賃貸経営のロジック――“不動産投資家”ではない。“賃貸経営者”としての視点を徹底する(2/3ページ)
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/11/09
⼊居者の命を守ることが賃貸経営
――遠隔地となると、管理会社にある程度任せることになると思います。管理会社とはどのように付き合っていますか。
地域によって管理⽅法やルールが違いますから、やはり地元の管理会社にお願いした⽅がスムーズに進みます。もちろん、最初は管理会社のスタッフと何度も直接会い、コミュニケーションをとって親睦を深める努⼒をしました。最初に⼈間関係をしっかりと構築したことで、退去があったときにもすぐに対応してくれています。
――物件を購⼊した後、海野さんはまず⼤規模修繕を⾏うということですが、その理由について教えてください。
そもそも賃貸経営とは、⾃分が購⼊した物件に⼊居者さんに住んでもらい、家賃をいただいて成り⽴つビジネスです。⼤家は⾃分の所有物件のなかで、⼊居者さんの命を預かっているということです。そうであれば、⼊居者さんの安全性、⽣活するうえでの利便性、そして快適性、この3つは最低限整える義務と責任があると考えています。
――それが、最初の⼤規模修繕につながるわけですね。
賃貸物件の場合、⼤規模修繕の時期が来て、あるいは減価償却が終わって売りに出すというケースが多くあります。そういうことも私は把握しているので、⼤規模修繕の費⽤をあらかじめ計算に⼊れて、物件を購⼊しています。
経営者として数字を徹底的に把握
――そういう点から考えてみると、賃貸経営をするオーナーは“経営者”としての視点を欠かすことはできないですね。
銀⾏員時代の経験からも分かるのですが、とくに代々⼟地や建物を働率、貸借対照表、損益分岐点など数字を常に頭の中に⼊れておくことは経営者として必須です。そのうえで、⼊居者さんと向き合っていくべきだと思います。
――⼊居者と向き合うというのは、⼊居者⽬線の部屋作りといったことでしょうか。
はい。そもそも、経営者として数字が頭に⼊っていなければ、⼊居者さんのために使う資⾦も貯まらな
い状態でしょう。だから、⼤規模修繕にも⼿を付けないということになるのです。私は10年に1度の⼤規模修繕を計画していますし、現在の⼊居者さんに求められている無料Wi-Fiや宅配ボックスなども全物件に導⼊しています。
――そのほか、“経営者”として重要なことはありますか。
所有する物件が地域に与える影響も考える必要があるでしょう。例えば、事件や事故が起きるような物件にするべきではありませんよね。とくに単⾝者が⼊居する物件であれば、道路から⾒てどの部屋に誰が住んでいるか分からない⽅がリスクを下げられると思います。私が所有する物件は全て内階段・内廊下で、エントランスには防犯カメラを設置しています。
コロナ禍での経営と予測されるトラブル
――昨年の新型コロナ感染症の拡⼤によって、賃貸経営に変化はありましたか。
⼊退去が少なくなりましたね。⼤家としては退去がないのはありがたい話なのですが、私の場合は退去も予測しながら経営計画を⽴てているので、少し予定が変わってしまいました(笑)。
――ステイホームや在宅ワークなどで、⼊居者も部屋で過ごす時間が増えていると思います。そういったことに対して、何か対応はしていますか。
設備の使⽤頻度が⾼くなるため、急に何かが壊れてしまうというトラブルが想定されます。私がとくに⼼配したのが給湯器です。お湯が出なくなると⽣活に⼤きな⽀障が出るため、製造後10年以上経過している給湯器について、全物件で交換しました。
――隣り合った部屋の騒⾳トラブルなどはありませんでしたか。
いまのところは発⽣していません。しかし、部屋にいる時間が⻑くなれば、騒⾳トラブルが起きる可能性はあるでしょう。その場合は、トラブルの当事者だけに連絡するのではなく、⼊居者全員に告知して、皆さんに意識していただくようにしようと考えています。
この記事を書いた人
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