民泊は旅館業法にどこに抵触するのか?
ウチコミ!タイムズ編集部
2016/08/16
法整備が進む「民泊」の周辺事情
東京オリンピックが近づくにつれ、「民泊」が話題に上ることが多くなってきました。民泊は元々「民家に泊まること」を指しますが、現在では「個人宅の一部や空き別荘、マンションの空室などに宿泊すること」という意味で使われています。これは、インターネットの仲介サイトの出現により観光客に個人宅や投資物件を有料で貸し出すというビジネスが台頭してきたからです。
当初の民泊は様々な問題を生み出しました。「家に泊めるのだから問題ないだろう」と思っていた人も多かったのですが、宿泊料を取ればそれは旅館業法の範疇。そこで改めて旅館業法を当てはめてみると従来の民泊のほとんどが要件を満たせず、無許可の違法民泊が増えてしまったのです。
このため現在では民泊に関する法律の整備が進んでおり、2016年末までには「新法の民泊」「旅館業法の民泊」「民泊条例の特区民泊」という3種類の民泊が出揃います。2017年以降は「新法の民泊」が主流になると考えられます。
「新法の民泊」には2つの特徴があります。まず、「住宅」が法律の対象になっていること。旅館業法が適用される簡易宿所や特区民泊の建物は「ホテルまたは旅館等」に限られますが、「新法の民泊」ではホテルや旅館が営業できない住居専用地域で営業することが可能になります。
もう1つの特徴は、年間営業日数の上限が180日に設定されていること。1年中民泊施設として営業することはできませんので、ビジネスや投資として考える場合は、民泊以外の活用方法も必要になってくるでしょう。
また、新法の民泊ではどんな住宅でも貸し出せるわけではないことにも注意が必要です。例えば管理規約で民泊が禁止されているマンションの部屋を貸し出すことはできません。
なお、新法の民泊施設は、家主が宿泊者と一緒に宿泊施設に泊まる「家主居住型民泊」と、家主は宿泊施設に泊まらず民泊施設管理者の管理に任せる「家主不在型民泊」に分かれます。
「旅館業法の民泊」の場合は、旅館業の4類型の1つである「簡易宿所」の定義の中に民泊を位置付け、許可申請を取るように促されています。旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」のこと。宿泊料を取らない場合は旅館業法の適用は受けません。また、国家戦略特区の特区民泊も旅館業法の対象外となります。
旅館業に関する法律の一部は昭和32年に制定されており、現在の民泊に対応するには規制緩和等が必要になります。一方で外国人観光客の増加により感染症や犯罪の問題なども指摘されており、安全性を確保するための規制の確立も重要となっています。
この記事を書いた人
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