ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

不動産賃貸借と反社会的勢力(暴力団関係者)について

森田雅也森田雅也

2026/02/20

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

暴力団関係者に土地や建物を賃貸した場合、ひとたび対立抗争事件が発生すると、反目する暴力団からの攻撃の対象となり得て、付近住民の安全が脅かされることになります。

また、対立抗争事件が発生しなくても、組員と思われる者の出入りや、付近を黒塗りの車が通行するだけでも、付近住民に大きな不安や恐怖を与えることになります。物件が事務所として利用されていることが発覚した場合には、不動産の資産価値が大きく下落することもあり得ます。

このように、暴力団関係者と賃貸借契約を締結した場合、安全面でも経済面でも大きなダメージを受けることになります。こうした事態やリスクを避けるためには、賃貸借契約を締結する段階で暴力団関係者を徹底的に排除するための対策を講じること、そして、賃借人が暴力団関係者であることが発覚した場合に即座に契約を解消できる状態にしておくことが不可欠です。

暴力団関係者と賃貸借契約を締結しないための事前対策について

一つ目の事前対策として、契約締結前に申込者や保証人の身元、経済力、職業、経歴などを詳細に確認するようにしてください。

申込者に不審な点があるものの、本人に確認することが困難な場合には、最寄りの警察署(暴力団対策課)または公益財団法人暴力団追放運動推進都民センターに相談するとよいでしょう。相手方が暴力団員か、暴力団員と密接な関係を有する者かなどの情報を提供してもらえることがあります。

なお、申込者が暴力団関係者であることを知ったうえで不動産を賃貸すると、東京都暴力団排除条例第24条で禁止されている利益供与に該当しますので、そのような事実を知った際には直ちに契約の締結を中止するようにしてください。

二つ目の事前対策として、賃貸借契約書に暴力団排除条項(暴排条項といいます。)を規定することが挙げられます。この条項は、暴力団関係者が契約の相手方になることを拒絶し、また契約締結後に賃借人が暴力団関係者であることが判明した場合に契約を解除できる旨を定めるものです。都道府県によっては条例で暴排条項を契約書に記載することを努力義務として規定しています。

この暴排条項では、単に賃貸借契約を解除できるにとどまらず、催告することなくただちに契約を解除することができることを盛り込むことが重要になります(催告なしで契約を解除することを無催告解除といいます。)。このような条項を設けておけば、後に相手方が暴力団関係者であると判明したときに、ただちに関係遮断を行うことができます。

また、表面上は反社会的勢力ではない一般企業の体裁を取る組織が増え、反社会的勢力であるか否かの区別がつきにくくなっているため、契約書の暴排条項において、詳細かつ具体的に「反社会的勢力」の内容を定義しておくことも重要となります。具体的な文言については、警察庁のホームページには暴排条項のモデル条項例が掲載されていますのでそちらをご参照ください。

三つ目の事前対策として、賃貸借契約書の暴排条項のみならず、申込者に表明確約書の提出を求めることも効果的です。表明確約書とは、賃借人から現在又は将来にわたって、「自分は暴力団員ではないこと」、「暴力団との関係がないこと」及び「暴力的な要求行為等を行わないこと」を表明させ、これに違背した場合や虚偽の申告をした場合には、無催告で契約の解除に応じ、これによって生じた損害を自己の責任とすることを確約させるものです。この表明確約書は、契約解除及び相手への損害賠償請求を容易にするほか、直接本人に反社会的勢力ではないことを確認することができ、契約前に排除することが期待できる点、契約書の暴排条項とは違う効果があります。

(公財)暴力団追放運動推進都民センターのホームページに記載例が掲載されていますのでそちらをご参照ください。

暴力団関係者と賃貸借契約を締結してしまった場合の対応について

前述のとおり、賃借人が暴力団関係者である場合に無催告解除ができる暴力団排除条項が契約書に明記されていれば、直ちに契約を解除できます。

一方で、このような暴排条項が契約書に記載されていない場合、必ずしも直ちに契約を解除することができるとは限りません。この場合、賃借人に用法遵守義務違反などの何らかの義務違反があるとして、契約を解除することになります。

過去の裁判例では、賃借人が賃貸物件を暴力団事務所として使用し、建物の窓に鉄板を打ち付けたり、監視カメラなどを設置した事案においては、賃貸借契約上の無断増改築禁止条項の趣旨に反するとして賃借人の義務違反を認定したものがあります。

暴力団関係者に賃貸している不動産を売却する際のリスクについて

前述したとおり、暴力団関係者に不動産を賃貸した場合、付近の住民の安全が脅かされることとなるため、そのような事実が発覚した場合には不動産の資産価値が大きく下落することになります。

過去の判例では、不動産売却後に建物の一室に暴力団組長が居住していることが判明した結果、不動産の価値が下落したとして、買主の売主に対する損害賠償請求が認められたものがあります。(東京地判令和4年5月30日)

裁判所は「暴力団組織に所属する者が居住している事実が存在することにより、当該居室のみならず、本件建物のそのほかの居室を賃借し、又は賃借しようとする者において、使用の際に心理的に十全な使用を妨げられることになるものと認められる。……本件建物の売却に当たっても相応の価値下落が生じるものと考えられる。」
と述べたうえで、不動産の価値下落により、購入価額の1割相当額が買主に生じた損害であるとして、買主の売主に対する損害賠償請求を認めました。

買主からこのような請求を受けないためにも、売却に際して当該不動産を暴力団関係者に賃貸していないか確認することはもちろん、もし疑わしい事情があれば、必ず買主にそのことを説明することが求められます。

おわりに

賃借人が暴力団関係者であることが判明した場合、付近の住民の安全や不動産価値維持のためにも直ちに契約を解除し、明け渡しを求めることが望ましいです。そして、明け渡しをスムーズに進めるためにも、賃貸借契約締結時の本人確認の徹底、無催告解除が可能となる暴排条項の明記といった対策を講じることが重要となります。契約締結時に申込者が暴力団関係者であることが見抜けなかった場合に備えて、暴排条項を必ず契約書に盛り込むようにしてください。また、古くから契約の更新を繰り返しており、賃貸借契約書が昔のもののままである場合には、暴排条項が記載されていないこともありますので、今一度契約書の内容を確認するようにしてください。

【関連記事】
無断での多人数居住に関するトラブル
家賃債務保証会社の重要性を認識。杉並区アパート2名死傷事件


仲介手数料無料の「ウチコミ!」

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

ページのトップへ

ウチコミ!