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建物のエントランスを街猫のトイレにさせないために 「餌をやらなければ猫はいなくなる」はウソ(2/3ページ)

山本 葉子山本 葉子

2020/04/04

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美しいエントランスでは、低木の周りにグランドカバーの草花が植えてあることも多いのですが、新築などで植えた直後は草花で土を覆いきれていなかったりすることがあります。
また、月日とともに部分的に枯れた場所を放置しておくと、地面が露出してしまうこともあります。そうです、そうした場所が堀返しやすい猫の大好きな場所になるわけです。

とくにエントランスに屋根があってその中に植栽がある場合、毎日ちゃんと水やりや手入れをしないと、ドライエリアになって、植物は枯れて土も乾燥。このサラサラになった土は、猫の故郷砂漠の砂によく似ているのです。実際にお伺いした中には「乾燥した土が巨大なプランターボックスに山盛りになっている」場所もあって、オーナーさんにそのつもりはなくても、見方を変えれば猫たちの理想のトイレになっていたりします。

(土がむき出しのところは、猫のトイレには格好の場所)

街猫対策は、地域の理解が必要――成功例

数年前、猫の糞尿問題のご相談で高級住宅街の一角にお邪魔した際には、美しい砂利敷きのファサードを見せていただきました。
白く綺麗な細かい砂利の上にところどころ黒いものがコロコロしています。フランス人のご主人は、日本の建築様式に憧れて、建物の一部にそのエッセンスを取り入れたいと思っての砂利採用だったようです。雨が溜まらず、いつもさらさらで、ザクザク掘ることができて、平らで踏ん張りがきく――。私には猫たちの楽しそうな様子が目に見えるようでした。

このことをオーナーにご説明すると、がっくりと肩を落とされました。しかも、周りの住宅にはほとんど土がなく、コンクリートで固められている。そんな街の中で生きている猫たちが、ここに集まってくるのは必然とも思えました。

そこで、対処療法と根本解決のための提案をしました。
(1)玉砂利を水で洗ってなるべく臭いを落とす
(2)大きな石をファサードにいくつも配置して、平らな場所を減らす
(3)近所のオフィスビルにご協力いただいて、猫トイレ自体をそこに移動させる

結論から言うと、このケースはとてもうまく問題解決できました。
具体的には次のような取り込みを行いました。
(1)は思った以上に大変な作業でした。
(2)は、オーナーさんの知り合いの石屋さんにご協力いただけて、輸送費以外はほぼ無料。
(3)は近隣オフィスビルのオーナーさんたちが「地域社会の問題」と正しく捉えてくださって、敷地の一部に「管理されている猫トイレ」を設置させてくれました。

また、猫の餌やりさんを探して、ルール作りの場をもうけ、なんども話し合いを行いました。その結果、現在被害を受けている場所からの猫の誘導や、時間を決めた適切な餌やり、花壇の奥にひっそり作られた猫トイレ場所の定期と清掃など理解を得ることができたのです。そして、その運用がうまく行って、関係者一同ホッとしたものです。

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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