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火災保険

評価額はこうして決められる

平野 敦之平野 敦之

2019/04/17

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火災保険は契約している対象(建物や家財など)に損害があったときに、元の状態に戻すことを目的にしています。そのため火災保険の契約するときの評価額は、何かあった場合の損害額の基本となるために重要なものです。だからこそ契約の際に適正な評価額の計算をして、正しい保険金額で契約されていなければなりません。

火災保険の評価額の2つの算出基準

火災保険は住宅物件であれば、契約の目的は主に建物と家財です。これらの評価額の算出方法には次の2つの方法があります。

・新価(再調達価額)
・時価

新価とは保険の対象(建物や家財など)と同等のものを再築あるいは再購入するために必要な金額を基準にした評価額です。これに対して時価とは新価から使用年数に対して消耗した分を差し引いた金額を基準にした評価額です。

通常は「物」につける保険は時価を基準にすることがほとんどです。例えば自動車保険で車両保険に加入すると300万円した新車でも毎年契約を更新するたびに、280万円、250万円などと使用により減価した分が減っていきます。しかし火災保険の場合、住まいが損害を受ける前と同じように再建できないとその後の生活に問題が生じます。そのため火災保険では、新価という評価基準も採用されているのです。

現在、新規で火災保険に加入する場合、一般的にどの損害保険会社でも新価を基準にした商品のみで時価は採用していません。住宅火災保険や住宅総合保険などの古いタイプの火災保険に加入している場合には、時価と新価2つの基準を採用していました。

35年などの長期契約でまだこれらの住宅火災保険や住宅総合保険などに加入している場合、一般的には時価を基準にしていると考えてください。

建物の新価(再調達価額)を計算する2つの方法

実際に建物を新価基準で評価額を計算する場合、さらに2つの方法があります。具体的には次のようになります。

・建築費倍率法
・新築費単価法

建築費倍率法とは、新築での建築費が分かる場合、その建築費に建築年次や構造による所定の建築費倍率をかけて計算する方法です。新築したときの金額が分かればこれが一番正確です。例えば建築費2,000万円で新築したばかりで倍率を仮に1倍とすると次のように計算します。

2,000万円(建築費)×1(建築費倍率)=2,000万円

この倍率は建築年月によって異なります。次に新築費単価法とは、建物の構造や所在地に応じて決められている建物の標準的な平米単価をベースに延床面積を掛けて計算します。門塀や車庫などがあればそれを足します。

例えば平米単価19万円、延床面積100平米、門塀や車庫などが100万円だとすると下記のように評価額を計算します。

(19万円(新築費単価)×100平米)+100万円(門塀などの金額)=2,000万円

この新築費単価から計算する場合、単価は実態に応じて基準の単価から±20~30%程度の調整が可能ですから、ある程度は柔軟に調整することができます。

家財を評価額の算出基準

建物に対して家財はどのように評価額を計算するのかというと、実務的には年齢や家族の人数(大人・子供の数)などによる一覧表より評価額を決めていく方法が一般的です。

しかし同じ年齢、家族構成であっても家財をたくさん持っている人とそうでない人もいます。この場合もある程度調整が可能ですから、実態に応じて適正な金額で評価額を決めるようにしてください。

時価による評価額で火災保険に加入している人の注意点
現在の住宅用の火災保険は新価(再調達価額)が基準になっていることはすでにお話したとおりです。

しかし2015年9月までは最長36年まで火災保険の契約をすることが可能でした(現在は最長10年に改定されています)。損害保険会社にもよりますが、古いタイプの住宅火災保険や住宅総合保険などに加入している場合、いまも契約があるなら評価額はまず時価基準です。

時価基準での評価額で注意しなければならないことは次のポイントです。

・損害を受けた建物と同等のものを再購入する保険金が必ず支払われるわけではない。
・著しく低い評価額で契約していると損害を受けたとき減額されることがある。

同等のものが再築できないというのはすでにお話したとおりですが、新築時の金額が使用による消耗分が減っているので当然そのようになってしまいます。

少しわかりにくいのが2番目の項目です。具体的に数字を入れてみていきましょう。

例)適正な評価額 時価2,000万円 契約金額1,000万円 損害額1,000万円

実際の評価額は時価2,000万円にも関わらず、もっと安くしたいので1,000万円だけ住宅総合保険に加入したとします。つまり正しい評価額に対して50%だけ火災保険をつけた状態で同額である1,000万円の損害があった場合です。

この場合、1,000万円契約しているのだから1,000万円の損害で問題と考える人が多いでしょう。しかし一定以上の基準以下に金額を下げていると減額して支払う規定になっているのです。

現在の火災保険は新価で評価しますので、こうした問題は通常生じることはありませんが、古いタイプの火災保険では契約金額によっては起こりえる問題です。

契約期間が長いと火災保険を見直す機会が少ないため、こうした細かいところまで目が届かないケースは珍しくありません。古い火災保険だから駄目なわけではありませんが、補償内容も含めていまの火災保険とは色々違いがあります。最新の火災保険のほうがこの点はシンプルですが、現在の契約がどのような契約になっているか定期的にチェックするようにしてください。

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この記事を書いた人

平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp

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