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キャリア官僚の妻とエリート商社マンの夫の「別居婚」が破綻した理由(2/2ページ)

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つき合いは14年 離婚は3日で成立

その後、お互いに連絡を取り合わなくなって半年が経ち、これからの方向性を考えなければと思った妻から夫を食事に誘います。

しかし、世間話は普通にできても、肝心の話が切り出せない。そこで悩んだあげく、ご夫婦揃って、パーソナルカウンセリングにやってきました。

一通りお話をうかがったあと、カウンセリングを行いました。

「奥様は別居婚であっても、アクシデントが起こったときは、そばに来てくれるか、そばにいるように接してほしいというお気持ちがあるのですね」

「ええ、それが結婚だろうと思います」

そこで私は夫に質問を投げかけました。

「連絡を取らなかった半年、何か、心境に変化はありましたか」

「いえ、何も」

「えっ? 何も?」

しばらく一点を見つめてから、おもむろに夫を見つめる妻。そこに涙はありません。

「ご主人は普段どおりにお過ごしだったのですね」

「ええ、仕事が忙しかったですから」

この答えを聞いた妻が夫に質問します。

「本当に何も考えていなかったの?」

「考えるって、何を?」

深いため息をつく妻。

「こういう会話って、もともと無意味だと思っていて、コミュニケーションコストって考えてしまいますね」

「私との会話がコミュニケーションコストだなんて、ちょっと言葉がないです」

「そうですね。私もどう言えばいいか……」

コミュにケーションコストとは、意思疎通をするときの時間で、これが低ければ効率的、高ければ非効率とされます。つまり、時間のムダをどう省くかという意味です。

この翌日、妻から夫へ離婚届けが送られ、その3日後には離婚が成立しました。

別居婚を選ぶ人の共通点

いま、こうした2人のような「回避型愛着スタイル」を持つ人たちが急増しています。

「回避型愛着スタイル」とは、他人との親密な関係や継続的な責任を避けるということからその名が付けられました。

それは単に社交的でないという意味ではなく、あらゆる情緒的な結びつきが面倒くさいと感じてしまう人たちです。その特徴は結婚生活に現れやすく、仕事では、むしろ有利に働くことが多いのです。いわばビジネスライクな関係で、合理的に仕事を進めていくタイプです。

回避型愛着スタイルの方の背景には、1)感情を表に出すことを嫌がる家庭で育った場合、2)両親がいつもいがみ合っていた家庭で育った場合、があるとされています。

どちらの家庭に共通するのは、「愛情を求めても叶わない」ということで、そのことを悟った子どもが、自分から回避する術を身につけた結果、こうした対人関係のスタイルになります。

この2人は、同じような家庭環境で育っていて、似たような考え方をお持ちでした。

しかし、妻がアクシデントによる不安をきっかけに、情緒的な結びつきを求めたのに対して、夫はあくまで親密な関係や継続的な責任を回避しようとしました。その結果、離婚に至りました。

とはいえ、取り立てて問題が起こらなければ、別居婚は回避性愛着スタイルの人にとって快適な生活スタイルでもあります。この2人も妻にアクシデントがなければ、思った通りの別居婚を続けることができたしょう。

別居婚が増える背景に、少子化が進んだことで、家庭内での子どもの教育が厳格になるなど、小さいときから子どもに対しても自立性を求める家庭が増えているように思います。

それが回避性愛着スタイルの人が増える土壌になっているように思います。さらにこういった合理的な人間関係のほうがビジネスの現場では評価が高く、仕事上も有利に働くといった社会構造があるからかも知れません。

その一方で、何かあったときに自分の思いや感情を吐露できる場がない。そんなときに安心して感情を吐き出せる場として機能する場がプライベートカウンセリングになっています。

この2人は離婚という結果になりましたが、次回はそうならないための人間関係の再構築の方法についてお話ししていきます。

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この記事を書いた人

公認心理師 博士(医学)

大手不動産会社で産業保健活動を行う一方、都内で親子や夫婦の関係改善のためのプライベートカウンセリングを実践している。また、最近は、Webカウンセリングも行い、関東甲信越や東北地方の人たちとのセッションにも力を入れている。

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