「J-REIT」と「不動産投資」、リスクが高いのはどっち?
大友健右
2016/07/25
「J-REIT」は魅力的な金融商品だが…
「J-REIT」という金融商品の話をよく聞くようになりました。
投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する金融商品のこと。もともとはアメリカから生まれた「Real Estate Investment Trust(略してREIT)」から派生したもので、日本ではJ-REITと呼ばれています。
また、証券取引所に上場されているため、株式と同様に取引することが可能です。日本の不動産市場の需要は、株と比べたらかなり安定していますから、「市況の悪化で元本割れ」というリスクは低いと思いますし、この低金利時代に分配金の予想利回りが3.3%前後といいますから、魅力的な金融商品でしょう。ただし、投資対象の不動産が震災等で被災した場合、価格の下落や分配金が変動するリスクもあります。
「J-REIT」と「不動産投資」はどう違うのか?
J-REITの話と、マンションやアパートなどを購入する「不動産投資」の話と一緒にするのは乱暴かもしれませんが、あえて比較して語ってみましょう。
というのも、「サラリーマン大家で副収入」、「憧れの不労所得」といった誘い文句で不動産投資を始める人の多くが、J-REITのような金融商品を買う感覚で投資をしているように見えるからです。
日本の不動産物件の価値は、新築時がピークで、その後は時間の経過とともに価値が下がっていくということは改めていうまでもありません。したがって、マンションやアパートなどを購入する不動産投資は、J-REITと比べてかなりリスクの高い投資ということになります。
ところが驚くことに、投資後の客付け(入居者募集)や管理をすべて業者に任せっきりで何もしない投資家はけっこういるのです。
重要なのは「投資」ではなく、「経営」すること
そもそも私は、「不動産投資」という言葉に違和感を持っています。なぜなら「投資」すれば終わりというものではなく、入居者を募集したり、リフォームなどをして物件の価値を高めたりする「経営」の部分が成功の可否を決める重要な要素だからです。
私たちが運営している「ウチコミ!」を利用者のなかには、そうした経営面で非常に優秀な投資家をよく目にします。空室だらけの物件を業界用語で「全空物件」といいますが、そうした物件を半値に近い値段で購入し、さまざまな経営努力をして「満室物件」にしてしまう人たちです。これを売却すれば、半値で購入した価格の倍以上になる可能性もあります。J-REITの3.3%前後の利回りと比べると、考えられないほど大きな利益を生み出しているのです。
こうした人たちは、単なる「投資家」の域を超えて「プロの大家さん」といってもいいでしょう。
「不動産会社が動いてくれないので空室が減らない」、「不動産会社に法外なAD(広告費)を払わされている」といったことを理由に「不動産投資はリスクが高くて割に合わない」と結論づけているすべての人に私はいいたい。そういう高いリスクを背負ってでも、儲けている投資家はたくさんいるのですよ、と。
自分たちが売りやすい物件、儲けが多い物件を売るのが当たり前の不動産会社をアテにしていたら、儲かるはずがありません。
そもそも私は「不動産投資」という言葉には違和感を持っていて、いっそのこと「不動産経営」という言葉に統一したほうがいいのではないかとさえ思っているくらいです。
今回の結論
・「J-REIT」は金融商品としては魅力的な商品。
・だが、金融商品に対する投資と「不動産投資」を一緒に考えてはいけない。
・「不動産投資」で儲けたければ、「プロの大家さん」として経営の腕を磨かねばならない。
この記事を書いた人
株式会社ウチコミ 代表取締役 株式会社総研ホールディングス 代表取締役 株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役 1972年生まれ。大手マンション会社で営業手法のノウハウを学んだのち、大手不動産建設会社に転職。東京エリアにおける統括部門長として多くの不動産関連会社と取引、不動産流通のオモテとウラを深く知る。 現在、株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役として、住宅リフォームを中心に事業を展開。また、株式会社ウチコミ 代表取締役として、賃貸情報サイト「ウチコミ!」を運営。入居の際の初期費用を削減できることから消費者の支持を集める。テレビ・新聞・雑誌などメディア出演も多数。