ご存知ですか? 不動産投資の世界で人気No.1銀行の秘密(2/2ページ)
尾嶋健信
2016/06/01
全額融資を受けるのは本当にラッキーか?
つい先日も、次のようなケースに遭遇しました。
大手通信会社に勤務する独身のAさんは、そこそこ貯金もたまったので、それを元手に副業で不動産投資ビジネスを始めようと、あるセミナーに通い始めました。すると、セミナー講師の紹介で知り合った不動産業者から、「ここだけの話ですが」と、耳寄りな話を持ちかけられたのです。
「実は、私の得意先のひとりが、所有する賃貸マンションを手放しがっているんですけど…」。話がちょっと入り組んでいますが、ご説明しましょう。
東京近県にBさんという、遊戯店経営者がいます。その人は副業でこっそりマンション経営もしていて、そちらのほうでも儲かっているそうです。そのBさんはいま、離婚の準備を進めていますが、妻に賃貸マンションの存在を知られると、財産分与とかいろいろ面倒なことになるので、マンションは早急に売り払って現金化したいんだとか。売値は、相場より多少安くても構わないといいます。
マンションの販売価格は8000万円。1室8万円のワンルームが全10室で、年間960万円の家賃収入が見込めます。しかも、現在満室。表面利回りが年12パーセントにもなる優良物件です。
その話を聞いた投資家Aさんは、ぜひ買いたいと思いました。幸い、手元には800万円近い自己資金もあります。
そこで、話を持ってきてくれた不動産業者に購入する意志を伝えると、融資してくれる先はもう想定済みだとか。そう、S銀行です。そして実際、アパートローンを申請してみると、上限9000万円まで融資してくれることがわかりました。
不動産業者は言います。「Aさん、ラッキーでしたね。銀行は借り入れ期間30年で、9000万円まで融資してくれるそうです。諸費用分の600万円もローンでまかなえますから、手持ちの資金を一銭も使わずにすみますよ」。
こうしてAさんは、諸費用分まで含めた販売価格8600万円を全額アパートローンで購入することができました。
本当に得したのは誰なのか?
一見、Aさんは得したように見えますが、そうではありません。ローン金利は4.5パーセントですから、結局Aさんは30年の総額で元利合計1億6000万円近く払わなければならなくなります。もし、諸費用600万円を自己資金でまかなっていれば、借入金額は8000万円で済み、支払い総額も1億5000万円弱に。つまりAさんは、400万円も余分に支払うことになります。
逆に得をしたのは、売り主と買い主の双方から仲介手数料(約520万円)を手にした不動産業者。そして、8600万円の融資実績を上げたS銀行の融資担当者。損をしたのはAさんだけです。
それでも今回のケースでは、購入した物件が優良だったため、まだ救われました。毎月約44万円のローンを返済しても、Aさんの手元には30万円以上のキャッシュが残るのですから。管理費や修繕費もしっかり積立ながら、健全なマンション経営にいそしんでいってほしいと思います。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。