テレワーカー4割を含む人々がコロナで刺激された住宅への「こだわり」とは
ウチコミ!タイムズ編集部
2021/06/10
文/朝倉 継道 イメージ/©natagolubnycha・123RF
テレワークを取り入れた勤務形態は4割超え
建築家や工務店などの住宅のプロと、ユーザーとを結びつけるマッチングサービスを展開しているSUVACO(スバコ)株式会社が、運営するサービスの登録ユーザーを対象とした調査結果をこの4月に公表した。
タイトルは、「コロナ禍の住まいは、立地より内装へのこだわり重視の傾向 要望の変化TOP3は『内装・広さ・戸建て』」となっている。
調査対象は、SUVACO登録ユーザー175人。調査時期は、20年12月26日~21年1月17日。なお、この間に政府による2度目のコロナ・緊急事態宣言が行われている(1月7日)。
それでは紐解いていこう。まずは、上記175人のユーザーに「現在の勤務形態について、あてはまるものをお選びください」と、尋ねた結果だ。
「ほぼ出社」…54.7%
「在宅と出社を組み合わせたハイブリッド」…21.1%
「ほぼ在宅勤務」…21.1%
「その他」…3.1%
ご覧のとおり、「在宅と出社を組み合わせたハイブリッド」と「ほぼ在宅勤務」を合わせると42.2%となる。すなわち当調査に答えている人は、その約4割=5人に2人が、いわゆるテレワーカー(またはリモートワーカー)ということになる。
そこを踏まえたうえで、次の質問を見てみたい。
「新型コロナウイルスによる影響で、住宅購入あるいはリフォーム・リノベーションの要望や条件に変更はありましたか?」
これに対して、「変更はない」を回答した方を除く131人の答えが以下のとおりとなっている。
1位「より内装にこだわりたくなった」…22.1%
2位「より広さを求めるようになった」…14.5%
3位「より戸建てを求めるようになった」…13.7%
4位「都心を離れて郊外を検討するようになった」…9.2%
5位「二拠点居住を検討するようになった」…7.6%
6位「駅近にこだわらなくなった」…6.9%
7位「より部屋数を求めるようになった」…6.1%
8位「都会から地方を検討するようになった」…4.6%
9位「郊外を離れて都心を検討するようになった」…3.1%
9位「要望や条件が変わり予算を増やした」…3.1%
9位「諸事情により予算を減らした」…3.1%
12位「地方から都会を検討するようになった」…0.0%
番外「その他」…5.3%
ご覧のとおり、1位にはほかの答えを若干引き離すかたちで「より内装にこだわりたくなった」が挙がっている。
2位は「より広さを求めるようになった」で、これも内装と同様、住宅内部の空間におけるベネフィット(恩恵)を求める声といっていい。
3位には、「より戸建てを求めるようになった」が挙がっている。2位の「広さ」につながるニーズといっていいし、住宅内外において好みの環境をつくりやすいという点では、1位の「内装」ともリンクした答えといえるだろう。
そこで振り返ると、当調査では回答されている人においての「テレワーカー率」がもともと高い(約4割)。
なおかつ調査期間は、昨年の夏や秋ではなく、ほぼ今年に入ってから(20年12月26日~21年1月17日)ということになっている。
そこでいえば、「テレワークが働き方として現在定着し、今後もそれが続きそうな」層のニーズがある程度反映されたものが、上記の結果であるといって良いのかもしれない。
なお、テレワーク経験や同じく日常への定着が、個人の住まい選びや、住まいに対する考え方に影響を与えやすいことについては、国の調査でもそれが浮かび上がってきている。
転居を考える人はテレワーカーに増えている
国土交通省が今年の3月に公表している「令和2年度 テレワーク人口実態調査」の結果を見ると、テレワーク従事者・経験者は、そうでない人々に比べ、自宅の転居を考える割合が倍以上に高まる様子が示されている。
具体的にはこんな数字となる。
「テレワーク従事者・経験者を除いた、被雇用の就業者の方々」
コロナ禍を受け、転居に向けて具体的な行動をとっているか、すでにとった割合…4.2%
行動の有無にかかわらず、転居の希望を抱いた割合(上記4.2%も含む)…10.5%
「テレワーク従事者・経験者(=テレワーカー)である、被雇用の就業者の方々」
コロナ禍を受け、転居に向けて具体的な行動をとっているか、すでにとった割合…12.9%
行動の有無にかかわらず、転居の希望を抱いた割合(上記12.9%も含む)…24.7%
(以上のデータについて、詳しくは「国交省 令和2年度 テレワーク人口実態調査」の「5.【調査結果】新型コロナウイルス感染拡大に伴う働き方、住まい方への影響」を参照)
この結果は、前記のSUVACOの調査結果において、4位、5位、6位という比較的上位に、「都心を離れて郊外を検討するようになった」「二拠点居住を検討するようになった」「駅近にこだわらなくなった」がそれぞれ挙がっていることとも、符合するといっていいだろう。
コロナをきっかけに広がったテレワークが、今後われわれの社会にどの程度定着していくかによって、住宅市場もおそらくは揺れていく。
それが大きな揺れになるのか、小さな揺れのままなのか、地域によってどのくらいの差が生じるのか。いまはまだ混沌として先は見えないが、大変興味深い将来のかたちといっていい。
なお、今回ご紹介したSUVACO株式会社の調査結果は、下記リンク先でご覧いただける。
「SUVACO(スバコ)株式会社 コロナ禍の住まいは、立地より内装へのこだわり重視の傾向 要望の変化TOP3は『内装・広さ・戸建て』」
この記事を書いた人
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