民泊は本当に合法化できるのか?
2016/12/27

民泊が合法化に向かっていますが…。
ここ数年取りざたされてきました「民泊」。儲かった話や、騙された話いろいろありますが本当のところを検証する時期来た様に思います。本年中の法制化は無理な様相ですが、年明けの1月から通常国会にかけられる流れで動いています。
ここ数年の海外からの観光客増加、ホテル・旅館業界の対応の限界、そして国内の空き家問題などなどといろいろな期待感で膨らんでいる側面は確実にあります。今回は、いろいろな側面から検証してみたいと思います。
①どんな形で民泊新法が整えられるのか?
民泊は旅館やホテルとは別のサービスの位置づけ。旅館業法の適用を原則なしとする方向で話が進んでいます。賃貸住宅や、通常の住宅を対象としていくのですから、ある意味「当然」なのかもしれません。設備や施設、建物の作りなどは明らかに違いますし、サービス内容もそうでしょう。
民泊参入には行政機関への登録や届出が必要。この新法成立後では、住宅の家主、住宅の管理者は、民泊を行う住宅について行政機関に届出や管理者の登録が必要になります。当然、この届出等を行わない民泊を「違法」という取扱いになる訳です。
民泊に利用できる営業日数に上限が決められる。現在、まだ営業日数の上限は確定していません。旅館業界と不動産業界の意見もすりあわない様子。流れ的には年間180日が有力となっています。そして、この営業日数を違反すれば業務停止命令など、行政処分の対象となる予定です。
◎以上の内容が大まかな情報ですが、その他の詳細については課題も多く不明な点もあります。ただ、政府主導で「民泊」を解禁する動きは来年中には判明するでしょう。「民泊」も確実に動き出している事に間違いはありません。
②「民泊」解禁で懸念される賃貸住宅の問題は?
●賃貸住宅の「民泊」への流用が多くなるのか?
賃貸住宅を経営する大家さんとしては、ほっておけない問題ですが、現在の賃貸借契約書の通常の契約形態の場合「賃貸住宅を貸主に無断で他者に貸す事」や「住宅以外の用途に流用」する事は契約違反となり、賃貸契約の解除理由になります。但し、大家さんが口約束や、簡単に自作した契約書ですと心配な面もあります。専門家や不動産業者にお願いするのが安全な方法でしょう。
●自分の賃貸住宅を「民泊」へ転用する場合の注意は?
これは多岐に渡る注意が必要になります。
☆火災保険や損害保険の問題が1つ目です。
〜当然ですが、賃貸住宅で加入できる損害保険とは当然「用途」が違います。この「用途」というのは軽視できません。居住用の用途と、事務所・店舗でも想定される問題も大幅に違います。民泊は解禁前ですから今は専用の保険もほぼありません。
保険の種類としては、不特定多数の利用者が使用した施設の火災や事件・事故などの損害を担保する商品となりますから、旅館業のそれと酷似した内容が必要となります。現在の賃貸住宅用の家財保険は、おそらく加入していたとしても条件違反や契約違反などの申し立てをされて保険金は支払われないと思われます。
民泊新法が施行されれば、大手損保などが新商品を発表するでしょうが、価格は高めの予測です。
これも民泊を実施する方の経費となるでしょう。
〜考えられる問題としても、対応しなければいけない問題も多岐に渡ります。民泊施設の設備などの故障、紛失、盗難や周辺の方々への被害、賠償。場合によっては利用者が被害を受けてしまう様なケースも想定されますから、補償や損害賠償も考えなくてはいけません。
海外からの旅行者を受け入れる訳ですから、文化や習慣が違うのは当たり前で、こちらがわからすると予想もしない事態だって考えておかなければいけないでしょう。そこを補てんしてくれる保険ですから、保険自体のハードルも上がりそうですね。
☆アパートの一部やマンションの一部を民泊利用する場合。
〜マンションの場合、管理規約に注意しなければいけません。そもそも管理規約で民泊が禁止されていると営業自体ができません。又、管理規約で禁止されていない場合でも、民泊の営業上で問題が起きたり近隣の住民の方からクレームが入ったりが、当然予測されます。もちろん対応を迫られるでしょうし、補償や損害賠償も想定しなければなりません。
〜アパートについても同じ事が言えます。更にマンションより建物の構造的な欠点、防音の弱さやアパートの近隣にまで及ぶ影響も想定しなければなりません。特に、賃貸住宅と民泊を混在させる営業は問題が多すぎるでしょう。
賃貸住宅は、入居者が生活の基盤とする静かで安全な場所を求めている事に対し、民泊の場合、不慣れな旅行者が宿泊施設としているのですから、平穏な状況のみを期待するのは危険です。
考えられる問題としては…。
住居や住居周辺での騒音・イザコザ
生活者と旅行者の認識の違いなどから発生する問題・事件
違法な取引などに使用される危険
数え上げるとキリがありませんが、重要な事は「オーナー自らが対応を迫られる」という事です。
経費的な角度から見ても、大きな負担となるでしょう。
☆そもそもの問題として経営企画は大丈夫なのか?
〜来年度に法整備が予定されている「民泊新法」ですが、法的に一定の手続きや規制をクリアすれば民泊が開始できますが、実際の民泊経営を考える事も大切ですね。つまり、宿泊施設としてのベッドメイクや清掃、いろいろなサービス、設備などの不具合対応…。
対象物件等のすぐ近くに居住するオーナーさんでしたら対応できるでしょうが、遠隔地のオーナーやいろいろな場所で同時に営業するオーナーなど、自分自身での対応が難しい方は、アウトソーシング的に経費がかかる訳です。今でも、ネットを閲覧するとそのような業務を請け負う会社は簡単に見つける事が出来ます。但し、経費がかかります。
更に、民泊新法の成立には「年間営業日数の上限」も定められる予定で、その辺りも注意が必要です。
現在の案となっている180日で考えて見ても、1年間の約半分です。半年間は営業が制限される状況ですね。
そこで、ちょっとシュミレーションして見ましょう。民泊での宿泊費が1日あたり5,000円として計算してみると、180日フルで稼働したとしても900,000円です。そこから先ほどお話しして来た清掃、ベッドメイク、その他サービスの経費や保険等の経費を差し引いていきますと…。
どうでしょう。収支は大丈夫でしょうか?
東京や大阪の中心部でしたら、180日の稼働もそれほど難しくはないでしょうが、民泊施設の立地や利便性の優劣によっては180日の稼働も大変かもしれません。そして、物件の自体の広さや設備も重要なファクターですし、良い状態を維持管理していく事も重要です。
以上のように、民泊施設の物件力は非常に大きな要素です。賃貸住宅の入居者対策でしたら、入居者が入居中には手がかかりませんが、民泊施設となればその頻度はおのずと上がるでしょう。その辺りも見積もる必要がありそうです。
③考察
如何でしょうか。現在の日本は、民泊経営には追い風が吹いていると言っていい状況でしょう。
しかし、この海外からの来訪者がいつまで原状以上の追い風を与えてくれるのか?これは誰にも予測できません。そしてこの「民泊」は、今から始まろうとしているもので、正直、どうなっていくのかは未知数です。大きなチャンスであることに間違いはありません。が、片手間的に考えると、やけどをしそうに思えます。
今回の検証も、それ程深いお話しではありませんが、不安材料は満載です。民泊新法についても、報道されている話は、まだまだ一部でしか無く決定までには内容も変わってくる事もあるでしょう。ネット上でも、違法と言われる時期に営業したお話しもたくさんでています。
そのような記事からも、問題などが読み取れます。民泊新法の話も、新しい情報が出てきたタイミングでお知らせしていきます。
この記事を書いた人
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