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住宅ローンで家計を破綻させないために

住宅ローンは何歳までなら借りられる? 何歳までに完済すべき?

牧野寿和牧野寿和

2017/08/17

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© tatsushi – Fotolia

住宅ローンは何歳までに借りるべき?

「いま住んでいる家は広すぎて管理も大変なので、もっと交通の便がいい、街中のこぢんまりとしたマンションに住み替えたい。その際、貯蓄は残らなくても現金で一括購入したほうがいいのか、住宅ローン融資を受けて貯蓄は残したほうがいいのか迷っている。また、そもそも65歳でも住宅ローンを組むことはできるのかも知りたい」

以前、このような相談を受けたことがあります。相談者は、65歳で自営業者のAさんです。

住宅ローンの年齢制限については後述しますが、65歳であっても住宅ローンを借りることは可能です。

Aさんの相談を受けて、まず、現金で一括購入した場合と住宅ローンを組んだ場合と、それぞれの場合について家計のシミュレーションをしてみました。住宅ローンについては、年齢を考慮して、何パターンかの借入額について検証しています。

その結果、Aさんは、マンション購入価格の3分の1を住宅ローンで借りて、約11年間で完済する計画で、融資を受けることを決めました。返済期間が10年以上であれば住宅ローン控除の恩恵を受けることもできますし、現金も手元に残るので、老後の生活を「資金面」「精神面」の両面にゆとりをもって送れるだろうと判断したのです。

Aさんのように、60代であっても住宅ローンを有効に活用することは可能です。ただし、すべての人が高齢になっても住宅ローンを借りられるとは限りません。そこで、住宅ローンは何歳までに借りるのがよいのか、検証してみたいと思います。

住宅ローンには年齢制限がある

まず、住宅ローンを借りるには年齢制限があります。融資を受けられる年齢は、金融機関ごとに決められており、申し込み時の年齢が20歳以上で65〜69歳くらいまで、また完済時の年齢が80歳の誕生日前までとしているところが多いようです。

なぜこのように年齢が決められているのでしょうか。

それは、団体信用生命保険(団信)に加入できる年齢に制限があるためです。団信とは、住宅ローンの債務者が死亡したときや高度障害の状態になったときに、住宅ローンの残債と同額の保険金が金融機関に支払われ、住宅ローンの残債がゼロになる保険です。

【フラット35】は任意加入ですが、民間の金融機関で住宅ローンを申し込むときには、契約者(債務者)は、団信への加入が必須となっています。

この団信に加入申し込み年齢が約款に定められていて、「20歳以上65歳まで」とか「20歳以上70歳未満まで」とされています。また、保険期間についても、加入者の「80歳の誕生日まで」とか「満80歳」と規定されています。

そのため、団信に加入できない年齢であれば、住宅ローンの融資を受けることもできないことになってしまうのです。

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「借りられる年齢」と「借りていい年齢」は違う

もちろん、金融機関の審査を通過しなければいけないのは大前提ですが、こうした年齢制限を超えていなければ、何歳であっても「借りられる年齢」ということになります。つまり、「住宅ローンを借りられる年齢」=「金融機関が融資の申し込みを受け付けている年齢」ということになります。

一方、住宅ローンの考え方として、「借りていい年齢」というものがあります。「借りていい年齢」=「融資を受けた金額を無理なく返済できる年齢」であって、「借りられる年齢」とはまったく違います。

繰り返しになりますが、「借りていい年齢」とは、決められた返済期限までに確実に返済が可能な年齢のことです。いくら金融機関が融資をしてもいいと言ってくれても、実際に滞りなく返済することができなければ、借りていいということにはなりません。

それを判断するには、貯蓄額や住宅ローン控除の額などを加味して、将来にわたる家計の収支をシミュレーションした上で、滞りなく返済を続けていくことができるかどうかを検討しなければなりません。

収入や貯蓄額、購入する物件の価格などによっては、「借りていい年齢」が30代の人もいれば、40代の人もいますし、冒頭でお話ししたAさんのように60代の人もいます。

逆に言えば、住宅ローンを借りることによって、家計に過度な負担がかかったり、それこそ破綻してしまったりといった影響を及ぼすことがなければ、住宅ローンは何歳で借りてもいいのです。

もちろん、金融機関が決めた年齢制限はありますが、「何歳までに借りなければいけない」とか、「何歳までなら借りていい」となどと決めつける必要はないと言えるでしょう。

定年退職前に完済したいなら何歳までに借りるべき?


© polkadot – Fotolia

滞りなく返済できるのであれば何歳で借りてもいいとはいっても、サラリーマンには定年退職という大きな節目があります。

そのため、サラリーンマンの場合は、リタイア後に何らかの一定収入が見込めない限り、現役のうちに住宅ローンを完済することを考えるべきと言えるでしょう。

それでは、定年退職前に住宅ローンを完済するためには、何歳くらいで借りるべきなのでしょうか。

通常、住宅ローンの返済期間は、最大35年間となっています。シンプルに考えるのであれば、たとえば65歳まで現役としての収入の得ることができるなら、30歳(65歳-35年=30歳)で融資を受けて、こつこつ計画的に返済するのが基本と言えるでしょう。

しかし、もっと年齢が高くなってからでも、収入に見合った物件を選んで、滞りなく完済できる計画を立てることができれば、現役中に返済を終わらせることができます。

むしろ、年齢とともに収入も上がれば、返済期間を短くしてローンを組める可能性は高くなるとも言えるでしょう。

同じ金額を借りた場合、返済期間が短くなれば、毎月の返済額は大きくなりますが、利息額の負担は少なくなります。これは年齢が高くなってから住宅ローンを借りる場合のメリットです。

40代、50代で住宅ローンを借りても大丈夫?

とは言っても、本当に40代、50代で住宅ローンを借りても大丈夫なのでしょうか。

晩婚化やライフスタイルの多様化で、40代や50代になってからの住宅購入相談も増えていますが、40代、50代になってから30年、35年といったローンを組むと、定年退職後も返済が続くことになります。

結論から申し上げれば、リタイアするまでの期間で住宅ローンを滞りなく返済できる、もしくは、リタイア後も一定の収入が見込めるので問題なく返済を続けることができるという場合は、40代、50代で住宅ローンを借りることに問題はないと言えます。

先ほどもふれたように、年齢が上がって収入が増えれば、短い期間でローンを組んで、返済していくことは不可能なことではありません。

ただし、サラリーンマンの場合、退職金を住宅ローンの返済にあてるのは禁物です。これをやってしまうと、住宅ローンは完済できても、その後に待っている老後の生活資金が枯渇する可能性が高くなります。

シミュレーション上で可能性があるという話ではなく、実際に老後破綻のような状況に陥ってしまったケースはいくつもあるので、退職金で住宅ローンを返済することについては、私は決しておすすめしません。

事業主の場合は、定年退職はないので、ご自身が決めたリタイアする年齢までに完済できるかどうかを考えてください。

また、リタイア後も一定の収入が見込めるのであれば、その収入と貯蓄額をもとに、滞りなく返済できる住宅ローンの融資額を計算して、ローンを組むようにしましょう。

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親子リレー返済はおすすめできる?

ところで、子どもと二世帯住宅を購入して「親子リレー返済」で住宅ローンを組んでもいいのかといった相談を受けることもあります。

ですが、私としては「親子リレー返済」自体をおすすめしかねます。

まず、子どもがひとりならいいのですが、兄弟姉妹がいる場合、後々相続でもめる心配があります。そのため、住宅を購入する前に親子全員で十分に話しあうことが大切です。

二世帯住宅の場合、親が亡くなった後には、親が住んでいた部分に自分の子どもの家族を住まわすこともできますし、賃貸に出すこともできますが、リフォームやメンテナンスなどの費用負担の問題も出かねません。

また、親が高齢になるまで返済期間が続く場合には、万が一、認知症などになった場合の対策を事前に講じておく必要も生じてきます。

まとめ

ここまで見てきたように、住宅ローンは、滞りなく完済できることを前提に、融資額と返済期間を決めることが大切であるのはご理解いただけたと思います。

何歳からであっても、住宅ローンを組む場合は、まず無理なく完済できる融資額であるかをシミュレーションしてみることが最も大切なことです。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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