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渋谷区、港区、新宿区……目安の空室率5%ラインを次々突破 東京オフィス賃貸市況

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文/朝倉継道 イメージ/©morris71・123RF

不動産の各分野において、新型コロナウイルスによる「コロナ禍」の影響を受け、もっともその基盤に揺らぎが生じているのは、オフィスだろう。オフィスに並ぶPCのモニタ画面を一日中睨みながら仕事をしている人が、少し前まで、東京の都心の高層ビルなどには大勢集まっていた。

しかしながら、一方ではITテクノロジーを介した仕事の広がりにより、いわゆるホワイトカラーの多くが、近年は、オフィスに毎日通って働く必要性をすでに失っていたといっていい。

そこを「コロナ」が衝いた。テレワーク(リモートワーク)が広がった。そのうえで、実際にテレワークを経験してみると、

「やれば全然できちゃうじゃないか」
「通勤ラッシュの電車にも乗らずに済むから楽だ」

と、いうことになり、国が先般公表した資料によると……

・約64%の人がテレワークで働くことに対し「大変満足・やや満足」
・約82%の人がテレワークを今後も「実施したい」

と、回答するに至っている。(雇用型の就業者のうち、テレワーク実施者・経験者8205人に尋ねた結果。国土交通省「令和2年度 テレワーク人口実態調査」より)

そこで、先般3月末(2021)に公表された、オフィス賃貸仲介大手「三鬼商事」による「三鬼オフィスリポート」(MIKI OFFICE REPORT)の2021年版を紹介したい。20年1年間にわたっての、全国7大都市のオフィス賃貸市況を網羅した、業界注目の年間報告だ。

このうち、「東京版」を紐解いてみたい。コロナ禍、さらにテレワーク拡大の影響がたしかに色濃くみられるデータが挙がっている。

コロナの影響による市場の変容が示されている数値に注目

「三鬼オフィスリポートの調査対象地区である『都心5区』のオフィス空室率と平均賃料(坪単価)」

千代田区
 平均空室率:2020年12月時点 …3.23%
(前年12月時点の1.15%より2.08ポイント上昇)
 平均賃料:2020年12月時点 …2万3622円
(前年12月時点の2万4384円より762円のマイナス)

中央区
 同上 …4.13%
(前年12月時点の1.36%より2.77ポイント上昇)
 同上 …1万9723円
(前年12月時点の2万56円より333円のマイナス)

港区
 同上 …5.79%
(前年12月時点の1.86%より3.93ポイント上昇)
 同上 …2万2316円
(前年12月時点の2万2293円より23円のプラス)

新宿区
 同上 …4.17%
(前年12月時点の1.75%より2.42ポイント上昇)
 同上 …1万9943円
(前年12月時点の1万9716円より227円のプラス)

渋谷区
 同上 …5.34%
(前年12月時点の1.94%より3.40ポイント上昇)
 同上 …2万3816円
(前年12月時点の2万5213円より1397円のマイナス)

ご覧のとおりだが、まず注目したいのは、カッコの中に記した前年12月時点の空室率だ。5区すべてで1%台だったことがわかる。それが、いずれの区も、1年の間に3~5%台まで一気に増加している。コロナの影響による市場の変容が、如実に示されるものといっていい。

なお、港区と渋谷区では、数字が5%を超えている。この「5%」というのは特別な値だ。過去より、オフィス賃貸市場におけるひとつの目安とされているからだ。

すなわち、ざっと、この5%を上回ると、マーケットが借り手市場化し、賃料はさらなる下落に向かうといわれている。

すると……「でも、渋谷区はともかく、港区は平均賃料が前年同月比プラスじゃないか」との声も出そうだが、たしかに、昨年末時点ではそのとおりだ。しかし、その後の数字を追っていくと、下記のとおりしっかりと(?)港区も下落に転じている。

港区・平均賃料(三鬼商事オフィスマーケットデータ・月例のリリースでの数字)

2021年1月時点 …2万2201円(前月比-115円)
同 2月時点 …2万2144円(前月比-57円)
同 3月時点 …2万1985円(前月比-159円)

なおかつ、以上をふまえたうえで、渋谷区・港区といえば、渋谷、恵比寿、六本木やその周辺といった、業務をテレワークに移行させやすいIT、IT系企業の集積地を抱えている。

20年に生じた(そして現在も続く)両エリアにおけるオフィス賃貸市場の動きは、まさにコロナと、それにともなうテレワークの広がりがかたちづくったものといえるだろう。

なお、さきほどの空室率5%ラインだが、渋谷区、港区に続いて、新宿区も21年2月時点のデータでこれを超えている。さらに、翌3月時点での状況は以下のとおりとなっている。

千代田区 …3.85%
中央区 …4.75%
港区 …7.30%
新宿区 …5.33%
渋谷区 …5.49%
(都心5区全体 …5.42%)

今後、東京のオフィス賃貸市場はどうなっていくのか?

いまのところは、悲観する声も、逆に楽観論も聞こえてくる状況だ。楽観論を下支えしているのは、なんといっても、コロナの収束がワクチンによって具体的に視界に入ってきた(と思われる)ことだ。これにより経済が回復し、「本来の貸し手市場が再び戻ってくる」とみる人も多い。

一方、コロナ以前までの状態には戻らないとする意見も少なくない。

そうしたなかには、テレワークの広がりによる企業のオフィス需要の縮小を指摘する声がやはり多いが、それがどれほどの規模と時間的速度をもって進んでいくかは、いましばらくの間、先読みのできない状況が続きそうである。

 

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