スルガ銀行が提示した代物弁済の問題点(2/2ページ)
大谷 昭二
2020/03/12
代物弁済を行った場合の問題点(賃貸経営放棄の場合)とは?
スルガ銀行はシェアハウスの所有者が土地と建物を物納すれば、借金の返済をなくすことを債権売却の条件としていますが、これにはさまざまな問題の発生が予想されます。
以下は、考えられる代表的な問題点です。
①債権額と代物弁済で受け取ったものとの差が生じる場合の問題点
②代物弁済だと信用情報機関にも履歴が登録されるのではないか(ブラックリスト)
③不法行為の内容によって代物弁済でも残債が残る可能性
④ADR(裁判外紛争解決手続)の元本カットも、代物弁済に相当するほどの対応の可能性
⑤採算が取れている被害者でも対象となるか
⑥購入年月日が古いユーザーでも対象となる場合があるか、またその線引
⑦ADR(事業再生が目的)から代物弁済に移行したい被害者についてはどの時点で乗り換えが可能か
⑧合意契約後の税務問題 など
こうした行政処分に対するスルガ銀行の対応は、個別の顧客の事情を前提に、スルガ銀行の不正があった場合、元本一部カットの検討はするというものの、不正行為と顧客の投資判断関係を常に認めるものでないとしています。
つまり、あくまでも顧客の判断で決めたというスタンスは崩していないわけです。しかも、入居者があって物件収支の赤字が解消される場合は、元本一部カットしないということなのです。また、金利を引き下げてなおも赤字が解消しない場合は、買取に応じるのではなく解決金支払いで対応するといいます。 税務関係については、こうした解決にかかる資金は所得税課税されないという。
一連のスルガ銀行の不正融資が明らかになって、1年になろうとしていますが、いまもスルガ銀行から代物弁済に対する統一見解が出ていません。一連のシェアハウスをめぐる融資のこの投資物件に対する代物弁済は「令和徳政令」として金融業界も注目し、金融取引における公正(fairness)さや金融秩序が正に問われています。
この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。