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何がわれわれの「孤独感」を深めるのか? 孤独・孤立に関する全国調査

朝倉 継道朝倉 継道

2023/04/25

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「UCLA孤独感尺度」を採用

現代に暮らす我々が感じている「孤独」に関する大規模な調査となる。

この3月末に、内閣官房 孤独・孤立対策担当室から「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)」の結果が公表されている。

調査対象は全国の満16歳以上の個人。調査票によるアンケート形式・オンラインもしくは郵送にて回答・対象者数2万人(住民基本台帳を母集団とした無作為抽出・有効回答数1万1218件)と、なっている。

「わが国における孤独・孤立の実態を把握し、各府省における関連行政諸施策の基礎資料を得ること」を目的としたものだ。

ところで、この調査では、対象となった人々に対し、ある興味深い質問方法が採られている。「UCLA孤独感尺度」というもので、その「日本語版・3項目短縮版」と紹介されている。


隠されたキーワード

UCLA孤独感尺度 日本語版・3項目短縮版――具体的にはこんなかたちだ。

まず、多くの質問(問1~29までにわたる)の中に、同じ選択肢の付いた以下3つが混じっている。

あなたは、自分には人とのつきあいがないと感じることがありますか?
 1.決してない 2.ほとんどない 3.時々ある 4.常にある

あなたは、自分は取り残されていると感じることがありますか?
 1.決してない 2.ほとんどない 3.時々ある 4.常にある

あなたは、自分は他の人たちから孤立していると感じることがありますか?
 1.決してない 2.ほとんどない 3.時々ある 4.常にある

実は、ここには小さな仕掛けがほどこされている。3つの質問文の中にはある言葉が無いのだ。それは「孤独」の2文字となる。

回答者における孤独感の有無と、その深さを深層的に把握するため、ここではあえて孤独という文字の使用が避けられている。なお、この問いかけのしかたを当調査では「間接質問」と呼んでいる。

一方、ここで設けられているのがスコアだ。実は、上記の質問に対する回答としてそれぞれ4つある選択肢については、各々、点数が設定されている。具体的にはこのようなかたちとなる。

決してない 1点
ほとんどない 2点
時々ある 3点
常にある 4点

その上で、導き出された合計スコアを当調査では以下のように整理している。

10~12点 孤独感が「常にある」人
7~9点 〃「時々ある」人
4~6点 〃「ほとんどない」人
3点 〃「決してない」人

つまり、先の3質問に対し、以下のように答えた人は、合計が2+4+4=10点となる。すなわち、孤独感がもっとも深いレベルの人――「孤独感が常にある」人だ。

あなたは、自分には人とのつきあいがないと感じることがありますか?
 答え「ほとんどない」…スコア2点

あなたは、自分は取り残されていると感じることがありますか?
 答え「常にある」…スコア4点

あなたは、自分は他の人たちから孤立していると感じることがありますか?
 答え「常にある」…スコア4点

この回答者は、普段、人づきあいの機会をある程度は持つようだ。しかし、その中で自身は取り残され、孤立しているといつも感じている。実のところ孤独感が深いかたちとなっている。

以上をふまえた上で、結果をいくつか見ていこう。

配偶者の有無による影響――未婚者の6割に孤独感

夫や妻、すなわち配偶者の有無が孤独感におよぼす影響は、やはり大きいようだ。

未婚者の場合、さきほどのスコアが10~12点(孤独感が常にある)にのぼる人は12.5%でトップ。同じく、7~9点(孤独感が時々ある)の人も49.6%でやはりトップ。必然、両方を合わせた数字も6割を超え、トップとなっている。さらに、それに次ぐのが配偶者と「離別」した人だ。

「配偶者の有無別による孤独感」

(配偶者無し)
未婚の人 孤独感が常にある 12.5% 時々ある 49.6% 計62.1%
離別した人 孤独感が常にある 11.8% 時々ある 44.6% 計56.4%
死別した人 孤独感が常にある 5.6% 時々ある 35.0% 計40.6%
(配偶者有り)
配偶者のある人 孤独感が常にある 4.9% 時々ある 39.3% 計44.2%

なお、ここで注目したいのが、配偶者と死別した人の数字となる。見てのとおり、配偶者がいる人(ある人)よりも、孤独感をもつ人の割合が合計で少ない。

もっとも、これを男性のみに限ると様子は変わってくる。「死別」での数字(48.1%)は「配偶者あり」(44.4%)をやはり上回るという、興味深いデータもほかに出ている。

居住形態による孤独感への影響――「賃貸」の数字が高い

次に、居住形態――住む家のかたちによる孤独感への影響を見てみよう。

(持ち家)
戸建て 孤独感が常にある 5.7% 時々ある 39.6% 計45.3%
マンション等 孤独感が常にある 7.2% 時々ある 42.5% 計49.7%
(非持ち家・賃貸)
民営賃貸 孤独感が常にある 11.7% 時々ある 46.2% 計57.9%
公営・UR・公社賃貸 孤独感が常にある 9.6% 時々ある 45.3% 計54.9%
(非持ち家・給与)
給与住宅・寮・寄宿舎 孤独感が常にある 7.2% 時々ある 47.4% 計54.6%

トップは民営賃貸だ。すなわち、民間の賃貸マンションやアパートとなる。これはおそらく世間のイメージどおりの結果だろう。2番目は「公営・UR・公社賃貸」となる。孤独感をもつ人の割合はやはり賃貸で高いようだ。しかし、一方では持ち家(多くは夢のマイホーム?)との差が意外に開いていない印象をもつ人も多いかもしれない。

また、同じ持ち家ながら、戸建てに比べてマンションの数字がわずかに多いのも、気になるといえばいえることかもしれない。

他者をサポートしたい気持ちと本人の孤独感との関係

こんな興味深いデータもある。

「あなたは、まわりに不安や悩みを抱えている人がいたら、積極的に声掛けや手助けをしようと思いますか?」

この質問に対しては、全体の51.5%が積極的な声掛けや手助けを「しようと思う」と答えている。つまり他者へのサポート派だ。

一方、「しようと思わない」は11.2%に留まっている。こちらはざっと、他者への無関心派といえるだろう。(他には「わからない」が35.7%など)

そこで、これらサポート派と無関心派の中身を見てみると、こんな様子となる。

サポート派のうち―― 孤独感が常にある人 4.2% 時々ある人 34.5% 計38.7%
無関心派のうち―― 孤独感が常にある人 14.7% 時々ある人 48.0% 計62.7%

両者にかなりの差がついている。これが示唆するところは大きいといえるかもしれない。すなわち、他者への無関心派には、そもそも自らが孤独感の深い人――他者からの無関心を感じている人が多い可能性をこの結果は示している。

すると、始まりはどちらなのか? 他者への無関心か、他者からの無関心か、あるいはその両方か?

孤独感が生まれる重要な鍵――「人間関係」のトラブル

「現在のあなたの孤独感に1番強く影響を与えたと思う出来事は?」――この問いかけに対し、1位となっているのは「家族との死別」だ。

孤独感が「常にある」「時々ある」という人の13.5%がそう回答しており、一方、孤独感が「決してない(スコア3点)」「ほとんどない(スコア4~6点)」という人も14.3%がそう答えている。両者にさほど差はない。

そこで注目されるのが、孤独感が深い人での割合が高く、かつ、孤独感が少ない人との差が目立つ項目だ。それは、すなわち人々の孤独感を深めるにおいて、より強い影響力をもつものとなる。

結果、浮かび上がっているのは「人間関係による重大なトラブル(いじめ・ハラスメント等を含む)」だ。

孤独感が「決してない」「ほとんどない」という人では2.4%に留まるところ、「常にある」「時々ある」という人では6.3%になる。

もともと孤独感を抱いていた人がこうした出来事に遭遇した場合、あるいはこうした出来事に遭った人にクッションや逃げ場となる他の人間関係が無かった場合、心の大きなダメージとなることが示唆されるデータといえるだろう。

興味深い「直接質問」との比較

以上、多岐にわたる当調査の結果の中から、ほんの4項目におけるデータ、なおかつその一部だけを紹介したかたちとなる。

他の内容について、興味ある方はぜひ下段のリンク先で確認してほしい。

なお、この記事では冒頭で、当調査が採用している(UCLA孤独感尺度による)間接質問について説明し、データもそれにもとづくもののみを紹介した。

ここでの間接質問とは、繰り返しになるが、調査対象者の抱く孤独感を深く探るために、あえて「孤独」の文字を使わない質問をし、そこにスコアを潜ませておく方法を指す。

しかしながら、実は当調査においては、「あなたはどの程度自分が『孤独』であると感じるか?」と、直截に尋ねる質問も用意されている。つまりこちらは「直接質問」だ。

そのうえで、各項目への答えについては、この直接質問と、先の間接質問それぞれに基づいてセパレートされたデータを見比べられるようになっている。この違いもなかなかに興味深い。

内閣官房 孤独・孤立対策担当室 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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