盛り塩の意味と置き方
横山せつこ
2019/08/28
お家の玄関やトイレ、お店の店先などで見かける「盛り塩」。
「来た人が塩を舐めるわけでもないし、飾りとしておいているわけでもなさそうだ。なぜ皿に塩を盛っているんだ?」
子どもの頃、不思議に思っていました。しかし、直感的に思いました。
「きっと何かのおまじないだ。」
これに手を触れちゃいけないし、多分大人に聞いちゃいけない・・・。
そして子ども時代の疑問が、今になって湧き出てきました。一体「盛り塩」とはなんでしょうか?なぜ塩じゃなければいけないのでしょうか?
塩の意味
お葬式が終わると塩をもらったり、相撲取りが土俵にあがると塩をまくなど日本文化のワンシーンで「お清めの塩」が使われます。
お清めで使われる塩は、もともと神道の葬儀で使われていたそうです。神道では、「死=穢れ」とするため塩を使って清めるのです。一方で、仏教は「死=穢れ」ではありません。そのため、本来であれば仏教には清めの塩は必要ないものです。ただし、日本の宗教は元来「神道」でその影響が強く残り、仏教の葬儀でも「清めの塩を配る」という風習が残っています。
しかし、なぜ塩には清める力があると思われているのでしょうか。
たとえば、キリスト教では「洗礼」や「聖水」というように、清める力があるのは水とされています。水によって「穢れや罪を洗い清める」という意味合いがあるのでしょう。
日本の「神道」においては、清める力は「塩」にあります。それは塩の特徴にも一因があるといわれます。塩には防腐効果があり、細菌類を死滅させたり、増殖を抑える働きがあるのです。たとえば、魚の塩物や野菜を塩で漬けるなど、塩による保存方法はいくつもあります。塩は日本の食生活を支えてきました。また塩自体も腐ることがありません。「塩」は馴染み深く、なくてはならない存在です。
日本の「古事記」では、「黄泉の国へ行ったイザナミノミコトは、そこでついてしまった穢れを払うために海水で身体を清めた」という内容が記されていることもあり、「海水=塩」が神聖なものと解釈されたのではないでしょうか。
盛り塩はなぜ三角形に盛られるの?
盛り塩は、「縁起担ぎ」や「厄除け」、「魔除け」などの意味合いで、お家や店の玄関先などに置かれます。ただ置くのではなく、小皿に塩を山形(あるいは円錐形・四角錐など)に盛るのです。なぜこのような形に塩を盛るのでしょうか?これも諸説あるようです。一つには、「神様にお供えする食事を山形に盛る風習があるため、それに習って塩を盛るようになった。」とされています。これは個人的な解釈ですが、私は盛り塩をみるたび「ピラミッド」を思い出します。頂点が天に向かってぐんと伸びていく形は、まるで大地と天を結ぶ架け橋のようにも見えます。天の力を受けて、どっしりと構えた大地が力を取り込んでいく特別な形。不思議と人の心を奪う形です。
盛り塩のお皿の色の意味と、塩の交換時期
さて盛り塩にするには、どんな塩でもよいのでしょうか?
市販の塩にはいくつか種類に分類されますが、中でも海水系の「天然の製法で作られた塩」が良いそうです。
塩を盛るのが難しければ霧吹きなどで湿らせてから成形するのがいいでしょう。もっと綺麗な山形にしたい人は、盛り塩用の型なども販売されています。以前まで、塩を盛るお皿の色は「無地の白色」が一般的でした。最近では風水の影響もあり、「黄色のお皿=金運」、「赤のお皿=仕事運アップ」、「ピンクのお皿=恋愛運アップ」、「緑色のお皿=精神の安定」などの意味合いもあるようです。設置する場所は、お家の玄関が多いです。他にも、厄がたまりやすいキッチンやトイレ、風呂場などの水回りも良いとされています。
気をつけなければいけないのが、一度盛った塩は永遠に交換しなくていいわけではありません。塩も放っておくと汚れも溜まってきます。盛り塩の交換時期も諸説あるようですが、基本的には一週間から二週間ほどで交換するのが良いとされています。あるお店に置いてあった盛り塩は、「何年、塩を変えていないの?」というくらい、盛り塩にホコリがたまっていました。しかしそのお店は商売繁盛していましたので、盛り塩効果については、少し首を傾げたくなりましたが・・・。日本人として、日本の伝統的な風習を知っておくのは大切なことですし、「最近、物事がうまくいかないな〜。」というとき、自分の気持ちを前向きにするきっかけ作りとして、盛り塩を活用するのも良いかもしれません。
この記事を書いた人
イラストレーター、ライター
日常のなかのちょっとした雑学をイラストを交えて解説します!