消費者庁が注意喚起 ベランダ…窓…「子どもの転落事故」に賃貸住宅オーナーも注意を
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/10/23
文/朝倉 継道 イメージ/©︎makoto honda・123RF
子どもが住居の窓やベランダから転落し死亡する事故が多く発生
9月に消費者庁が、「子どもが住居などの窓やベランダから転落し死亡する事故が多く発生している」として、「窓やベランダからの子どもの転落事故に御注意ください!」と題した注意喚起を行っている。ファミリータイプの物件を運営しているオーナーにとっては、注目しておきたい内容だ。
同庁によれば、厚生労働省「人口動態調査」、東京消防庁「救急搬送データ」、医療機関ネットワーク事業の事故情報(消費者庁と国民生活センターの共同事業)を分析したところ、「窓を開けたり、ベランダに出る機会が増えたりする夏頃から転落事故が増加」「子どもの中でも3~4歳の転落事故がもっとも多い」「2階からの転落でも、入院が必要な中等症と診断されている事例が多い」「窓が開いた部屋で子どもだけで遊んでいて発生する事例が多い」といった要因は浮かび上がったという。
具体的な要因とされている中には、物件の新築やリフォーム、原状回復の際など、オーナーが気配りすることで、危険を減らせそうなものも少なくない。
まずはベランダだ。
ベランダからの子どもの転落事故の要因となりやすい重要なひとつが、足場となってしまうモノや構造。子どもがこうした「足場」にのぼることで、手すりを乗り越え、外側に転落する危険が高まる。
もっとも要注意なのは、エアコン室外機の位置だ。手すりから近い室外機の上に子どもがのぼると、そこから、低い位置にある物干し金具や物干し竿の上から手すりの上へと、移動ルートができてしまう。これらは代表的な危ない事例だ。
さらには、危険な高さのベランダ外壁がある。子どもがのぼれる高さのコンクリート壁がベランダを囲み、その上に比較的低い柵と手すりが置かれているといったように、壁によじのぼった子どもが、そのまま容易に手すりを越えてしまえる状態となる。
ほかにも、壁や柵自体に、足場となる形状や構造が備わっているケースもある。例えば、「コンクリート壁にデザイン上のアクセントのため穴が空いていて、そこに足をかけられる」「柵が格子状になっているなど、子どもがのぼりやすいかたちをしている」、加えて、さきほどの「低い位置にある物干し金具」も、もちろん状況によっては足場となりえる。
対策はベランダそのものではなく「手前」に着目する
そこで、こうした危険なベランダがすでに存在する物件においては、オーナーはどう対策すればよいのだろうか。
工事を行い、安全なかたちに変えられればそれがベストだが、そうもいかない場合は(いく場合でも)、ベランダそのものではなく、「手前」に着目するといい。つまり、ベランダに通じる窓や網戸に、補助錠を取り付けるのだ。
子どもの手が届かない高い位置に補助錠を設置し、子どもが勝手にベランダに出られないようにすることで未然に事故を防ぐことができる。ただし、このケースでは、補助錠の存在する理由(ベランダにそもそも危険が存在するという事実)、火災時には逆に避難の障害になる可能性がある(施錠時、子どもだけではベランダに出られない)といことを親御さんに理解してもらうことが必要だ。そのことにより、「幼い子どもを部屋に残したまま外出しない」など、基本的な安全意識を高めてもらうきっかけにもなる。
次に、窓だ。
窓からの子どもの転落リスクに関しては、ベランダ以上に、オーナーが気を配っておくべきことがある。それは、部材や部品の劣化、さらに故障や脱落だ。
とりわけ網戸は鬼門だ。通常、窓のもっとも外側で日光や風雨に晒されるため、かなりの速さで劣化する。そのため、子どもが寄りかかったり、もたれかかったりしたところ、もろくなっていた網が破れ、そこから落下する事故が起き可能性もある。
あるいは、網は破れずとも、部材・部品の劣化や、故障、脱落によって、網戸自体が窓枠から外れやすくなっていると、やはり事故の原因となる。築古物件では、こうした状態がよく見られるので注意を怠ることはできない。
さらに、網戸だけではありません。窓本体に関しても注意は同様だ。劣化していないか? はずれ止めなど、部品の故障や脱落が起きていないか? それらをしっかりと見極めてから、部屋を貸すのが、オーナーのつとめででもある。
管理会社任せ、ましてや仲介会社任せの丸投げはNGだ。網戸、ガラス窓、雨戸、いずれにおいても、「開け閉めの際にガタつく」「引っ掛かりがある」と、いった症状が見られるときは、劣化や故障が起きているサインとみなし、厳重警戒する必要がある。
なお、前述の「子どもの手が届かない位置への補助錠の追加」は、通常の窓においても、幼い子どもの入居が想定されるファミリー物件では、導入したい事故対策といえる。
この記事を書いた人
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