけない!
大友健右
2016/08/01
利便性、安全性など、指標はいくつもあるけれど……
以前、テレビのバラエティ番組に出演して、「住みやすい街ランキング」についてコメントしたことがありました。上位にランキングした街について、なぜ人気があるのかを不動産の専門家の立場から理由づけしてほしいと頼まれて、なんとか汗をかきながら務めを果たしたのです。
そのせいでしょうか、「大友さん、ああいうランキングはどの程度、信用すればいいんですか?」と聞かれることが多くなりました。実はこれ、回答するのがむずかしい質問なのです。
「なぜ人気があるのか?」という質問には、簡単に答えられます。「首都圏に通う利便性があるから」とか、「商業施設が充実していて活気がある」とか、「病院や介護施設などがたくさんあって安心」といった理由をあげられるからです。こうした理由づけは後づけのもので、いくらでも考えつきます。
ただ、「ランキングの上位に選ばれた街は、間違いなくいい街ですからおすすめですよ」とは、なかなか言いにくい。その言葉に責任を持てるかと問われれば、間違いなく「NO」でしょう。
5年後のランキングはどうなっているかわからない
具体例を見てみましょう。不動産ポータルサイトのSUUMOが行なっている「住みたい街ランキング2016」の関東の総合ランキングの上位5つは、次のようになります。
1位 恵比寿
2位 吉祥寺
3位 横浜
4位 武蔵小杉(同率4位)
4位 自由が丘(同率4位)。
https://suumo.jp/edit/sumi_machi/2016/kanto/
同じく、ポータルサイトHOME'Sの「首都圏・買って住みたい街、借りて住みたい街ランキング2016」の上位5つの結果は、こうです。
1位 吉祥寺
2位 横浜
3位 恵比寿
4位 品川
5位 武蔵小杉
http://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00132/
この結果を単純に解釈すれば、「どちらにもランクインしている吉祥寺、恵比寿、横浜はすごい」ということになりますが、注意しなければならないのは、このランキングは不動のものではないということです。つまり、5年後、10年後になったら、まったく別のランキングになっているという可能性があるということ。
結局のところ、不動産の善し悪しは「点」でとらえるのではなく、「線」で考えなければならないというところに、こうしたランキングの危うさがあるようです。
「いい女ランキング」とか、「抱かれたい男ランキング」と同様、「住みたい街ランキング」の人気も時間の経過によって変動します。有名人の人気投票なら、「上位の人を番組に起用すれば高視聴率がとれる」といった判断の基準として使えるかもしれませんが、不動産の場合、その時点での人気というのはアテにならないのです。
よって、「不動産の人気ランキングは、話題としてはおもしろいかもしれないけれど、住む街を決める基準にはならない」というのが私の結論になります。
唯一信用できるのは、自分自身の判断基準
先日、私の知り合いのKさんが、神宮前1丁目のマンションを購入しました。理由を聞いてみると、「何年もこのマンションに賃貸で住んできたけど、出ていく人がほとんどいなかった」と言っていました。Kさんは不動産の専門家だけに、「点」ではなく「線」で不動産の価値を見るクセがついているのでしょう。
このように「誰もが住み続けたいと思う物件」は確かに存在します。しかし、そうした物件はなかなか売りに出されることはなく、常に目を光らせて探さないと見つからない「掘り出し物」の物件ということになります。しかも、そうした物件が「住みたい街ランキング」に選ばれる街にあるとは限らないのです。
結局、唯一信頼できるのは、人が選んだランキングではなく、個々の人の心のなかにある判断基準しかないのです。
今回の結論
・住みたい街ランキングは、話題としてはおもしろいかもしれないけれど、住む街を決める基準にはならない。
・信用できるのは、自分の判断基準のみ
この記事を書いた人
株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。