「物価が安い街」の1番は? オーナーが有利に不動産投資できる街の見極め方
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/08/07
文/朝倉継道 構成/編集部
足立区強し! 「物件が安いと感じる街」
不動産ポータルサイト「SUUMO」でおなじみの株式会社リクルート住まいカンパニーが、「物価が安いと感じる街ランキング」と、題した調査結果をこの7月に公表している。調査対象は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県の居住者で、調査結果は今年1月に行われた大規模な調査で集められたデータから再集計されたもの。その理由は「コロナ禍の影響により景気が低迷し、それに伴い生活への不安から出費を抑える気運が高まりつつある状況を鑑みて」としている。
それではTOP10を抜粋してみる。なお、街の名前はどれも駅名となっている。
出典/リクルート住まいカンパニー SUUMO 住んでいる街 実感調査『物価が安いと感じる街ランキング』
本当に物価が安い街 十条
まず、足立区が半数を占めているのが目に付く。ただし、東京の交通と地理を知る人にとって、注目は1位の十条だろう。
この十条、JR埼京線で池袋までたったの2駅、新宿までも3駅という、都心のビッグターミナルにきわめてアクセスしやすい、非常に便利な駅。にもかかわらず、今回のSUUMOの調査では、「物価が安いと感じる街」の1位に挙げられている。「信じられない」と、思われる人もいるかもしれないが、筆者は、過去に長年この十条で暮らしていた。その立場で証言させてもらうと、十条の物価は、筆者の知るかぎり、実際に首都圏最安である。「物価が安いと感じられる」1位ではなく、「本当に物価が安い街」として、おそらく堂々の1位だろう。
ちなみに、上記ランキング3位の「東十条」は、十条の隣町。両駅の間は、人情芝居を上演する篠原演芸場も建つ有名な商店街などが繋いでいて、両者は東西に横並びとなっている。さらには、両駅とも、近年穴場の街として人気が集まっている「赤羽」の南隣り。そうしたうえで、今回のSUUMOのリリースは、多くのサイトなどでも紹介されているので、十条・東十条の知名度をおそらくはグンと上げてくれることだろう。
不動産投資の目線での十条・東十条
一方、投資目線からはどうか。この2つの街は、オーナーが投資をし、物件を持つのに有利な街といえるのか? ここにはある重大な懸念がある。
そのひとつは、十条・東十条ともに、街がいわゆる木密地域に位置していることだ。環状7号線沿いに広がる広大な木造住宅密集地帯で、地震による大規模火災が発生した際のリスクが、とりわけ大きなことで知られている。なおかつ、東十条は、武蔵野台地の崖線下に街が広がる点でも深刻だ。それらは、北東近くを流れる荒川、隅田川の広義の河川敷といってよい地域に含まれているからだ。
そのため、台地上にある十条に比べあきらかに地盤が弱く、2011年の東日本大震災の際は、傾いた塀や家屋、変形した地盤など、十条側では見られない様子を筆者は数多く目にしている。加えて、近年にわかに警戒度が増している、台風や豪雨による荒川流域の氾濫が起きた際、浸水被害を受けやすい場所にあることも、東十条がかかえる大きなリスクといってよいだろう。
来たる大災害に際しての、規模の大きな2つのリスク「大規模火災」と「大規模浸水」。その片方、または両方をかかえている地域が、東京には広範囲に存在することを不動産投資家はつねに考えておかなければならない。
この記事を書いた人
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