崩れた部屋に閉じ込められても、そばに家族はいない…賃貸一人暮らしの「防災」心得
賃貸幸せラボラトリー
2021/12/21
イメージ/©︎inomasa・123RF
家族でいれば脱せる危機も、1人だと……
持ち家で家族が一緒に暮らしているにしても、賃貸マンションやアパートの一室で一人暮らしをしているにしても、災害時の備えに関してその多くは共通しているといっていい。
水や食料の備蓄、懐中電灯やラジオ、非常用トイレ等防災グッズの準備など、イザというときの対策にあっては、多人数で暮らしていようと、単身生活であろうと、いずれも同様、普段から怠らずにいたいものだ。
そのうえで、この記事では特にアパートやマンションで一人暮らしをしている人に向けて、地震や水害など、被災したときのために心掛けておくべきことを記していきたい。
家族でいれば脱しやすい危機も1人だとそうはいかず、命にかかわる危険が及ぶケースもなかには存在するからだ。
狭い部屋では家具が倒れた際の危険が倍増
いま、あなたがアパートやマンションで一人暮らしをしているならば、まずは部屋の中をぐるりと見回してみてほしい。
ワンルームや1Kなど、単身用の狭い部屋での生活においては、地震で家具が倒れたり、棚の中のモノが外に飛び出したりした際、その直下となる場所で毎日寝ていたり、くつろいでいたりする人がかなり多い。できれば、ぜひ避けておきたいシチュエーションだが、なかなかそうはいかず、悩んでいる人も多いことだろう。
広い一戸建ての中にあるベッドしか置かれていないような寝室と比べれば、一人暮らしの小さな部屋では、家具による危険が満載のケースが非常に多い。
例えば、倒れた家具の下敷きになり、その重さやケガで動けない状態のまま周囲で火災が起こるなど、想像もしたくないことだが、これは日本中どこであろうと、明日にでも起こっておかしくないことだ。
対策として基本となるのは、当然ながら家具が倒れたり、中の収納物が飛び出したりといったことがなるべく起こらないようにしておくことだ。あるいは、棚のガラス戸や内部の割れ物が、砕けて散らばらないようにしておくことだ。
転倒防止器具を取り付ける、扉には耐震ラッチ(地震の際扉が開かないようにする装置)を取り付ける、ガラス戸には飛散防止フィルムを貼るなどの対策を考えたい。
普段から転倒防止の準備を/©︎thsk1344・123RF
なお、「家具が倒れる位置には普段寝ていない、居ない」という場合でも、倒れた家具や散乱した割れ物は、ときに脱出の大きなさまたげになる。
そのため、いま述べた対策以前にも、そもそも背の高い家具は置かない、棚などは重心がなるべく下がるよう、重いものは低い位置に収納するなど、細かな工夫も大事になってくる。
一人暮らしは「閉じ込め」に弱い
地震であちこち歪んだ家の中、あるいは家屋倒壊・半壊といった状況のなか、家族で暮らしていれば、「おじいちゃんが部屋から出られなくなっている」「子どもが2階から降りてこない」など、閉じ込めが起きた際、周りが異変に気付きやすい。逆に、気付いてももらえやすい。
ところが、一人暮らしの場合、ここが大きなウィークポイントとなる。崩れた部屋の中から出られずにいるあなたに、周りが誰も気付いてくれないといったことが起こりうる。
なので、そうした危機に陥った際は、どうにかして部屋の外に自分の存在を知らせる必要がある。
そのため、防災グッズのひとつに数えられるホイッスル(笛)は、一人暮らしではますます必需品だ。懐中電灯や、散乱した物から足を守るスリッパとともに、枕元などに常備しておけば、いざというとき命の綱となってくれるだろう。
何かあったとき自分の存在を知らせるためのホイッスル/©︎doomu・123RF
なお、災害時以外でも、トイレやバスルーム、脱衣室といった場所は、一人暮らしでの閉じ込めリスクをはらむ鬼門だ。カギの不具合ひとつで中から出られなくなる危険性を考え、多少抵抗はあっても、普段からカギをかけたり、扉を閉め切ったりせずに使用することをぜひおすすめしたい。
さらに、これらドアの外側の状況にも注意が必要だ。うっかり倒れやすいものなどを置くと、とんだ事故につながるおそれがある。トイレを使用中、ドアとその先の壁との間にスーツケースが倒れ、ドアがぶつかって開かなくなり、真夏の猛暑のさなか、アパートの入居者が長時間中に閉じ込められた例もある。
高層階での備蓄は「エレベーター停止」を想定のうえで
低層階に住む人はまだよいとして、マンションの5階や6階、それ以上……と、すなわち高層階に暮らす一人暮らしの人の場合、災害用の備蓄に関しては、エレベーターが動かなくなったケースを想定しておくことが欠かせない。
本命となるのは、ズバリ「水」だ。被災によって水道が停まり、給水車が出動、水を貰いにいかなければならなくなったとして、これを階段を使って運び上げるのは、高層階では大変な重労働となる。それによる余計なケガなども決してしたくない。
なので、せめて平たい場所だけでも楽ができるよう、キャスター付きのタンクを準備するなど、できる限りの対策がおすすめだ。
そのほか、缶詰のような重い食糧を運ぶのでも、一人暮らしの場合、頼れるのは基本自分しかいない。よって、普段からの食料等の備蓄は、水をはじめ重いものを優先して行っておくのがよりよい選択となる。
家族には避難所がどこかも知らせておこう
特に若い学生などが一人暮らしをしていて、その地域が大きな災害に見舞われ、電話が通じなくなるなどした場合、実家の家族は大変な心配をすることになる。
被災した本人はケガなく元気なのに、そのことを知らない親や祖父母が心労のあまり体調を崩したり、いてもたってもいられず未だ危険な状態の被災地に足を踏み入れたりしないよう、事前にケアしておくことが肝心だ。
そのため、災害用伝言ダイヤルや、インターネットの災害用伝言版、さらにはSNSでの連絡方法など、いざというときの連絡手段について、普段から家族で打ち合わせをしておくのが望ましい。
さらにその際は、被災時に駆け込むことになる避難所の場所や名前、想定される避難経路など、互いに把握しておけば、双方より安心を得られるだろう。
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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室