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法的規制やトラブルのリスクも

なぜAirbnbはグレーなビジネスといわれるのか?

尾嶋健信尾嶋健信

2016/03/16

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フランスではAirbnbが社会問題に

Airbnb(エアビーアンドビー)とは、部屋を貸したい個人(ホスト)と、部屋を借りたい旅行者(ゲスト)をマッチングさせるための、インターネットサイトのこと。もともとは、このサービスを始めたアメリカの社名&サイト名でした。

ところが、サービス開始から8年で世界190カ国以上の2500万人以上が利用していることから、民泊(料金を取って個人宅に宿泊させること)全般を表す普通名詞としても使われるようになっています。

Airbnbは、日本ではまだあまり知られていませんが、欧米では旅行者にとって便利なサイトとして、よく知られています。それどころか、たとえばフランスでは、Airbnbは一種の社会問題にもなっています。

というのも、フランス、特にパリのアパート・マンション経営者たちは、パリの住民に普通に部屋を賃貸しするより、観光客相手にAirbnbで部屋を貸し出したほうが何倍も儲かることを知ってしまったから。

フランスは、毎年8000万人以上の外国人旅行者が訪れるという、世界一の観光立国。海外旅行者数はフランスの全人口(約6000万人)の1.3倍と多く、宿泊施設は慢性的に足りない状態です。そこへAirbnbのサービスが広まった途端、アパート・オーナーたちの意識が変わりました。自国の一般市民に部屋を貸すより、外国人旅行者に貸すほうがずっと割がいいのです。

なにしろ、月1000ユーロ(約12万円)のワンルームが、1泊1万円以上で貸せるのですから。こうして、パリのアパートの多くが外国人旅行者を意識し始めた結果、家賃は急騰。アパート暮らしの住人は、パリに住みにくくなってしまいました。

Airbnbは旅館業法に抵触する!?

幸い日本ではまだ、賃貸住宅の家賃が高騰するなど、Airbnb普及の弊害は出ていません。というより、わが国の場合、Airbnbなどの民泊が普及しにくい土壌であるといえます。

わが国ではなぜ、Airbnbを含む民泊全般が普及しにくいのでしょうか。最大の理由は、法的規制がかかっているからです。

まず引っかかるのが、旅館業法です。

旅館業法では、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業及び下宿営業を「旅館業」と定めています。そして旅館業とは、簡潔にいえば、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」になります。この旅館業を営むには、都道府県知事(または市長か区長)の許可が必要です。

無許可で旅館業を営むと、旅館業法10条の規定により、6月以下の懲役または3万円以下の罰金に処せられます。民泊は「旅館業」とみなされますから、当局に摘発されれば、旅館業法違反で罰せられるのです(摘発されることはまれですが)。

Airbnbは全面解禁されるのか

もうひとつ引っかかりそうなのが、民法です。

◎民法612条
1.賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2.賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

つまり、賃貸物件を借りている者は、オーナーの許可を得ないまま第三者に部屋を又貸しするのは民法違反で、違反した場合、賃貸借契約を一方的に解除されることもありうるわけです。

こうした法的規制があるため、Airbnbをはじめとする民泊全般が、日本では白(リーガル)でも黒(イリーガル)でもない「グレー」なビジネスと見られています。

とはいえ、まったく普及していないかというと、そうではありません。事実、Airbnbのサイトには日本国内の物件も数多く登録されています。

また、前回お話しした通り、外国人旅行者数が急増しているわが国では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、外国人向け宿泊施設が圧倒的に足りなくなるのは明らか。そのため、現・安倍政権では、民泊に対する法的規制を外す方向へとシフトしようとしています。近日中に、民泊が全面的に解禁になるという噂もあります。

外国人旅行者の騒音・ゴミ問題

わが国における、Airbnbなどの民泊にひそむ問題点はまだあります。それは、外国人旅行者と近隣住民との間で、さまざまなトラブルが発生すること。

まずひとつ目が騒音トラブルです。

ご存知のとおり、最近のキャリーバッグの多くは車輪つきで、引いて運ぶときにガラガラ音を発生させます。このガラガラ音、空港や鉄道駅、商業施設内ではそれほど耳につきませんが、静かな住宅街ではかなり耳障りに感じるのも事実。

来日する外国人旅行者のなかには、深夜・早朝に発着する格安航空会社(LCC)の利用者も多いため、数人から十数人のグループが近隣住民の寝静まった時間帯に、住宅街をガラガラガラガラ移動すると、当然、住民側から苦情が寄せられます。

また、外国人の多くは日本人よりかなり声高に喋りますから、民泊に利用されるアパート・マンションの共用部では、深夜と早朝、彼らの話し声が鳴り響くことに。これも多くの場合、近所迷惑になります。

民泊のふたつ目のトラブルがゴミ問題です。

アメリカや中国など多くの国は、日本ほどゴミの分別にやかましくありません。そのため彼らは、燃えるゴミも燃えないゴミも分別することなく、何でもゴミ箱にポイポイ捨ててしまいます。

それが空港など公共機関のゴミ箱であれば、それほど大きな問題にはなりませんが、住宅街でこれをやられると、街の美観を損なうだけでなく、悪臭の元凶に。また、禁煙区域内でタバコを吸う外国人や、タバコをポイ捨てする外国人も多く、こちらも大きな問題になっています。

民泊の3つ目のトラブルが、事故や事件です。

たとえば2015年7月、渋谷区の賃貸マンション12階から4歳の女の子が転落して死亡しました。女の子は中国人旅行者で、Airbnbを利用した母親とこのマンションに泊まっていました。

Airbnbでこうした事故・事件が発生するのは、いまのところ、ごくまれなケースとはいえ、リスクがあることは十分に理解しておかなければなりません。

今後の動向に注目

ただし、Airbnbでは最初の会員登録の際、パスポート・メールアドレス・SNS・携帯電話機の4つで認証して本人確認をしています。つまりAirbnbでは、ホストもゲストも、身元の明らかな者同士がマッチングするシステムになっているのです。

そうした認証がきちんとなされていれば、ゲストが泊まった部屋で盗撮されたり、カードのパスワードを盗み見られたりするリスクは低いといわれています。ホストにしても、貸した部屋が犯罪に利用されるなどのリスクもある程度は避けられそうです。加えて、両者の間にAirbnb社が入ることで、料金面でのトラブルも発生しにくいといわれています。

ごくまれにですが、宿泊した部屋のカギをーゲストが紛失してしまうケースや、宿泊した部屋の炊飯ジャーや電子レンジを持ち逃げするゲストもいるとか。とはいえ、そうした場合は、ゲストから事前に預かっている保証金や、Airbnbで入っている保険で補償されることになっています。

いずれにしろ、今後、規制が緩和されるのか、それともさまざまな事情から一定の歯止めが残されたままになるのか、今後の動向を注目していきたいところです。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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