自動車保険の「車両保険」――必要な人、そうでもない人
平野 敦之
2021/11/16
イメージ/©︎mealmeaw・123RF
任意の自動車保険(以下、自動車保険)の補償の一つに「車両保険」があります。
自動車保険の契約する車両そのものの補償ですが、保険料負担が大きいこともあり、車両保険は必要ないと考える人もいます。一方で、新車で購入間もない時期に事故で全損になると大きな損害となるため一概に不要とも言えません。
自動運転技術の導入や車両価格の上昇など車両保険を取り巻く状況は以前と変わりつつあるのです。
実は車両保険の加入者は半分以下
自動車保険の補償は大きく分けると3つの補償があります。具体的には次のような補償の構成となっています。
1.賠償責任保険:対人賠償責任保険・対物賠償責任保険
第三者への対人事故・対物事故に対して損害賠償する補償
2.傷害保険:人身傷害保険・搭乗者傷害保険など
契約車両に乗っている人の怪我の補償
3.車両保険
当該契約車両の損害を補償
上記に加えて、その他の特約があります。個人が自動車保険に加入する場合、対人・対物賠償責任保険や傷害部分の補償はほとんどついているので、これらを除外する選択はあまりありません。一方で車両保険や特約の付帯は自由です。
自動車保険加入率の推移
出典/損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」を基に編集部作成
車両保険の加入率は2019年度末で45.7%です。対人賠償責任保険や対物賠償責任保険がそれぞれ約75%、人身傷害保険が約70%あるのに比べると低い数字です。しかし、車両保険の加入率はこの10年間ゆるやかに上昇傾向にあります。
車両保険のタイプ、基本の2種類
個人契約の自動車保険にある車両保険では、損害保険会社によって違いはあるものの、2つくらいのプランを設けているのが一般的です。
・一般型
・エコノミー型(限定型)
補償の名称は保険会社によって違いがあるのでその点は考慮してください。一般型というのはいわゆるオールリスクタイプの車両保険です。地震等の損害は対象になりませんが、多くの車両損害がカバーされます。
これに対してエコノミー型とは、単独事故や当て逃げ(相手が確認できない)などが補償から外れています。もちろん、補償範囲が狭まるだけ保険料負担も軽減されます。自分でぶつけた事故については割り切るという考えの人には選択肢として考えてみるといいでしょう。
車両保険に加入したほうがよい人とは?
車両保険の必要性は低いと考える人もいるかもしれません。保険料負担が大きいというのは理由の一つでしょうが、さらに車両保険金額の基本は時価であることもあります。
新品の金額で補償する特約もありますが、所定の期間のみです。その後はやはり時価補償になるため、毎年更新のたびに車両保険の保険金額は下がっていきます。例えば、10年以上同じ車に乗っていれば車両保険金額はかなり下がります。数十万円くらいなら自分の預貯金からでもカバーできる人もいるでしょう。
しかし、自動車事故をめぐるトラブルの一つに、相手との言い分が食い違うということがよくあります。当事者からすれば、理不尽とも言えるケースもあります。最近は、ドライブレコーダー(ドラレコ)の映像があればこうしたトラブルを減らすことができますが、それもないと事故の解決まで数カ月~年単位で時間がかかることもあります。
その間ずっと車を修理しないままというわけにはいきません。相手に賠償してもらう分があっても、示談が完了しなければ相手から損害賠償金は支払われません。こんなとき車両保険があれば相手との示談が完了していなくても、自分の車両保険を使って修理することができます。
また、最近の自動車は先進技術を利用した安全運転を支援する装置が付帯されていることで、車両価格も高くなっています。これは車の修理代についても同様です。自費で車両損害がカバーできる人はいいのですが、そうでない人やカーローンなどがある人は、一般的に車両保険の必要性が高いと考えてください。
車両保険を安くする方法と上手な使い方、活用法
車両保険の有無で、保険料負担が大きく変わることは、はじめにお話したとおりです。その上で加入を考えるのであれば、一般型やエコノミー型など車両保険の種類を選んでください。また、車両保険には免責金額(自己負担額)を設定することができます。
例えば、0万円-10万円という設定なら契約期間中1回目の事故は自己負担なし、2回目以降の事故は自己負担10万円という意味です。この金額を大きくすれば保険料も安くなります。
自動車保険は無事故であれば割引が進むため、少額の損害なら保険の利用をしないほうが得なこともあります。一定金額は、自分で負担するという考えで加入するのも方法です。
保険の必要性の基本は、自分で負担できないほど損害が大きいものほど必要性が高くなります。一定期間だけ車両保険に加入するなど、柔軟に対応してください。
ちなみに、車両保険金額の設定には一定の「幅」があります。例えば、車両保険金額が10万円程度増えても保険料負担にはそんなに影響はありません。車両保険を付帯している間は、この車両金額の幅の上限で計算し直してもらって契約しておくこともできるので、加入先の保険会社や保険代理店などに相談してみるといいでしょう。
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp