スマートな防災のヒント「ローリングストック」「フェーズフリー」「ミニマルライフ」
賃貸幸せラボラトリー
2024/10/01
2024年も自然災害の絶えない年に
今年2024年は、大きな地震が幕を開けた年となった。記憶に新しい「能登半島地震」だ。元日の夕方に発生し、最大震度7を観測。甚大な被害を各地にもたらしている。
8月には「日向灘地震」が発生した。最大震度は6弱。震源地が南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあったことから、「南海トラフ地震臨時情報――巨大地震注意」が初めて発表されるに至っている。
台風や豪雨による水害や土砂災害も相次いでいる。年初に地震に見舞われた能登地方は、9月に再びこれらの被災地となった。
こうしたことから、避難場所や避難所の確認、防災グッズの購入など、災害への備えを改めて意識し、行動に移している人も多いに違いない。
構えすぎない「スマート」な防災
さて、この記事では、そんな災害への備えについてあるヒントを皆さんへお伝えしたい。それは「構えすぎない」防災だ。
毎日の暮らしと、いざという時のための準備が無理なく融合した、いわば「スマート」な防災を目指すための3つの方法を挙げていく。
「ローリングストック」「フェーズフリー」「ミニマルライフ」
以上の3つだ。
使いながら備蓄―――ローリングストック
災害に備えるため、食料や生活上必要な消耗品などを備蓄しておきたい―――多くの人が日常思っていることだろう。
その方法として、おすすめなのが「ローリングストック」と呼ばれるやり方だ。
具体的には、まず、備蓄したい品物を多めに買って来る。
たとえば、レトルト食品ならば、通常1週間分を目安に購入するところ、3倍の3週間分を一度に購入する。
そのうえで、購入した3週間分のうち、1週間分までを消費したところで、減った分を買い足しておく。以降は、そのパターンを継続する。
すると、家の中では、そのレトルト食品の在庫がいつの時点でも2~3週間分存在する状態が続くことになる。
もちろん、モノによっては、以上の「〇週間分」を「〇カ月分」としてもいいだろう。
なお、この時、気をつけたいのは消費する順番だ。在庫=ストックのうち、古いものから順に使っていくことを忘れず心がけよう。
結果、備蓄品が、鮮度も保たれながら常に一定量確保されている状態が生まれることになる。
これが、ローリングストックだ。災害に備えるための活動が、日常生活の中にほとんど負担なく組み込まれるかたちとなる。
食品であれば、缶詰やいま挙げたレトルト食品、インスタント麺、フリーズドライ食品、ミネラルウォーター、ペットボトル飲料など、ある程度の期間保存しておけるあらゆるものがローリングストックの対象になるだろう。
生活用品であれば、トイレットペーパーや乾電池、カセットコンロ用のボンベといったものが対象に挙げられるだろう。
日ごろ活躍、災害時も活躍―――フェーズフリー
日ごろは日常のアイテムとして普通に使用が可能な一方、非常時には非常時用のものとして対応力を発揮する―――。
そんな特性を持つ道具などを指す言葉が「フェーズフリー」だ。
たとえば、「計量カップとして使える紙コップ」というものが存在する。フェーズフリー商品の代表としてよく知られるものだ。「~合」「~cc」といった目盛りがカップの側面にプリントされているため、非常時は、屋外や避難所で米や粉ミルクの計量に使えたりする。
バケツとして使えるバッグもある。撥水性の高い生地で作られているため、非常時は水を入れて運ぶことができる。普段は買い物などで普通に使用可能だ。
強化型のダンボール箱というものもある。潰れにくいため、一定数を並べてベッドにすることができる。通常は、引っ越しなどの際、重い物を詰めて運ぶのに重宝される。
安全靴仕様のスニーカーや同じく長靴も、優れたフェーズフリー商品といえるだろう。普段は普通のスニーカーや長靴と同様に履くことが出来、非常時は、落下物や危険物、不安定な重量物から足を守ってくれるアイテムとなる。
AC電源のほかに乾電池も使えるデスクライト、ヘッド部分を取り外して懐中電灯のように使える充電式スタンドライトといったものもある。いずれも、停電時に役立ってくれそうだ。
さらには、誰もが知るカセットコンロ。身近でもっともよく目にするフェーズフリー商品といえるだろう。普段、食卓で使っているものが、ガスや電気が停まった非常時でもそのまま変わらず役に立つ。
加えて、カセットボンベ式のストーブがあれば、カセットコンロ用のガスボンベはそちらでも使用できる。コンロ・ストーブ・ボンベの「カセット3点セット」が揃えば、冬の災害に対してもかなり心強い準備となるだろう。
以上、フェーズフリーな商品、道具はほかにもあるが、これらを意識して選んでおくことで、非常時への対応力はスムースなかたちで上がるはずだ。スマートな防災を実現するための優れたアプローチとなるだろう。
ちなみに、キャンプが好きな人は、こうした点とても有利といえる。非常時対応できるグッズをすでに色々と持っているケースが多い。ポータブル電源などはその代表だ。趣味と防災がフェーズフリーになっているおトクなライフスタイルといえるだろう。
モノが少なければ憂いも少ない―――ミニマルライフ
モノはなるべく持たず、必要最小限を満たす程度に留めつつも、無理な我慢はしない。自身が満足できる生活をシンプルにキープしていく―――ミニマルライフ。
それを実践している人―――ミニマリストの言葉とともに、昨今多くの人に知られている生活スタイルだ。
そんなミニマルライフは、実は災害に強い側面を持っている。
たとえば、自らの寝室に、大型で背の高いタンスをどっかりと置き、しかも中を服や物でギュウギュウ詰めにしているような人は、ミニマリストには100%いないはずだ。
同様に、大型の本棚や食器棚を満載状態にしているような人も、ミニマリストにはいないだろう。
すると、そんな人の部屋では、地震で倒れたタンスなどの下敷きになって怪我をしたり、死亡したりするような事故が起こらない。
倒壊した棚の割れたガラスを踏んだり、それらに行く手を塞がれて部屋から出られなくなったりする危険も生じないことになるわけだ。
一方で、持ち物の少ないミニマリストの部屋では、クローゼットなど、備え付けの収納に余裕が生じていることも少なくない。
すると、そこは非常用の持ち出しリュックなど、防災グッズを保管したり、ローリングストックしておく日用品や食材を置くスペースに出来たりする。
ミニマルライフは、そんな意味で、災害に強い生活スタイルということができるだろう。
ちなみに、「ミニマリストは災害に弱い」という見方も世の中にはあって、その理由を聞けば……
「彼ら・彼女らはモノを持ちたがらないので、普段用のない防災グッズや災害用の備蓄品などは保管したがらない」
自称ミニマリスト自身が、そう言ったりすることもある。
だが、それはよくある「ミニマル」と「ミニマム」の混同だろう。本物のミニマリストは、生活から無駄を排除しても、余計な我慢はしない。すなわち、不安やリスク、ストレスを生活に持ち込まない。
災害大国日本に暮らす上で、自分の身を自分で守る対策を普段から講じておくことは、まさにそうした効率的な生活の質の維持―――ミニマルな選択となるはずだ。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室