電気ストーブとカセットボンベ 賃貸・冬の2大要注意アイテム
賃貸幸せラボラトリー
2023/11/10
壁、床、天井の向こうにある「他人の命」
賃貸マンションもアパートも、そこで暮らすことはすなわち共同生活の一員となることだ。
たとえ一度も言葉を交わしたことはなくとも、あなたの部屋の壁の向こうや、床の下、天井の上には、同じ屋根のもとで暮らす“仲間”が住んでいる。
自らを含め、それぞれの命、生活、財産をしっかりと守り合うために、火の元の取り扱いには細心の注意を怠らないようにしていきたい。
そこで、この記事では、賃貸の部屋でよく見られがちな2つの危険なアイテムを採り上げたい。火災の原因となりがちな2つのモノだ。
ひとつは、電気ストーブ。
もうひとつは、カセットコンロ用のカセットボンベ。
どちらも「手軽で便利」がまさに代名詞。だが、その取り扱いに関しては、決して気を緩めてはいけないものだ。
電気ストーブ ~炎が見えないことが油断を生む?
総務省消防庁の令和4年版「消防白書」を見てみよう。令和3年(2021)中における「住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く)」と、いうデータがある。
これによると、住宅火災による死者のうち、発火源がストーブであるケースでは、種類別に以下の内訳となっている。
石油ストーブ等 | 57人 |
電気ストーブ | 50人 |
ガスストーブ | 2人 |
電気ストーブでの死者数は、石油ストーブ等に迫っている。燃料を燃やす炎が見えない安全なイメージとは裏腹に数字が大きい。
さらに、同じ年の別のデータも見てみよう。東京消防庁が公表している「令和4年版 火災の実態」のなかにある21年中の出火原因別火災件数だ。
電気ストーブ(温風機、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター含む) | 85件 |
石油ストーブ・ファンヒーター等、石油冷暖房関連機器 | 20件 |
こちらは、繰り返すが東京消防庁管内のデータとなる。つまり、雪国や寒冷地ではない地域での数字だ。勢い、電気ストーブの数字は伸びることとなるが、ともあれ、結果論として電気ストーブが起こす火災の多さが示されてはいる。
では、どんな状況で、電気ストーブによる火災は発生しているのだろうか。同じく東京消防庁が実例を過去よりいくつか広報しているので挙げてみよう。
- 就寝中に使用していた電気ストーブに布団が熱せられ、着火した
- 電気ストーブが椅子に近接している状態で乳幼児がスイッチを入れてしまい、椅子に着火した
- 使用中の電気ストーブの近くにあったタオルがストーブ上に落下、着火した
- バスマットを電気ストーブにかけていたところ、何らかの原因でスイッチが入り、着火した
- ダイニングテーブルの下で使っていた電気ストーブの電源を入れたまま外出、椅子や座布団などに着火した
- 生乾きの衣類を乾かそうと、使用中の電気ストーブの上に置いたため、着火した
- 室内のカーテンを開けたところ、使用中の電気ストーブに接触、着火した
このように、さまざまな可燃物がストーブ本体に接触したり、近づいたりすることで着火に至ったケースが多い。電気ストーブの一見安全なイメージに、われわれがつい気を抜いてしまう様子がとてもよくわかる各事例となる。
そこで、誰もが思い浮かべられるだろう。賃貸の狭いワンルームなどでは、必然、色々な物が電気ストーブの近くに置かれる可能性が高まりやすい。可燃物の接近や接触が特に起こりやすくなるわけだ。ぜひ注意したい。
カセットボンベ ~最近も相次ぐ大きな事故
持ち運びしやすい便利な調理器具、カセットコンロ。秋から冬――寒くなると多くの家庭で活動頻度が増してくる。
そして、その便利さを実現させているキモといえるのがカセットボンベだ。カセットコンロの中にはめ込んで使うスプレー缶型のあの商品だ。
しかし、このカセットボンベ、事故が多い。
たとえば、つい先日のこと(9月23日)。広島市安芸区のアパートの一室で、焼肉の最中にボンベが爆発、木造2階建て1棟が全焼している。この部屋に住む男性が全身にやけどを負ったほか、別の部屋の住人も軽傷。付近のJR線も止まっている。
さらに、その約ひと月前、川崎市高津区のマンションでも事故が起きている。爆発後の火災はなかったと見られるものの、現場となった部屋に住む男性が重体となり、搬送されている。
カセットボンベはなぜ爆発しやすいのか? それは、ボンベ本体に書かれている注意書きを読めば一目瞭然だ。
「40℃以下の場所に保管すること」
カセットボンベは外から加わる熱に弱い。そのため、たとえば過去には以下のようなケースで事故が起こっている。
- カセットボンベをファンヒーターの温風出口の近くに置いていた。加熱され、爆発
- カセットボンベを使用中のコンロの近くに置いていた。加熱され、爆発
- カセットコンロを2台並べ、鉄板をその上に載せて調理していた。熱せられた鉄板の下でボンベが加熱され、爆発
このように、外部の熱によってボンベ内部のガスが膨張、その圧力に缶が耐えきれなくなって破裂、近くに火元があった場合はそれがガスに引火し、爆発――と、いった流れで、事故が起こる仕組みとなっている。
ちなみに、近年、単身者向け賃貸物件などでは、キッチンにガスコンロは無く、代わりにIHクッキングヒーターが設置されていることが多い。
そのため、災害等による停電が心配ということで、電源の要らないカセットコンロを購入し、非常時への備えとしている入居者も多いようだ。的確な準備といえるが、ボンベの取り扱いには十分に注意してほしい。
以上、近づく寒い季節を前に「賃貸・冬の2大要注意アイテム」と題して、注意を発した。なお、これらはもちろん賃貸に限った話ではない。どんな環境であっても用心は怠らないことが大切となる。そのうえで――
電気ストーブ … 触れたものや近づいたものを発火させやすい
カセットボンベ … 外からの熱が加わることで爆発事故を起こしやすい
つまり、この両者を近づけることも絶対にしてはならない。読者は当然理解できることだろう。
(文/賃貸幸せラボラトリー)
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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室