賃貸借契約で無用な紛争を避ける為に
ウチコミ!タイムズ編集部
2016/02/05
法人にすると税率が有利になる
「不動産投資と節税」では、節税目的の不動産投資をしていると自然の流れに逆行して赤字で利益を出そうとすることになり、大変危険であると述べました。しかし、これは個人の話。売上が順調に伸び、投資規模が大きくなってくると、法人化を考える人も出てきます。実は、不動産投資を専門に行う税理士事務所には、個人と法人の違いについて相談してくる人が多いのだとか。それは、個人所有の場合と法人所有の場合とでは、同じ不動産を所有していても残るお金の額が異なってくるからです。
個人と法人で最も違うのが「税率」です。個人の場合は所得税率、法人の場合は法人税率。現在の政府は法人税率を下げる傾向にあることはご存じだと思います。
例えば給与所得が700万円の人の課税所得は400万ほどだと考えられます。では、個人でも法人でも、同じ不動産から300万円の利益が得られると仮定した場合はどうなるでしょう。個人の場合は、給与などの課税所得と不動産所得を足して700万円の課税所得になります。この時、所得税率+住民税率で計算すると、税金は約90万円になります。法人の場合は給与などは影響しないので、300万円の課税所得を法人税率+住民税率+事業税率から計算すると、約73万円になります。つまりこのケースでは、法人の方が税金の面で有利だと言えます。
法人のメリット
個人と法人では、減価償却費も変わってきます。
個人の場合は「強制償却」と呼ばれており、複雑な計算式に基づいて算定された減価償却費の枠は全額を経費に計上しなければなりません。赤字でも全額計上なので、経営状態によっては大変厳しい状況になることも考えられます。
これに対し、法人の場合は「任意償却」と呼ばれ、減価償却費の枠内であれば任意の金額を計上することができます。つまり、減価償却費をまったく計上しなくてもいいし、全額計上してわざと赤字にすることもできるし、税引前利益が少額になるように減価償却費を調整して、黒字にしつつ税金を減らすこともできるのです。これは法律で認められている行為です。当然、融資に有利な決算書を作ることも可能になります。
また、役員報酬が払えるのも法人のメリットです。役員報酬の場合はどこに務めていても支払うことができるので、例えば夫婦で不動産経営をしている場合、専業主婦の奥さんに役員報酬を支払うことでトータルの税金を抑えることが可能になります。個人でも似たようなことは可能ですが、法律上の制約があります。
利益が出ていれば法人化を検討しよう
結論から言えば、税務の面では法人は優遇されていますし、利益が出ている不動産投資であれば、ほとんどの場合は法人の方が有利です。他にも消費税還付が可能であったり、様々なメリットがあります。ただし、利益が出ていない場合はメリットが薄れてしまいます。自分の状況をよく分析して、必要であれば法人化にチャレンジしてみましょう。
(参考:不動産投資サイト「ノムコム・プロ」)
この記事を書いた人
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